山形の記録的大雨から4ヶ月 被害受けた農業の生産者に負担なし・1割負担…自治体ごとに違い
ことし7月の記録的大雨から4か月です。被害を受けた地域では本格的な復旧作業を前に、農業が続けられるかどうか、岐路に立つ生産者がいます。自治体ごとの支援体制の違いも浮き彫りとなっています。
酒田市の刈屋地区で特産のナシを生産する土井正幸さんの園地は、豪雨で大量の土砂が流れ込みました。園地の一部は4か月前からほとんど変わらない場所もー。地区の中にはナシが泥水を被ったことで、商品価値が失われ、収穫をあきらめた生産者もいます。
刈屋梨生産者 土井正幸さん「道路と平らなくらいの土だったのが、10センチくらいのかさ上げになった。10センチから15センチ土が入ったんだ。こんな軽いところはこれでいいんだ。ひどいところが何にもしていない。結局機械が入れない。」
公的な支援は現時点で見込めないため、自力で作業するしかない状況だといいます。なぜ支援が受けられないのでしょうか。
刈屋梨生産者 土井正幸さん「棚の減価償却が17年だからみんな17年過ぎているから補助できないと言われた」
農地や農業施設が大規模な被害を受けた場合、国が費用の9割程度負担し、市町村が公共事業として取り組む災害復旧事業、いわゆる「公共災」という仕組みがあります。しかし、土井さんの園地の施設は、一定の年数が経過し、資産価値がないとされ復旧支援の対象外になると見込まれています。支援が受けられるかどうか、状況が不透明な中、土井さんは、被害が少なかった園地から自力で苗木の植え替えを始めています。
刈屋梨生産者 土井正幸さん「せがれのために植えているような感じだやるかやらないかは別だ。やらないかも知れないし」
仮に「公共災」の対象となったとしても果樹栽培では、出荷できるようになるまで10年単位の長期間で取り組まなければなりません。生産者は苦境に立たされています。
下青沢地区 相蘇弥さん「地域によっては負担ゼロという地域もあったので、どうやってそういうことが出来たんだろう」
およそ5ヘクタールの田んぼが全滅し、自宅や農機具も被害を受けた相蘇弥さん。被害は広範囲に及び、自力での復旧はほぼ不可能で、「公共災」による工事が頼みの綱です。国が9割を負担しますが、酒田市の場合、残る費用のおよそ9%が市の負担、およそ1%は生産者が負担することと条例で定められています。
生産者 荒生道博さん「ダメージを受けて苦しんでいるこの地域の生産者にさらに負担金を求めるのか?面積が大きくて被害が大きい人ほどとんでもない額の負担金になるんだ。1%といいながら。」
国の負担以外の、残り1割について、市町村と生産者の負担割合は自治体によって異なっています。同じ大雨で被害を受けた遊佐・真室川、尾花沢は経費全額を自治体が負担し、生産者の負担はゼロ。庄内は、生産者の負担上限が5万円、戸沢は負担割合を今後検討するとしています。
一方、鮭川は村と生産者で5%ずつ、新庄、舟形はともに生産者が残る1割を全て負担することとなっています。酒田市の矢口市長は、規定通りの1%負担を求める考えです。
酒田市 矢口明子市長「すべて無料にするのは私はどちらかというと賛成しない。やるんだという気持ち、覚悟を示す上でも農業分野に限らず一定の自己負担があるのが自然な形ではないか」
酒田市では、11月5日から農地の大規模復旧工事の対象になるかどうか、国の査定が行われています。今回の災害で浮き彫りとなった支援体制の違い。農業を続けられるかどうか、生産者はいま、岐路に経たされています。