「すばらしい時間を過ごせた」 大蔵村肘折で「山形ドキュメンタリー道場」 世界各国の制作者が合宿
国内外でドキュメンタリー映画を手掛ける制作者たちが、2月からおよそ1か月間、大蔵村で合宿を行いました。その名も「山形ドキュメンタリー道場」。山形の文化が参加者たちの創造性を育んでいます。
3月2日、大蔵村の肘折温泉でおよそ1か月間の合宿を終えた国内外の映画監督たちが集いました。参加者たちの目には山形の文化、そこに暮らす人々との出会いそのものが新鮮に映りました。
映画編集者アルニマ・シャンカールさん(インド)「肘折は非常に美しいすばらしい所だった。南国から来た者としては想像を絶するような体験だった」
山形ドキュメンタリー道場は映像制作に取り組む制作者たちが県内の温泉地に長期滞在し、新たな視点を発見してほしいと2018年から毎年開かれています。
この事業を通じ、これまでにおよそ20作品のドキュメンタリー映画が生み出されました。これらの作品は全国の劇場で公開されたほか世界の映画祭で賞を獲得するなど、着実に成果を積み重ねています。
企画しているのは山形市のNPO法人「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で理事を務める藤岡朝子さんです。
藤岡朝子さん「1週間の映画祭の滞在だけでなく、もっと山形の良さをみなさんに知ってもらって、映画作家を育んだり作品が生まれたりする場所にしていきたいという思いから企画した」
今回の事業には8人が参加しこのうちの4人は2月7日から1か月間、肘折温泉に滞在しました。映像制作の第一戦で活躍する国内外の講師によるワークショップに参加したほか、地元の人々との交流しながら、よりよい作品作りに向けたヒントを探りました。
ヤシャスウィニー・ラグナンダン監督(インド)「言葉ができないだけにいろんなセンスが芽生えて鋭利になっていってその世界を知っていくことに気付かされた」
中国から参加した馮艶(フォン・イェン)監督は長江流域で暮らす様々な境遇に置かれた4人の女性を追った作品に取り掛かっています。フォン監督は映画の構成に悩む中、肘折温泉の年配の人たちが古い写真を眺めながら思い出話を語る様子に刺激を受けたと話します。
馮艶監督(中国)「私たちは構成とかつまらないことばかり考えてすごく愚かに感じてしまった。時間が経つだけで記録したものが生きてくる。記憶の力を感じてしまっていっぱい教えられた」
こちらの女性は長期滞在の参加者で、国内から唯一参加した新潟県在住の小森はるか監督。宿泊した旅館の従業員の日常を短編映像にまとめました。
小森はるか監督「本当に贅沢な時間で肘折という本当に自然豊かな場所と温かい人々に癒されることで制作が進んでいく。そんな中で過ごさせてもらって素晴らしい時間だった」
馮艶監督「特にアジアでドキュメンタリーを作っている人にとって山形はシンボルみたいな存在。私たちが帰れる所。自分の作品があればそこに行きたいと思える所でずっとあってほしい」
藤岡朝子さん「道場の目標は続けること。毎年たくさんの映画作家たちが山形の人たちと交流する場を重ねていくことで経済効果よりも大事な文化的な心の深い交流が増えていけばいい」
1か月の間に山形で得た気付きや学びを胸に参加者たちは新たな映画の完成を目指します。