【震災14年・障がい者の避難を考える」
東日本大震災から14年が過ぎましたが、避難の問題や地域の再生など、課題は山積みです。
プラス1では24日と25日の2回にわたって課題を検証します。1回目は重い障がいがある人の避難生活について、遠藤記者が取材しました。
一関市に住む千葉一歩さん34歳。
一歩さんは、CFC症候群という先天性の難病で成長の障がいなどがあります。さらに19歳の時には脳出血を発症し、人工呼吸器がないと命を保つことができません。また、体温調節が難しいため、夏はエアコン、冬は床暖房で常に電気が必要です。一歩さんの自宅には発電機が備えられていて、停電の際は発電機で電気が途切れないようにしています。
♪ 一歩さんの母・千葉淑子さん
「毎月1回発電機をつけてみる。やってみます。これが発電機のスイッチになります。こういう風に上げてつけると30秒くらい経つとつくんですけど、回っているんです。これですごく静かなんです。これだったらご近所にも迷惑にならないし、普通の発電機だったら大きなオートバイみたいな音がします。ああいう感じではなくて静かに回っていてドアを閉めてしまえば全然音はしない。チェックをして使えるということを確認することをやっています。(この情報が発電機を開発した)北良さんの方に行っていて、一歩さんの発電機スイッチ入りました、一回エラーになりました、またつけました、ということが全部向こうに分かっている」
北上市の北良では、千葉さんたち患者さん1人1人の発電機の使用状況や各地で停電が起きていないかをチェックしています。
♪ 北良 笠井健社長
「このANPYという端末があるんですけれども、これがですね、 患者さんの家に一軒一軒置かれていまして、常に自宅の停電が起きていないかを監視してくれています。災害時には、例えば避難する際にこのANPYの端末を持って避難していただくと、それに合わせてこのピンが移動していくので、今どこに避難されているのか、どの地域にいるのかが分かる。これは東日本大震災の時に本当にどのエリアが停電をして、もしくは電気が復旧したとか、避難した先が分からないとか、そういった課題があったので、これは3.11から学んだ経験から開発したシステムということで運用しています」
重い障がいがある子どもたちの生活を豊かにしようという「ぽけっとの会」。千葉さんが代表を務めるこの会は、一関市とともに、障がいのある人の避難のあり方を考えてもらおうと、ワークショップを開きました。
会場では、使った水を循環して手洗いするWOSHという機械が紹介されていました。これは東京のWOTA社が開発し北良が販売しています。
♪ 北良の担当者
「大体20リットルのタンクが入っているんですけど、500回分の手洗いができます」
♪ 2008年6月に発生した岩手宮城内陸地震の被災者
「(記者・水道が出た時うれしかった?) 最高です。お水の大切さが良くわかりました。(記者・この機械を見ていかがですか?)少しの水で何回も使えるというところがすごいですね。あの頃は、給水所までも遠かったですし、洗濯する水もないですし、トラクターにタンクを積んで水を汲みに行ったんです 。寒い中、本当に水がないのは大変ですよ。スーパーも遠いですから、ましてや障がいを持った子どもがいながらでしたので。( 記者・障がいを持ったお子さんがいたんですか?)お尻は赤くなっちゃうし」
♪ ぽけっとの会 千葉淑子代表
「私たちの子どもたちは、雨の中避難するといってもぬれてしまうかもしれない。行った先で電源があるのか、行った先での生活が困難だったら体調を崩してしまうのではないか、命に関わるんじゃないか、避難したはいいけど命が危なくなっては困るので私たちの子どもたちの命を守るという気持ちで避難所の対策をしてみようという話になりました」
このワークショップでは、北良の笠井健社長が去年1月に発生した能登半島地震で支援活動を行った経験を話しました。
♪ 笠井社長
「能登半島で小児患者がどういうことになったかというと、家が崩れたとか避難先が崩れてとか、いろいろなパターンがあるんですが、病院や福祉避難所も被災しているので、最後の砦を失った状態になりました。障がい者にとっては、非常に厳しい避難先の環境ですので、車中泊とか、ここは無理だと言って避難所を転々とします。だんだん、隣の県に行ってやっと落ち着いたとか、避難所が難民化します」
♪一歩さんの母 千葉淑子さん
「『あなたの子どもさんは本当に特殊でしょ』と、『それに合わせていったら大変なんです』というような、たくさんの人数の人に合うものを用意しておけばいい、ではなくて、この前のワークショップでは、一人一人に 一人一人が快適に感じるものをどんどんバージョンアップしていこうという気持ちが、北良さんの社員さんの中にすごく感じたんです。それがすごくうれしくて」
♪ 笠井社長
「医療的なケアがあるとか、障がいを持っているとか、そういうのは一つの属性でしかなく、それがあるからここの避難所では扱えないとか考えるのはやめようとか、そういうことはしないでいただきたい。むしろ、自分たちの避難する環境とか、質を上げるために多様な人たちに合わせたことを考えていくというのが、今、実は自分たちが一番最初にやらなければいけないことだと思っています」
重い障がいがある人も大災害の時に安心・安全に避難できる社会。それはお年寄りや小さな子どもがいるような家庭、誰もが安心して暮らせる社会づくりにつながっていきます。