米坂線の復旧案の一つ 「上下分離方式」とは 福島県の「只見線」のケースから探る
米坂線をめぐり、JRが復旧案の1つとして示しているのが「上下分離方式」と呼ばれる運営方式です。福島県には「上下分離方式」を導入し豪雨被害から復旧を果たした路線があります。この福島県の路線のケースから、米坂線の復旧について探ります。
吉村知事「米坂線の復旧に向けて揺るぎない決意を持ちながら一歩一歩着実な進展が図られるようしっかりと取り組んでいく」
米坂線をめぐり、JRは復旧のための工事などにかかる費用を86億円と試算しています。
その上で去年5月、復旧後の運営方式の案として「災害前と同様のJR単独での管理・運営」、「上下分離方式」、「第3セクターによる運営」、「バス転換」の4つを示しました。
JRは一貫して、4つの案のうちの1つの「単独での管理・運営」は難しいとの立場をとっています。そして去年11月には、4案のうちの1つ「上下分離方式」を採用した場合、被災した区間の沿線自治体の復旧後の負担は年間で合わせて13億円から17億円に上るとの試算を示しました。
「上下分離方式」は列車の運行をJRが担い、線路や駅舎など鉄道施設の維持や管理は県や沿線自治体が担うものです。
この「上下分離方式」で豪雨被害から復旧を果たした路線が福島県の只見線です。
2011年、豪雨によって橋が崩れるなどの被害が発生し、およそ27キロ区間が不通となりました。当時、この区間は年間3億円以上の赤字となっていて、復旧には85億円もの費用がかかるとされました。そのため、JRは当初「鉄道での復旧は困難」として、バスへの転換を提案したといいます。
それに対し、福島県や沿線自治体は、地元の負担が増加しても鉄道として復旧することをJRに要請。最終的にかかった復旧費用90億円のうちおよそ4割を県と沿線も含めた17市町村が負担、3割強をJR、2割強を国が負担しました。復旧後の運営方式はJRが提案した「上下分離方式」を採用し2022年10月に全線で運転を再開しました。
被災から「上下分離方式」の採用で沿線自治体とJRが合意するまでおよそ6年、復旧までには11年がかかりました。
沿線住民「特別な思いでうれしい」「きょうの全線再開の日は今までずっと何年も待ち望んできた日なので、とてもうれしくてお祝いしたい気分」
只見線の運営は、福島県が管理事務所を設けて職員を配置し、JRから譲渡されたおよそ2000件の施設や土地の維持・管理を担っています。
福島県によりますと、県や沿線も含む17市町村の維持・管理に掛かる年間の費用負担は現在はおよそ5億円となっているということです。
福島県や沿線自治体などは、復旧後、景観美化活動や駅でのレンタサイクル導入、子どもたちの「学習列車」など、利用者を増やすための様々な取り組みを行ってきました。
復旧後の利用者数は被災前の2倍以上に増加したものの、運行の収支は、2023年度は年間およそ1億7000万円の赤字だったということです。
こうした中、豪雨被害から復旧した只見線の事例を参考にしようという動きが山形県議会で出ています。
去年10月には、交通分野を担当する県議会の委員会に所属する議員たちが福島県の担当者から説明を受けました。
木村忠三県議「地域沿線住民の熱意が行政や事業者を動かしたというのを実感した」
2月の県議会でも吉村知事が只見線について言及しました。
吉村知事「只見線などの復旧事例にある通り、沿線地域が鉄路復旧に向けた熱意を示していくことが重要であり、地域における米坂線の利用拡大や復旧に向けた機運醸成の取り組みをよりいっそう盛り上げてまいりたい」
県の担当者は「一般論」とした上で、「上下分離方式」のメリットについて、列車の運行はJRによってこれまで同様のサービスを提供できるとしています。
一方、デメリットとして施設の維持・管理に多額の費用負担がかかることを挙げています。
現在、県や沿線自治体は費用負担を懸念し「JR単独での運営・管理」を求めていて、依然としてJRとの議論は平行線のままです。
平山雅之副知事「先に進める意味でも、今回JR東日本からも提案があった上下分離と第3セクター、これについて具体的にどういう課題があるか、どの程度の費用負担がかかるかも含めて、具体的に検討を進めませんかと」
県は今後、「上下分離方式」と「第3セクターによる運営」についてメリット、デメリット、見込まれる費用負担などの議論を沿線自治体と具体的に進めたい考えです。