【特集】台風19号災害から5年②被災地長沼地区の住民は今…
5年前の台風19号災害で千曲川の堤防が決壊し、甚大な被害を受けた長野市長沼地区。5年が経とうとする今、前を向きながら力強く歩みを進める住民の姿がありました。
稲葉キャスター
「奥に、千曲川の流れが確認できます。私がいる場所(堤防)から300メートル以上は離れているでしょうか?当時、千曲川の水が増水し、堤防を越え、決壊。今の光景からは想像ができない自然の力の恐ろしさを感じます」
5年前の2019年10月に県内を襲った台風19号。長野市長沼地区では千曲川の堤防が決壊し、一帯の住宅やリンゴ畑などが濁流にのまれました。
長野市では18人(災害関連死を含める)が亡くなり、住宅およそ4300軒が浸水被害を受けました。
長野市長沼地区はこの5年間で人口がおよそ100人減少。台風19号災害の影響でふるさとを離れる人も多く、今後の地域づくりが課題となっています。
決壊した堤防から150メートルの場所にある妙笑寺です。当時、1階部分が濁流にのまれ、壁や柱が流されました。
住職の妻・笹井妙音さん
「何とかしなくちゃいけないんだけど何とかできるのかなってそういう不安の方が先でしたね」
長沼地区はこれまで何度も水害に見舞われ、寺の柱には、その爪痕が刻まれています。
Q「一番高かったのは?」
笹井さん
「寛保2年の戌の満水っていうのが一番上の印なんですけど3メートル40ですね」
今後、5年前の記録として2.6メートルの位置に印をつける予定です。
「ご先祖のお位牌がみんな並んでるっていう」
観音堂は床の泥を取り除いたまま。はがれた壁や手が外れてしまったびんずる尊者像が水害の恐ろしさを物語っています。
本堂は耐震工事が必要で、元通りとなるのは、来年の見込みです。一方で被災前に戻りつつある部屋も…。
笹井さん
「被災の直後はここに来てみたら、畳が一枚もなく、戸も割れてなく、全部流れていってしまったという光景がありましたけど、ようやく5年がたって畳が入りましたと」
知り合いから譲り受けたという長野市の職人が手掛けた組子細工の戸。木材を組み合わせる細工の飾りで、繊細な模様が施されています。笹井さんの心の拠り所となってきました。
Qこれは、何かの模様なんですか?
笹井さん
「見る人が想像してくださいって言われたので、まぁ何かこれは千曲川の川かなと。千曲川は本当に危険な時もありますけれど、肥沃の土地なので野菜もおいしいしっていう、そういう千曲川の恩恵を受けながら生活していますので、非常に身近な存在です」
笹井さんは地域の人たちの交流の場を設けたいと、毎年、アジサイの咲くころに食事会を開いてきました。
笹井さん
「経験を皆さんに伝えて、危険な場所であると同時にここで安心して暮らせる方法を地域のみんなと探っていきたいなって思いがしますね」
長野市長沼地区を貫く国道18号、通称アップルライン。5年前、千曲川からの濁流が辺り一面を覆いました。
稲葉キャスター
「車はスムーズに流れています。5年が経過して、周辺の様子は、災害前の姿に戻っているように、私の目には映ります」
アップルライン沿線には10軒ほどのリンゴ直売所が並びます。
決壊した堤防からおよそ2キロの場所に直売所を構えるリンゴ農家の中村太士さんです。
中村さん
「この、もぎとりっていう看板の半分手前くらい(が水に浸かった)」
直売所の隣に広がるリンゴ畑も、水に浸かりました。
中村さん
「ぶっちゃけあの時は、その1年分の努力っていうのをみんな1日で失っちゃったから、ちょっと…ちょっとほうけちゃいましたよね」
被災後、駆け付けてくれたボランティアは、のべ1200人。およそ2か月かけて畑の泥を掻き出しました。
中村さん
「少しでも明るい未来が描けるように、あとみんなが下を向いて落ち込んでいる中ね、いろいろな人と協力して、やってきたっていうのが1つかな」
ボランティアの中にはその後、従業員になった人も…。仲間を増やし、被災したリンゴの木をまきとして販売する事業も始めました。今では仲間が財産となっています。
中村
「自分1人で考えてやっていけば、たぶん自分一人が苦しくなっちゃうから周りのみんなと協力しようよ」3434~「そうやってやっていけば、どんな災害がきたとしても、僕らは必ず乗り越えられる」
担い手がいない高齢者のリンゴ畑を借り受け、被災前に1ヘクタールだった畑は10ヘクタールにまで広がりました。中村さんの目標は農業を一緒に楽しむ仲間を増やすことです。
中村さん
「100年後も200年後もここがアップルラインであり続けられるように、みんなで協力して、やりたいって人たちを増やしていければいいな。もしやってみたいって人がいたらね、お気軽に連絡くれれば!」