液状化現象で地盤沈下や隆起 仕方なく家を取り壊しへ YBC取材班被災地現地報告
能登半島地震のYBC取材班の現地報告です。取材に当たった穂積佳明記者がお伝えします。
(穂積記者)
石川県南部の金沢市の隣に位置する内灘町にスポットを当てます。
内灘町は、震源からは比較的離れていたものの、地震の影響で道路の陥没や住宅の倒壊など大きな被害が発生しました。
その被害を引き起こしたのが「液状化現象」でした。
金沢市から車でおよそ30分ほどに位置する内灘町。
元日の地震では震度5弱を観測しました。地震による衝撃で一部の地区では地盤が液体のように流動的になってしまう液状化現象が発生しました。
道路がうねるようにゆがんだり、隆起したりするなどの被害が相次ぎました。
穂積記者「地震から2か月が経過し、交通量の多い県道は徐々に道路の整備が始まっています。一方、脇道に入ると端には土砂がそのまま残っており、手つかずの状態となっています」
内灘町でも特に液状化による被害が大きかった西荒屋地区。復旧は進んでおらず、隆起した通学路や砂に埋まった車などが今も手つかずで残されています。
さらに、液状化による地盤沈下などで地区内だけでも300棟近くの住宅が全壊するなどしました。現在も25世帯およそ50人が避難生活を送っています。
住民「諦めている。まだ建ててそんなに建ってないけど壊そうかなと思って、1人で毎日こうして片付けしに来ている」
西荒屋地区で出合った女性です。自宅が地震の影響で傾いてしまい、現在は金沢市内に1人で避難しています。
住民「見た目はなんともないんだけどね。私の家だけじゃないからしょうがないと思って、誰のせいでもない」
今後、この家に住み続けるためには大規模な修理が必要ですが、夫に先立たれ、息子家族も離れて暮らしていることから家を取り壊し、更地にすることを決心しました。
住民「壊したくない。本心はね。でもあんなんになったら住んだらだめ」
さらに、西荒屋地区は液状化現象で地盤が動いて水道管が壊れる被害が多発し、現在もおよそ150世帯で断水が続いています。住民たちは地区に設置された給水タンクから水を汲んで生活しています。
住民「一番望んでいることは復旧、ライフラインの復旧、小学校の校舎が早く使えるような下水道の復旧を早くしてほしい。ここは金沢から30分ですよ。なんでここは遅れているんだ」
仮の水道管の設置が徐々に進んではいるものの、完全復旧の見通しは立っていません。
こうした液状化現象は地震による衝撃で地盤が液体のように流動的になり、地盤沈下や地面の隆起、噴水の発生などが起こるものです。それに伴い、住宅が傾いたり道路が浮き上がったりするなどの被害も発生します。
国土交通省によりますと液状化が発生しやすいのは埋立地や沿岸部など比較的地盤の緩い地形とされています。県内でも2019年の県沖地震の際には酒田市や鶴岡市の中心部で液状化が複数確認されました。
国土交通省が作る「重ねるハザードマップ」というサイトです。液状化が発生する可能性が高いエリアを地図と照らし合わせて確認することができます。
液状化しやすいエリアは5段階に色付けがされていて、液状化の可能性が最も高いのは紫色に表示されます。「埋立地」やかつて川や沼があった場所などは紫色になっている地点が多くなっています。県内を見ると、酒田市や鶴岡市など庄内地方の特に海沿いのエリアが紫色になっています。
国土交通省はこうしたハザードマップを通して、地区や自治体で安全な避難経路の共有や、液状化を防ぐための工事を検討してほしいとしています。
また、住宅など建物の対策として、県は、新たに建物を建てる際にセメントを流して地盤を補強することなどを挙げています。
さて、西荒屋地区の小学校では3月14日に卒業式が行われました。
西荒屋小学校は地震で校舎の一部が壊れ、水道も使えない状態が続いているため、児童は全員、地区外の小学校に通っています。
しかし、卒業式だけは児童が学んだ元の学校で実施することを決めました。式の前日、6年生に最後の思い出を作ってもらおうと教職員や保護者それに在校生も駆け付け、卒業式の準備を進めました。
子どもたちにとっては去年の12月以来、およそ3か月ぶりの校舎です。
在校生「やっぱり西荒屋小学校の方が落ち着く。懐かしい。卒業式は西荒屋小学校でできてよかったと思う」
迎えた卒業式本番。8人の卒業生たちは思い出の詰まった校舎で門出の日を迎えました。
卒業生「この6年間で挑戦する勇気を学びました。今までありがとうございました」
卒業生「お世話になった人たちにもこの思い出いっぱいの校舎にも感謝の気持ちを伝えられてよかった」
西荒屋小学校の児童たちは当分の間、別の学校での生活が続く見通しです。1日でも早く元の生活に戻れることが子どもたちにとっても1番の願いです。
在校生「(早くこの学校に戻ってきたい?)はい。ずっとここにいたい」
石川県内で取材する中で、住民の方から「まさかここで大きな災害が起こるとは思わなかった」、「地区内で防災について話し合っておけばよかった」といった声を多く聞きました。他県での災害は他人事のように見えがちですが、自分の身の回りで起こることを想定して、家族や地域全体で災害が発生した場合の対策を事前に話し合うことが大切だと強く感じました。
(穂積記者)
石川県南部の金沢市の隣に位置する内灘町にスポットを当てます。
内灘町は、震源からは比較的離れていたものの、地震の影響で道路の陥没や住宅の倒壊など大きな被害が発生しました。
その被害を引き起こしたのが「液状化現象」でした。
金沢市から車でおよそ30分ほどに位置する内灘町。
元日の地震では震度5弱を観測しました。地震による衝撃で一部の地区では地盤が液体のように流動的になってしまう液状化現象が発生しました。
道路がうねるようにゆがんだり、隆起したりするなどの被害が相次ぎました。
穂積記者「地震から2か月が経過し、交通量の多い県道は徐々に道路の整備が始まっています。一方、脇道に入ると端には土砂がそのまま残っており、手つかずの状態となっています」
内灘町でも特に液状化による被害が大きかった西荒屋地区。復旧は進んでおらず、隆起した通学路や砂に埋まった車などが今も手つかずで残されています。
さらに、液状化による地盤沈下などで地区内だけでも300棟近くの住宅が全壊するなどしました。現在も25世帯およそ50人が避難生活を送っています。
住民「諦めている。まだ建ててそんなに建ってないけど壊そうかなと思って、1人で毎日こうして片付けしに来ている」
西荒屋地区で出合った女性です。自宅が地震の影響で傾いてしまい、現在は金沢市内に1人で避難しています。
住民「見た目はなんともないんだけどね。私の家だけじゃないからしょうがないと思って、誰のせいでもない」
今後、この家に住み続けるためには大規模な修理が必要ですが、夫に先立たれ、息子家族も離れて暮らしていることから家を取り壊し、更地にすることを決心しました。
住民「壊したくない。本心はね。でもあんなんになったら住んだらだめ」
さらに、西荒屋地区は液状化現象で地盤が動いて水道管が壊れる被害が多発し、現在もおよそ150世帯で断水が続いています。住民たちは地区に設置された給水タンクから水を汲んで生活しています。
住民「一番望んでいることは復旧、ライフラインの復旧、小学校の校舎が早く使えるような下水道の復旧を早くしてほしい。ここは金沢から30分ですよ。なんでここは遅れているんだ」
仮の水道管の設置が徐々に進んではいるものの、完全復旧の見通しは立っていません。
こうした液状化現象は地震による衝撃で地盤が液体のように流動的になり、地盤沈下や地面の隆起、噴水の発生などが起こるものです。それに伴い、住宅が傾いたり道路が浮き上がったりするなどの被害も発生します。
国土交通省によりますと液状化が発生しやすいのは埋立地や沿岸部など比較的地盤の緩い地形とされています。県内でも2019年の県沖地震の際には酒田市や鶴岡市の中心部で液状化が複数確認されました。
国土交通省が作る「重ねるハザードマップ」というサイトです。液状化が発生する可能性が高いエリアを地図と照らし合わせて確認することができます。
液状化しやすいエリアは5段階に色付けがされていて、液状化の可能性が最も高いのは紫色に表示されます。「埋立地」やかつて川や沼があった場所などは紫色になっている地点が多くなっています。県内を見ると、酒田市や鶴岡市など庄内地方の特に海沿いのエリアが紫色になっています。
国土交通省はこうしたハザードマップを通して、地区や自治体で安全な避難経路の共有や、液状化を防ぐための工事を検討してほしいとしています。
また、住宅など建物の対策として、県は、新たに建物を建てる際にセメントを流して地盤を補強することなどを挙げています。
さて、西荒屋地区の小学校では3月14日に卒業式が行われました。
西荒屋小学校は地震で校舎の一部が壊れ、水道も使えない状態が続いているため、児童は全員、地区外の小学校に通っています。
しかし、卒業式だけは児童が学んだ元の学校で実施することを決めました。式の前日、6年生に最後の思い出を作ってもらおうと教職員や保護者それに在校生も駆け付け、卒業式の準備を進めました。
子どもたちにとっては去年の12月以来、およそ3か月ぶりの校舎です。
在校生「やっぱり西荒屋小学校の方が落ち着く。懐かしい。卒業式は西荒屋小学校でできてよかったと思う」
迎えた卒業式本番。8人の卒業生たちは思い出の詰まった校舎で門出の日を迎えました。
卒業生「この6年間で挑戦する勇気を学びました。今までありがとうございました」
卒業生「お世話になった人たちにもこの思い出いっぱいの校舎にも感謝の気持ちを伝えられてよかった」
西荒屋小学校の児童たちは当分の間、別の学校での生活が続く見通しです。1日でも早く元の生活に戻れることが子どもたちにとっても1番の願いです。
在校生「(早くこの学校に戻ってきたい?)はい。ずっとここにいたい」
石川県内で取材する中で、住民の方から「まさかここで大きな災害が起こるとは思わなかった」、「地区内で防災について話し合っておけばよかった」といった声を多く聞きました。他県での災害は他人事のように見えがちですが、自分の身の回りで起こることを想定して、家族や地域全体で災害が発生した場合の対策を事前に話し合うことが大切だと強く感じました。