2024年問題 トラックドライバーの残業時間上限規制から3カ月 山形県内の運送業界の現状は
トラックドライバーの残業時間の上限が法律で規制されてから3か月余り。労働環境の改善、物流が停滞しないようどう対応したのか、山形県内の運送業界の現場を取材しました。
酒田市に本社がある運送会社「エイエスエムトランスポート」。10トン積みの大型トラックを50台所有し、52人のドライバーが働いています。
働き方改革法により、ことし4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されました。また、1日の拘束時間も原則13時間以内となりました。
ドライバーの労働環境の改善が期待される一方で長距離の輸送力が不足し、モノが運べなくなったり従来より時間がかかるなどの影響が懸念されるのが「物流の2024年問題」です。
社長の工藤亜紀子さん。2年ほどかけて、この物流の2024年問題への対策を荷主や社員と話し合ってきました。関西方面など長距離の輸送は、ドライバーを途中で一泊させる必要があります。限られた車両とドライバーでこれまでと同じ量を運ぶためには作業の効率化が必要です。
社長工藤亜紀子さん「荷主さんにも協力していただいて通常3日かかるところを4日間かけなければいけないと説明して当然ドライバーは運ぶ荷物の量は同じでも日数が変わってくるので自分の給料はどうなるのか不安ですよね。そこは給与改定してやってきました」
県内の集荷を専門に担当するドライバーの中村正晴さん(52)この日は、鮭川村へ向かいます。
荷主は、村内から年間250万本のバラなどの花を主に関東と関西に出荷している熊谷園芸です。以前は、出荷ケースをすべてトラックの荷台に一個ずつドライバーが積み込みましたが集荷時間短縮のため一部を荷主側にあらかじめ用意した台車へ積み込んでおいてもらうようにしました。この日は、600ケースの出荷があり1台のトラックには積みきれないため、別の集荷を終わらせたトラックが余った時間で応援に駆け付けます。荷物の量は減らさず作業時間を減らしました。
熊谷園芸社長熊谷和樹さん「その日に集荷していたものが前日の集荷になってしまうので園芸会社の社員の残業を増やしてもらうとか従業員の数を増やすなりで何とかカバーしている。関西方面など特に東北の花がもらえていないという事態になっていますのでなるべく関西のお客様の声にも応えらえるようにウチはちょっと無理してでもそちらの出荷も止めずにやる」
これまでと同じ量の荷物を運びながら残業を減らすためには荷主側の協力も求められます。
トラックは、酒田に戻るとすぐさま花が入ったケースを低温倉庫へ移します。ここでも、フォークリフト用の荷台を増やして、積み替え時間の短縮を図りました。
ドライバー中村正晴さん「以前は帰ってきて夜に荷物を降ろして夜9時とか10時とかになる場合もありました。いまは早い時間に帰って来られるので手伝ってもらうこともあります。私たちの時間も早く終われる様な感じでやっています。」
輸送作業を効率化して残業時間を減らす運送会社。しかし燃料代の高騰に加え、積極的に使用するようになった高速道路の料金や、1日の拘束時間の制限で泊まりがけの輸送が多くなったことで、宿泊費と人件費が増加し経費は大幅に増えました。そのため、この運送会社は運送料金のおよそ1割の値上げを行いました。
しかし、値上げと、従来より輸送時間が増えることを了承した荷主は8割ほどに留まり、中には発注を切られたケースもあったといいます。このため、2023年度決算は、減益となったもののこれまでに設備投資した冷凍・冷蔵倉庫の賃貸料収入が下支えし売り上げは増えたといいます。工藤社長は問題は、これからだと語ります。
社長工藤亜紀子さん「法令をしっかり守れている運送会社は全体のどのくらいだと思いますか?私はそんなにいないと思う。ましてや労働者不足。随分ドライバーの年齢が高齢化になっていますので、これから新しい若い人材をどうやって確保して行くかによって売り上げも変わってくると思う。」
これまでと同じ量を運びながら労働時間をどう減らすか。日本社会を支えるトラック物流の働き方改革はこれからが正念場です。