【世界に一台だけ】国内わずか「フレームビルダー」 オーダー絶えない”一生モノ”の自転車 岩手県宮古市の男性
岩手県宮古市に自転車をイチから作り上げる職人、「フレームビルダー」の男性がいます。
世界で一台だけのこだわりの自転車を求めて全国から注文が絶えないという、この男性を宮古支局・佐藤記者が取材しました。
宮古市内にある一軒の自転車店。
(溶接)
ここで働く盛合博美さん63歳が溶接しているのは、自転車のフレーム。
ハンドメイドでイチから自転車を作る職人で、「フレームビルダー」と呼ばれています。
盛合博美さん
「私たちが設計するにあたって頻繁に使うのは0.1ミリ単位です」
こだわり抜いて作る自転車は、高いもので200万円以上。
それでも全国から注文が入ります。
お客さん
「世界1台の自分のマシンを作ってもらえます」
この日、盛合さんが作っていたのは神奈川県のお客さんから依頼を受けた自転車のフレーム部分。
スチールやアルミ、カーボン、チタンなど、様々な素材で作ることができる職人は、国内でわずかしかいません。
フレームの製作で大切なのは精度。
溶接には0.1ミリ単位の正確さが求められます。
盛合博美さん
「オーダーでその人の体に合わせたものを作るものですから、やっぱり数字に関してはちょっと厳しくなってきます」
お客さんの足や腕の長さ、肩幅などを細かく聞き取り、体にぴったりのフレームを作成。
既製品のハンドルやタイヤなどのパーツを希望に合わせて組み上げ、理想の1台に仕上げます。
製作を依頼して1台完成するまでに8か月ほどかかり、価格は安いもので35万円、高いと200万円以上にもなります。
それでも自分の体に合う点、フレームの素材や太さ、デザイン、色まで自分の好みでオーダーできる点は、既製品には真似できません。
(客が来る)
この日は青森県八戸市に住む女性が完成した自転車を引き取りに工房を訪れました。
盛合さんの自転車を愛用する父親の影響を受け、今回初めて自転車をオーダーしたそうです。
早速、出来上がったばかりの濃いブルーの自転車に試乗してみます。
試走
「最初が緊張する」
購入者
「最初は怖いんですけど、乗りやすいです。一生モノの買い物が出来たかなと思います」
自らもサイクリングが好きな盛合さんはオーダーメイド自転車の乗り味や美しさに魅力を感じ、高校卒業後、東京の工房や自転車競技が盛んなイタリアで修業してきました。
今からおよそ40年前、1985年に宮古に工房を構え、自転車を作ってきましたが、東日本大震災の津波で設備を全て流されてしまいました。
今、工房がある場所は、実は妻の実家が営む自転車店。
職人としての人生もパートナーである奥さんも自転車なしには語れません。
(木の緑)
ことし5月。遠野から釜石、大槌を経由して遠野に戻る全長104キロのサイクルイベントが開かれました。
盛合さんはスタッフとして参加。
自分と同じく、自転車をこよなく愛する選手たちを休憩所などでサポートします。
こちらの自転車は盛合さんが作った自転車。
宮古から参加した男性のもので気に入っているそうです。
参加選手
「こういう走りがしたいとか、いろんなオーダーにも細かく応えてくれるので、自分にしっかり合った、世界1台の(自転車)」
盛合博美さん
「やっぱり乗っていただいているのはうれしいです。やはり気に入ってもらえなければ乗っていただけないので、それ(乗ってもらえること)がなによりです」
今も全国からオーダーが絶えない盛合さんのハンドメイド自転車。
職人として、さらなる高みを目指しています。
盛合博美さん
「素材に関してもやっぱり勉強していかなきゃならないし、もちろん作り方もより良いものをという事で、色々考えていかなければならないので、まぁ…、日々精進」
自転車を作り続けて43年。
盛合さんはより良い走りを届けたいと、これからも自転車を作り続けます。