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【特集】育成現場からのSOS『盲導犬』が今、危機に…人出不足・資金不足で年々減少していく中、ボランティアや社会復帰目指す人たちと取り組む「新プログラム」の実情と課題

2023年12月1日 21:00
【特集】育成現場からのSOS『盲導犬』が今、危機に…人出不足・資金不足で年々減少していく中、ボランティアや社会復帰目指す人たちと取り組む「新プログラム」の実情と課題
多くの人の支えで誕生する「盲導犬」

 「見通しが悪いカーブでは、一旦止まる」「人が安全に歩けるように、誘導する」―それが、盲導犬の仕事です。犬が1歳のころから約1年をかけて訓練が行われますが、人の命を預かる盲導犬になれるのは、30パーセント程度。盲導犬の数も訓練士の数も、不足しているのが現状です。盲導犬育成の現場の実情と、新たな取り組みを取材しました。

「全てが前向きに生きられるように」…“代えがたい存在”の盲導犬、需要と供給が追い付かない現状

 先天的な病気で目が不自由な小林明美さんは、週に5日、名刺に点字を打つ仕事をしています。

(小林明美さん)
「名前は、チュラといいます。女の子です。結構“やんちゃ”なところもあるような子で。でも一生懸命、仕事はしてくれます」

 毎日の通勤や外出するときは、いつもチュラと一緒です。

(小林さん)
「盲導犬と歩くことが、楽しいです。風を切って歩ける…そういうことに、すごく感動して」

 小林さんの夫・常利さんも、視覚障害があります。13年前に盲導犬のユーザーになってから、気持ちは大きく変わったといいます。

(小林さんの夫)
「もう生活がコロッと変わりました。全てが前向きに生きられるようになりました」

 盲導犬は、目が不自由な人の生活を支える「代えがたい存在」です。しかし、その数は年々減少。 国内で利用を待つ視覚障害者約3000人に対し、活動している盲導犬は800頭強と、供給が全く追いついていません。盲導犬を取り巻く環境に、一体何が起こっているのでしょうか―。

頼みは「ボランティア」や「パピーウォーカー」 しかし、持続的な確保が大きな課題

 大阪・千早赤坂村にある「日本ライトハウス盲導犬訓練所」。この訓練所では、年間18頭前後の盲導犬を輩出しています。現在は、盲導犬候補の23頭の犬が訓練を受けていますが、運営は決して楽なものではありません。

(社会福祉法人・日本ライトハウス盲導犬訓練所 赤川芳子所長)
「やはり寄付に頼っている事業ですので、どうしても景気に左右されてしまうというところが、大きいです」

 盲導犬を育成するためには、一頭当たり約500万円から600万円の費用がかかります。そのうち、行政からの助成金は2割程度で、ほとんどが寄付金で賄われています。しかし、コロナ禍の影響で続く景気の悪化で、寄付金は半減しているのです。

(赤川所長)
「あと、もう一つ大きいと考えているのは、人手不足です。若い方の数が少なくなっています」

 全国にある11の盲導犬育成団体。盲導犬訓練の資格を持つスタッフは、90人程度しかいません。しかし、その業務は多岐にわたります。日々の訓練に加えて、犬の世話や盲導犬を利用する人への定期的な訪問指導、さらに寄付金を集めるためイベントにも参加します。新たに人材を確保したいところですが、資金不足のため、それもままならないのです。

 この慢性的な人材不足を補っているのは、ボランティアです。

(ボランティア・行本明美さん)
「もともと、盲導犬の引退犬をボランティアで預かっていたんです。その子が亡くなったので、それで申し込んで」

 行本さんは、体の手入れや犬舎の清掃・餌やりなどの作業に、週に1度はボランティアとして関わっています。

(行本さん)
「訓練所に入ってきたときは、みんな寂しいから鳴いて鳴いて、お手入れも嫌がったりしていたけれど、来る度にだんだん慣れてきて、賢くなっていくのがよくわかるんです。最終的に盲導犬になって出ていく子を見たら、愛おしいです」

 ボランティアは他にも、盲導犬育成の現場で重要な役割を果たしています。西田さん一家が「つくし」を日本ライトハウスから預かったのは、2022年7月。初めて「パピーウォーカー」になりました。

 「パピーウォーカー」とは、盲導犬候補の子犬を生後2か月から約1年間育てるボランティアのことで、一般家庭で生活しながら家族と様々な経験をして、人間社会で生きていくためのルールを学ばせます。

(西田家・長女)
「ギャップは、すごくありました。散歩中に外でトイレをさせられないとか」
(西田家・二女)
「おやつをあげられないとか」
(西田家・父)
「ペットとは違うので、好き勝手に行動させることができません。散歩は仕事、という認識をさせないといけない」

 飼育するための備品や餌、医療費は訓練所から支給されますが、パピーウォーカーになるには条件があります。日本ライトハウスの場合、「家の中で飼うこと」「家族が留守にしがちでないこと」「車を所有していること」などです。これらの条件を満たすことが求められ、「犬を育てるということが生活の中で大きなウェイトをしめること」「別れがつらい」などの理由から、パピーウォーカーを続ける家庭は限られているのです。

(西田家・父)
「ルール的に、3時間以上家を空けないでくださいということがあります。家族が仕事をしていると厳しくなるので、この先は、したい気持ちはすごくあるんですけれど、ちょっとできないかなと」

 パピーウォーカーの持続的な確保もまた、大きな課題です。

成果を上げる刑務所の「盲導犬パピー育成プログラム」 “訓練生”も社会貢献する喜びを体験

 そうした中、日本盲導犬協会が運営する「島根あさひ訓練センター」では、盲導犬育成につながるあるプロジェクトを実施して、成果を上げてきました。

(公益財団法人「日本盲導犬協会」島根あさひ訓練センター・山田大センター長)
「私たちは“訓練生”と呼んでいるんですけど、『訓練生の方が子犬を育てる』というプログラムをやっています。盲導犬のパピーを育てていただくことで、パピーウォーカーの確保にもなりますし」

 訓練センターに隣接する刑務所、「島根あさひ社会復帰促進センター」と協力して、法務省からの委託で行っている「盲導犬パピー育成プログラム」。受刑者の矯正教育の一環です。

 訓練生と呼ばれる受刑者が月曜日午後から金曜日午前まで、子犬のトイレトレーニングや健康管理、食事、運動、遊びなどの世話やしつけをします。

(受刑者)
「ここに来て、責任感というものを感じられたので、成長したかなと思います」

 訓練生は、子犬の育成を通して命を慈しむ心を養い、社会貢献することの喜びを体験します。

(受刑者)
「私は罪を犯して今この施設にいますので、そういう自分でも社会貢献できたらいいなと思って、希望して参加させていただいています。こうやって傍にいるだけで、すごく心を和ませてもらえますし、私もこれから社会復帰ができたら、人の心を癒せる優しい人でありたいなと思わせてもらいます。そういうことも、パピーに教えてもらいました」

 このプロジェクトは、14年間続いています。受刑者たちは、これまで75頭の子犬を育成し、うち19頭が盲導犬になりました。

 多くの人の支えで、ようやく誕生する盲導犬。1人でも多く、必要としている人に届けていくには、私たちの理解と協力が必要です。

(「かんさい情報ネットten.」2023年10月10日放送)

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