【特集】特別なレシピ 心も温める「芋煮」 ”防災イモニスト養成講座”で学ぶ 《新潟》
19年前の中越地震で震度7を観測した長岡市の旧川口町。地元の住民などが災害時の食事について学びました。調理したメニューは特別なレシピで作った「芋煮」。どんな「芋煮」なのでしょうか。
みんなで芋煮づくり
今が旬のサトイモ。みんなで皮をむいて包丁で食べられる大きさに。そして出来上がったのがお隣、山形県の郷土料理「芋煮」です。
4つのグループに分かれて作られた「芋煮」。鍋の中にサトイモの代わりにジャガイモを入れるグループも。
参加した人
「野菜の味がすごく出ていて、川口にある野菜なので、おいしいです」
「ジャガイモが溶けた感じがいいですね、甘くて」
Qサトイモとは違いますか?
「違う。味も全然違う。玉ねぎが甘いのかな」
鍋には、日持ちする車麩や高野豆腐も入っています。こうした具材を入れたのには「ある理由」がありました。
イモニスト養成講座 「災害時、最初に何食べる?」
12月、長岡市の旧川口町で開かれた防災に関する講習会。テーマは災害時の食事です。
講師のNTTデータ経営研究所 担当者
「また以前と同じように大きな地震が来た時にこちらでも停電が来るかもしれません。その時に冷蔵庫の食材がどんどんダメになっていきますよね。その時に皆さん何を食べますか?最初に」
中越地震で震度7を観測
2004年10月23日に起きた中越地震。旧川口町では最大震度7を観測し、8割近くの住宅が半壊以上の被害を受けました。
数日間 空き地で避難
東川口地区に住む関嘉洋さん。あの日、突き上げられるような揺れに襲われました。
関嘉洋さん
「周りは真っ暗で、もう何も見えないし外へ出ようにも、部屋の中、クローゼットの蓋とかもみんな扉が外れて」
相次いだ余震。近所の人たちと数日間、空き地に避難したといいます。
関嘉洋さん
「仕出し屋さんのマイクロバスがあるんで、そこへマイクロバスを置いて、年寄りとかはその中へ入ってもらって、あとの人たちはテントを立てるとか、自作で小屋みたいなのを作ってその中で煮炊きできるような環境を作って」
「ごはんがきたぞ」
これは地震発生から間もない被災地の映像です。
記者
「これ、炊いたごはんですか?」
被災者
「いま、救援物資が来た。あったかい。おーい、ごはんがきたから取りにこい」
温かい料理は格別のごちそう
先の見えない不安な生活の中でもお腹は空きます。支援物資が限られる中、住民たちは食材を持ち寄り、あちこちで炊き出しが行われました。温かな料理は格別のごちそうでした。
関嘉洋さん
「お母さんたちがうちの畑から大根持ってきたとか家からコメを持ってきた、冷蔵庫から悪くなりそうな食材を持ってきて、温かい味噌汁作ってくれて、皆で凌いでいたというような感じだったんですよね」
日持ちしないものから食べる
中越地震から19年。講習会では改めて災害時の食時の大切さが伝えられました。
災害が起こると電気やガスなどのライフラインが途絶えることが予想されます。
講師のNTTデータ経営研究所 担当者
「もし乾パンとかご飯とかお米とかあったら一番最初に食べちゃいそうじゃないですか。でもそれは間違いなんですよ。なぜかというと、日持ちしないものから上手に食べていき、さらに数日たってもうまく栄養がとれるような考え方が必要なんだと思います」
災害に備えた調理実習
災害に備えた調理実習が始まりました。メニューは山形県の郷土料理、芋煮です。カセットコンロで調理でき、体が温まる芋煮は災害時に適したメニューだといいます。
心温まる最適な食事
NTTデータ経営研究所 山口葵さん
「芋煮は鍋一つで簡単に作れるというところで、温かくて栄養豊富で水分が摂取できて、心が温まるというものを満たす最適な食事の一つかなと思います」
車麩や高野豆腐を使う
冷蔵庫が使えず、牛肉などがない場合は車麩や高野豆腐、切り干し大根などで代用してたんぱく質を補います。
参加した人
「車麩は長岡の名物なのでたぶん戸棚の中にはあると思います。味付けさえ間違わなければきっとおいしい汁になるんじゃないですか」
カセットコンロで煮込む
子どもたちも包丁を手に調理を手伝いました。カセットコンロで煮込めば完成です。災害を想定して日持ちする食材で作った特製の芋煮。皆で早速味わいます。
皆で味わう
参加者
「塩加減が川口っぽくて美味しいです。濃いめです」
「高野豆腐とか乾物系が使われているのが防災に役立つなと思って実際に使えそうなレシピだなと思って見ていました」
3日間のメニューを考える
食事の後は避難生活での献立を考えるワークショップも行われました。いま自宅にある食材を書き出し、電気や水道、ガスが使用できない想定で3日間のメニューを考えました。
交流の機会に
災害が起きたそのとき、頼りになるのは地域の結束力です。皆でワイワイ話しながら作った特製の芋煮。鍋を囲みながら過ごしたひとときは、住民同士の交流の機会にもなったようです。
参加者
「時々こうやって訓練じゃないですけど経験することは大切なことかなと改めて思いました」
関嘉洋さん
「現状だと、うちは3日目厳しいんじゃないかなというのが露呈しちゃったので、考え直さなきゃいけないなというので家に戻ったらさっそく実践しようと思います」