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「包装紙」に愛を込め 「福が入るように…」老舗百貨店の思い「来年閉店の井上本店

2024年8月28日 18:07
「包装紙」に愛を込め 「福が入るように…」老舗百貨店の思い「来年閉店の井上本店

最近では、マイバックの普及や包装の仕方も簡易的になるなど買い物も変化していますが、きょうは松本市の百貨店の包装紙の話題です。そこには、老舗百貨店のこだわりがありました。

松本市大手の六九商店街。かつてここにはアーケードがあり買い物客で賑わっていました。その中心にあったのが井上百貨店です。

昭和31年には県内で初めてエスカレーターを設置するなど、時代の先駆け的な存在だった井上。

高度経済成長期の昭和47年(1972年)には地下1階、地上6階にリニューアル、当時の松本を代表する大きな建物でした。

(大正時代の呉服店外観写真)
創業は明治18年(1885年)。今から140年前に初代井上與作さんが呉服店としてのれんを上げました。当時、看板などに使われて井上の象徴となっていたのは“カネヨ”と呼ばれるロゴでした。

井上裕社長
「商売のきっちりしたカネジャク(ものさし)意味をとってきっちりした商売をやろうって ことで(初代)よさくのヨと合 わせています」

その後、百貨店へと形を変え、看板や包装紙には井上をアルファベッドで表した「アイ」の文字がデザインされました。

1979年、惜しまれつつ現在の松本駅前へ移転。

屋上には遊具も設置され、たちまち松本の新たなランドマークになりました。店の顔とも言える包装紙も、駅前移転を機に一新されました。それが、こちら。実は「井上」の文字が隠されています。

見つけられましたか?赤色の部分に、漢字で「井上」の文字がデザインされています。

そして、こちらが現在の包装紙。20年前から使われています。

デザインを担当したのは画家の成瀬政博さん。

大阪出身の成瀬さんは現在、安曇野に画廊を構えて暮らしています。

大きなキャンバスにむかう傍ら、27年前からは週刊新潮の表紙を描き続けています。

画家の成瀬政博さん
「デパートとかお店の包装紙を手掛けたのは唯一あそこだけやからね」

20年前、井上で個展を開いた縁で包装紙のデザインを依頼されました。

成瀬さん
「複雑な意味あり気なものは無いほうがいいと思って ここ(松本)は自然が多いところだから木をモチーフにしてシンプルに仕上げたつもりですけど」

包装紙は、店の看板替わり。140年続く老舗百貨店の信用が現れます。

市民は
「(井上の包装だと)ちょっと良い物かな 美味しそうなものが入ってるのかなと思います」

市民は
「人に差し上げるなら松本だと井上だと上な感じっていうか」

Qハンカチ1枚でも違いますか?
「そうですね包装紙が井上だとあっていう感じ」

6代目の井上裕社長。入社当時は、自宅に帰っても包装の練習をしたといいいます。

井上社長(包装インサート)
「まずは新入社員はこれを練習します」

一見、普通に包装しているかと思いきやそこには、あるこだわりが…。

井上社長
「(上から)福が入るようにということで入口を作って包装します」
「福が入るようにお客様に渡します」

さりげない心遣いには包装紙に込める大切な思いがあります。

井上社長
「井上の袋に入ったもので お買い物いただいた物は間違いないねって言う風に今後も言われていかなきゃいけないですし、そういうものを扱っていかなきゃいけない。あそこの店で買ってよかった あそこの販売員さんから買ってよかったって言われるようにずっとしていきたい」

来年3月、松本駅前にある本店の閉店を決めています。建物の老朽化などが決断の理由です。

井上社長
「45年ここでやってますけど それも老朽化で閉店しますがそれも時代の流れに合わせてこれからまた次のステップがあると言うことでまたご期待いただければと思います」

呉服店から、百貨店へと時代に合わせて形を変えてきた井上。閉店まで7カ月、店の信用とともに客の思いを包み続けます。

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