蔵王の樹氷を形成するアオモリトドマツの枯損 ナラタケ菌感染が原因の可能性も
蔵王の樹氷を形作る木が広範囲にわたって枯れている問題で、枯れた要因に”ナラタケ菌”が関わっている可能性があることが樹木診断の第一人者の見解として発表されました。
蔵王では2013年ごろから2016年ごろにかけて樹氷を形作る木「アオモリトドマツ」が山頂付近の広範囲でおよそ2万3000本が枯れてしまいました。枯れた要因には、これまで、木の葉や幹を食べる害虫が大量発生したことが挙げられていました。
NPO法人樹木生態研究会・堀大才最高顧問「害虫だけでこのような大きな被害が出る例は知らない。私はナラタケ菌も集団枯損に関わっているだろうと強く思っています」
蔵王のアオモリトドマツが集団的に枯れた背景に、ナラタケ菌が関わっている可能性があるー。こう指摘したのは、日本の”樹木医”制度を立ち上げ、樹木診断の第一人者として知られる、堀大才さんです。
山形市で開かれた樹木医向けの講演会でその自説を発表しました。
NPO法人樹木生態研究会・堀大才最高顧問「枯れた原因に虫の食害も当然あるでしょう。ただ、そもそも発端でいきなり虫が大発生するのは考えにくい。今まで起きていないものがある年になって急に大発生したなんて。その原因はなんですか、と。ナラタケが害虫の大発生の発端になったのかもしれない」
堀さんは去年8月、蔵王山頂のアオモリトドマツが枯れた現場を訪れました。
NPO法人樹木生態研究会・堀大才最高顧問「見た木でナラタケ菌の根状菌糸束が見られない木は1本もなかった。逆に、害虫の脱出痕が見られない木がいくつかあった。ということは、食害があったとしてもわずかしか虫が入っていないということになる。それで木が枯れるかなと疑問に思った」
9月末の蔵王山頂付近の様子です。
日本樹木医会県支部山口修事務局長「これがナラタケ。そして黒いのが根状菌糸束」
枯れた木にはナラタケ菌が糸状になって絡み付き、木の栄養を吸った痕が残っていました。
日本樹木医会県支部山口修事務局長「特に気を付けなければならないキノコは何種類かあるがナラタケ菌はその中の一つ。色んな木に入っては枯らしてしまう」
ナラタケ菌は自然界に一般的に存在する菌で、広葉樹や針葉樹など種類を問わず多くの木に感染し、枯らします。健康な木であれは菌の侵入を防ぐ力があるものの、台風や大雪などの影響で根が傾くなどストレスがかかった木は感染しやすいといいます。
蔵王の山頂付近のアオモリトドマツは、強風で木が揺れて根が傷つきやすく更に、虫の食害の発生で感染しやすい状態となっていました。また、一帯は木が密集していて根がつながっていたと見られています。1本の木が感染すれば、根を伝って広がっていきます。
NPO法人樹木生態研究会・堀大才最高顧問「ナラタケ菌によって木が弱っていても普通は気が付かない。 キノコが出ないことも多い。台風で木が強く揺すられたが倒れないとか、外見上では何でもないのに10年ぐらい経ったら木が枯れてしまったケースはいくつか報告されている」
一方、ナラタケ菌の感染が疑われる木は山頂付近とは別の場所でも見つかっていました。
日本樹木医会県支部山口修事務局長「堀先生が去年見た、弱っているけども虫の食害の痕がない木があるのは標高約1300メートルの樹氷高原駅近く。枯れていない木にもナラタケ菌が入っている可能性がある。まだ枯れていない木なので樹皮を剥いで確認する訳にはいかないが…」
ナラタケ菌の感染はすでに枯死が確認されているエリアのほかにもさらに広い範囲におよんでいる可能性が浮上しています。