【独自解説】「生活は楽になる?」「給料はあがる?」乱高下する株価、急速に進む円高…「で、結局どうなるの?」をズバッと解説!私たちの暮らしに大きな影響を与える“神様”とは?
日経平均株価は、8月5日に、過去最大の下げ幅である4400円超を記録。すると、翌日の6日は一時3400円超の過去最大の上げ幅を記録しました。また為替も円高が急速に進行。こうした急激な乱高下が、私たちの暮らしにどのような影響を与えるのか?そして、私たちの暮らしに影響を与える“神様”の存在とは?「読売テレビ」高岡達之特別解説委員の解説です。
■歴史的な株価の乱高下…「で、結局何が凄いの?」
日本の株価ですが、8月5日に大暴落し、6日は史上最大の上げ幅になりました。この史上最大の上げと下げで、「暮らしにどう影響するの?」というご心配の方が多いかもしれません。
アメリカの株の値段と日本の株の値段は、桁がかなり違いますので、この「4000円」がどれだけすごいのか、ということからご説明します。
まず、普通に日本の株価は1日で1000円上がったり下がったりすると間違いなくニュースの第一項目に来ます。ということは、5日の「4000円超の下落」と、6日の「3000円超の上昇」というのは、普段のニュースの3、4倍のインパクトがある上昇・下落だということが言えます。
次に、実際に株を持っている人の感覚で、長いスパンで株の相場を見てみます。
7月11日に4万2000円を超えていましたから、その時持っていた人の感覚では、1万円以上下がったということになります。1ヶ月で1万円下がるということは、財布の中の金の4分の1が消えるということになります。あくまでイメージですが、100万円持っていた人が1か月後に財布を開けたらもう75万円しかないというくらい、株がドーンと下がったということです。
この原因ですが、日本の場合は、企業が急に儲からなくなったわけでも、企業の体力がなくなったわけでもなくて、「為替でしょう」と言われています。
我々の番組でも、円安が長いということになりますと、「ガスも高い」、「電気も高い」、「ものの物価がみんな上がる」と言ってきたわけですが、これも1か月で逆に一気に16円ほど円高に振れました。円高になりますと、日本から海外にものを作って売っている企業の株価を左右します。
例えば、トヨタ自動車は、1円“円高”になるだけで営業利益は年間500億円のマイナスになるといわれています。その1円の16倍。これは大変な金額になるわけです。
■株価が上昇…「で、給料はどうなるの?」
皆さんは、「暮らしへの影響」という丸い言い方よりも、やっぱり「生活費が楽になるんですか?しんどくなるんですか?お給料は一体どうなんですか?」ということが気になるのではと思います。こういう時、経済評論家の人の中には、“上がる”とも“下がる”とも言わず、「どないやねん」という言い方をする人もいます。
まずお給料ですが、「“上げしぶる”でしょう」。
「何なのその“上げしぶる”って?上がらないの?」とお思いかと思いますが、おおよその企業は、ここのところずっと利子がつかなかったので、我々の感覚で言う“貯金”を「銀行に預けておきます」というよりは、“貯金”の一部を株で持っています。
そうすると株価は上がる中では“貯金”が増える。“貯金”が増えると、銀行としてはそれが担保になりますから、よりお金も貸してくれる。このように株を持っているだけで“貯金”が増えるわけですから、「じゃあお給料も上げましょうか」ということになるわけです。
しかし、その“貯金”の値打ちが下がるわけですから、そうすると、「上げない」とも言わないが「上げよう」とも思わない。つまり、“上げしぶる”わけです。
■円高が進行…「で、生活費はどうなるの?」
次に、生活費ですが、こっちは為替が影響します。
円高になると輸入するものが安くなるわけですが、経済評論家の方は、物価が「下がります」とは絶対言いません。「落ち着いてきます」と言います。
これはどういうことかといいますと、「『絶対下がる』とも言わないけれども、この2年間、皆さんが苦しまれた『値上げが一段落する』」、と読み解いたほうがいいと思います。
この物価が反映されるのは、皆さんもよく買われる「お弁当」です。為替の影響が直結します。
例えばこの「唐揚げ弁当」ですが、野菜、卵焼き、鶏肉、これら全部、お米以外は、実は輸入の影響を受けたんです。
まず野菜です。もちろん日本全国で美味しい野菜を作っています。しかし、育てるには肥料がいるんです。肥料はマレーシアとカナダなどから、ほとんど輸入なんです。これが円高に振れますと安く入ってきますから、野菜の値段は「落ち着いてきます」。
次に卵です。もちろん日本で鶏が産んでいます。そして鶏肉は、輸入もありますけれども、国産の有名な鶏もあります。しかし、問題はもともとの“ヒヨコ”なんです。ヒヨコはドイツとアメリカ、オランダの企業が独占しています。ヒヨコも輸入なんです。
日本で育てた野菜、卵、鶏ですが、これらを作るための要素が輸入なんです。為替が円高に触れてくれると、これらの値段が「落ち着いてきます」。
そして、ご飯です。「日本中の田んぼで作っているじゃないか。為替は関係ないじゃないか」と言う人もいるかもしれませんが、最近、お米がないんです。スーパーでも、お買い上げは一人一袋まで二袋までとなっています。
理由は外国の観光客です。「日本食をとにかく食べたい」と、お寿司も爆食いです。ドンブリも爆食いです。「ご飯が足りない」ということも言われていますが、これも“円安”だから、観光客がたくさん来ていたわけで、“円高”になりますと「落ち着いてきます」
■岸田首相が気にする今回の乱高下…「で、政治はどうなるん?」
さて、株を買ったり売ったり表舞台でしていた人で、今回の乱高下を一番気にしている人は、そう、岸田首相です。
その岸田首相がなんで気にするかというと、首相は当然9月の自民党の総裁選勝ち抜いて、自分が解散をしようと思っているわけですが、解散の理由に直撃してきます。その解散の理由として、与党の幹部の人が、ひょっとしたら議席を減らす数を最小限にできる、下手したら勝てるんじゃないか、と言っているのは「物価高対策解散」です。
色んなものの値段が上がり、また、お給料も上げてくれたと言いながらも、びっくりするほど上がっているわけじゃない。一方で今、ガス代や、燃料代で補助金が出ていますが、これも足りなくなって冬になった場合は、また現金支給を考える…そのためには野党の反対を押し切る必要がある…なので、“解散総選挙”をする、という絵を描いているのです。
しかし、物価が落ち着いてしまったら「物価高対策解散」はできません。株価もこのまま株安になったら、上がると言っていた給料にも歯止めがかってしまいます。
■世界的な株安を気にするハリス副大統領…「で、アメリカ大統領選はどうなるん?」
実は今回、日本だけではなくて、株価は世界で落ちています。やっぱり日本の株もアメリカの株も連動していると言われているわけですが、もう一人、大変この世界的な株の安さを気にしているのが、ハリス副大統領です。
今、世論調査の人気では、かなりトランプ前大統領に肉薄していると言われています。しかし、トランプ前大統領は、「今回のアメリカの株価下落は“カマラ暴落”だ」、「アメリカで株が落ちたのはハリス副大統領のせいだ」と批判しています。
トランプ前大統領は、自分が政権にいた時も、今度大統領に返り咲いたとしても、とにかく「株を上げるんだ」ということをすごく切り札にされています。「俺はビジネスマンだ」と。その理由は、アメリカの成人の6割である有権者が、日本と違って株を買って貯金を増やしているという事情があるからです。
では、「ハリス副大統領は何をするんだ?」と言われても、まだ名前が上がって数週間ですから見えてこないわけですね。そうすると、ハリス副大統領がとっても期待するのが、この株の未来を、アメリカの未来を左右する“神様”です。
恩和な顔のこのご老人ですが、世界的には超有名です。「株の神様」、「投資の神様」。言ったことはほぼ100%当たる。この人から予言めいた会話を聞きたくて、お昼ご飯一緒に食べてもらうのに200万ドルは出すという金持ちが世界中にいると言われているぐらいの人物。ウォーレン・バフェット氏です。
この人は、昔は民主党、つまりハリス副大統領の党に献金していたんです。今はもう「政治と距離を置く」と言っています。この人が「応援するぜ」と言ってくれたら、「景気対策どうするんだ」と言われても、「後ろに“神様”がついている」という風になる…と、言われているんですが、まだ何にも発言はされていません。
なお、皆さん、「これアメリカの話だから我々関係ないんじゃないの?」と思わないようにしてください。バフェット氏の一言で東京の株も上がったり下がったり、為替が動くと言われているんです。
だいぶ前にバフェット氏はこう言いました、「日本は買いだ」。気は変わってないでしょうね? (『読売テレビ』特別解説委員・高岡達之)
(「かんさい情報ネットten.」2024年8月6日放送)