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【能登半島地震】 液状化被害 悩む住宅再建 かつて液状化から復興した柏崎の団地は何に取り組んだのか《新潟》

2024年1月28日 17:25
【能登半島地震】 液状化被害 悩む住宅再建 かつて液状化から復興した柏崎の団地は何に取り組んだのか《新潟》
能登半島地震で多くの建物被害を出した液状化現象。被災した人は、家を再建できるのか、元の場所に住み続けられるのか多くの悩みを抱えています。

新潟県内では液状化の被害から復興した地区もあります。その時の経験とは。新潟県柏崎市の、ある団地を取材しました。

17年前に被害 柏崎市の山本団地

柏崎市の郊外にある「山本団地」。ここに住む本間裕子さんです。道路は整備され、住宅が階段状に並んでいますが、17年前の新潟県中越沖地震で液状化の被害が出ました。

住めないほどの崩壊

本間裕子さん
「ここに住めないというほど崩壊していたので」

砂地を造成した団地

柏崎市の東部にある山本団地は、砂地だった土地を造成し、1971年に分譲を始めました。

中越沖地震で大きな被害

2007年、最大震度6強が襲った中越沖地震で液状化が起こり、上の段の土地や建物が、下の段の建物を押して、被害を大きくしました。

地下水が染み出し壁は壊される

ある住宅の庭では地下から水が染み出しています。さらに隣の住宅の地盤に押され、壁は壊れそうになっています。山本団地では液状化などにより、家屋およそ50戸が被害を受けました。

側溝が押され潰される

本間裕子さん(2007年当時)
「山からずーっと押してきて、側溝が潰れちゃっているんです」

道路脇の溝は山に押されました。

自宅は70センチ沈む

本間さんの自宅も被害を受け、建物を支える地盤はおよそ70センチ沈んでしまいました。傾いてしまった自宅。本間さんは中越沖地震の3年前、700万円をかけてリフォームしたばかりでした。

本間裕子さん(2007年当時のインタビューで)
「真ん中に夢のあるアイランド型のキッチンを置いて。お風呂も新品で新しいやつにして、外壁も全部直してキレイにして。一生これで住むぞって思いました。天災なので仕方ないんですけど、やっぱり残念です」

能登半島地震 新潟市などで液状化

あれから17年、元日に発生した能登半島地震。駐車場は盛り上がり、至るところに亀裂が入りました。あふれ出す泥水。地震により新潟市西区などで起こった液状化現象。

タイヤが砂に埋まる

住民
「これもう車が出せないですね。レッカーを頼んだんですけれど、いつ来るのか。ショックですよね、今までこんなことなかったので」

住宅が傾く被害

住民
「北と東に両方傾いている。とても住める状況ではない」

「直すのは保険や補助次第」

地震発生から約20日。

建設会社
「ここからこっちに向かって149ミリ。約15センチ、こういう風に下がっていて。15センチ、かなりだね。頭痛しないですか」

住民
「今のところはまだ大丈夫ですが、あんまりいい感じはしないですね」

傾いた家をどうにか直そうと、業者に見積もりを依頼した人です。

住民
「保険次第です。保険と、あと公共の補助がいくらいただけるかっていう。それ次第だと思う」

1000万円かかることも

建設業者によると、費用は傾きの程度や家の構造にもよりますが、500万円から1000万円かかることもあるといいます。

住民
「慣れた家で、引っ越す予定とかも全然考えていなかったので。いまのところはこの家に住みたい」

地下の水位を下げることに取り組む

中越沖地震で液状化の被害が出た、柏崎市の山本団地に暮らす本間裕子さんと小熊洽子さんです。
被災した直後、「もうここには住めない」という声も上がっていたといいます。大学で地学を学んでいた小熊さん。

小熊洽子さん
「水位を下げさえすれば何とかなるんじゃないかって私は思いました」

地下の水位を下げることで、また地震が起きても液状化の発生を抑えられると考えたといいます。

液状化現象は、地震によって砂と地下水が混ざりあって沈下などを起こす現象とされ、山本団地は砂丘の末端部に造成され、地下水も豊富な場所でした。

暗渠(あんきょ)の計画図

本間さんが当時の計画図を見せてくれました。

本間裕子さん
「これが暗渠(地下に設けた水路)の計画図」

Q赤い線は?

本間裕子さん
「これが暗渠排水の本管、赤いのが全部本管です」

当時費用は1億6000万円

地下水の水位を下げる排水設備を設ける工事が必要に。山本団地では、その費用は1億6000万円。個人の力では到底まかない切れません。

住民が話し合う

山本団地 住民団体代表
「この51軒のコミュニティーを崩さず、1軒の流出もここからさせずに、もう一度山本団地のこの地で、みんなで生活したいと思っています」

液状化から地域を守るためには、地域が一体となった対策が必要です。しかし。

本間裕子さん
「住民同士で話をすると、お金のことなので遺恨も残る。いろんなことが起きるのではないかって。ここにせっかく住めても、心の部分で変な風に残ってしまったら住みづらくなるでしょうって」

当初、全額住民負担となっていましたが、本間さんなどを中心に再建を目指す会を結成。

費用の3/4を公的資金でまかなう

行政に支援を求めた結果、当時新たにできた国の制度を使って、費用の4分の3を公的資金でまかなうことができたのです。しかし、4分の1に減ったとはいえ、住民が負担するのは4000万円。

本間裕子さん
「全員で同じ負担にするか、それとも被害状況によって変えるかというのは大きな問題でした。地盤はみんな一緒だから一律と最初は考えたが、被害の大きいところ、被害の少ないところで同じお金を出すというのがちょっと難しくて」

市が配分を発表 住民84人が費用負担

そこで、柏崎市が1人ごとの配分を発表。団地を離れる人もいましたが、最終的に団地内の84人が負担し設備は完成しました。本間裕子さんは、地域の住民の代表の1人として国や県に陳情したほか、地域住民の合意形成に奔走しました。

「自分で声を上げないと何も起きない」

本間さんは自宅を建て替え、いまも山本団地に住み続けています。

本間裕子さん
「地盤ってつながっているので。ひとりで直してもまた同じことが起きたりとか、ひとりの力ではどうにもならないことがあるので。まとまって、どうしていかなければならないかを考えなければいけなかったので、会を結成した。自分の声は自分で上げなければ何も起きないと思いました」

「再建の意欲があった」

当時、山本団地の調査をした新潟大学の卜部厚志教授は「比較的新しい住宅が多く、再建の意欲があった」と分析しています。一方で今回の新潟市の事例は。

新潟大学 卜部厚志教授
「西区も含めて高齢化しているので、年配の方だけで住んでいる家、ひとりで住んでいる家があります。新築するとか、お金をかけて修理するのかっていうところで、皆さん不安で先が見えない状況だと思います」

「判断材料を」

卜部教授は、キーパーソンを中心に住民が自発的に団結した山本団地とは事情が違うため、行政がある程度の方向性を示すべきだと指摘します。

新潟大学 卜部厚志教授
「どのくらいお金がかかって地盤が直るのかを知らせられれば、生活再建のいろんな判断の中で、それが判断材料になる。『家を修理したい、建て直すんだ』という合意があれば、まとめて造成し直す、つくり直すということになるんだと思います」

地震から3週間がたち、新潟市では具体的な住宅再建を考える段階にきています。


2024年1月23日「夕方ワイド新潟一番」放送より

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