×

【独自取材】ドラマでも話題の“地面師” 『法律屋』『道具屋』『銀行屋』…10名前後でグループを形成、その驚きの巧妙手口を専門家が解説 プロもお手上げの偽造スキルには“元プロ”が関与?「確実に防ぐのは困難」

2024年11月30日 12:00
【独自取材】ドラマでも話題の“地面師” 『法律屋』『道具屋』『銀行屋』…10名前後でグループを形成、その驚きの巧妙手口を専門家が解説 プロもお手上げの偽造スキルには“元プロ”が関与?「確実に防ぐのは困難」
大胆かつ卑劣な手口とは―

 フィリピンから帰国し、日本で逮捕された一人の男。仲間と共謀し及んだとされるのが、土地の所有者になりすまし不動産会社から大金を騙し取る、いわゆる“地面師”詐欺です。『ミヤネ屋』は、ドラマで話題の地面師のリアルを追ったノンフィクション作家を独自取材。大胆かつ卑劣な犯行の全容とは―。

■1億2300万円を騙し取った“地面師グループ” 仲介役の男を逮捕

 2024年11月15日、逃亡先のフィリピンから帰国した際に逮捕された71歳の男。警視庁によると、2013年に仲間と共謀し、横浜市にある土地を「所有者が売却を希望している」と嘘を言い、不動産会社から1億2300万円を騙し取った疑いなどが持たれています。

 さらに、不動産会社の信用を得るために、土地の所有者の運転免許証などを偽造したとみられ、警視庁は認否を明らかにしていませんが、別の詐欺事件にも関与していると見て捜査しています。

 この地面師グループ中で71歳の男は“仲介役”で、“地主のなりすまし役”は既にこの事件や別の事件で逮捕されている受刑者の男だったということです。

■ノンフィクション作家・森功氏への独自取材で見えてきた『地面師らの手口』

 不動産を巡って巧みに大金を騙し取る“地面師”は、『Netflix(ネットフリックス)』オリジナルドラマの題材となり、注目を浴びています。本物の地主が知らぬ間に土地の売却などを進めるこの詐欺は、一体どのような手口で犯行に及んでいるのでしょうか。

 実際の事件の手口などをまとめた著書を出版している、ノンフィクション作家・森功氏によると―。

(ノンフィクション作家・森功氏)
「地面師はグループを形成するんです。弁護士や司法書士など法律に長けた『法律屋』、印刷会社を請け負う『道具屋』、あとは口座をうまく作ったり金銭の手配をする『銀行屋』など、いろんな役割分担をして、それを集めるのがリーダー格です」

 今回の事件での具体的な構成は不明ですが、森氏によると、地面師グループの裏には反社会組織がいます。グループは10人前後で構成され、役割を分担して犯行に及びます。主犯格はリーダー・その下にいる“なりすまし役”の手配や演技指導を行う『手配屋』、そして『地主のなりすまし役』です。『法律屋』『道具屋』『銀行屋』の他にも交渉役の『取引の仲介役』や土地情報をリサーチする『情報屋』などがいて、横の繋がりは希薄だということです。

(森氏)
「横の連絡を、あまり取らせないようにしている。後々、芋づる式に犯行がバレてしまうことを嫌がるし、『頼まれたからやっただけ』という言い訳として成り立つような仕組みを作ります」

■地面師の手口①「地主なりすまし役は“スカウト”で調達」

 そして、地面師たちの巧妙な手口というのが―。

(森氏)
「地主なりすまし役は、詐欺師ではないです。前科・前歴があったら、地主なりすまし役にはなれないから、素人を連れて来るんです」

 森氏によると、地主なりすまし役には、金に困っている一般の高齢者を誘い込むケースが多く、その際に温泉街の人脈を使うケースがよく見られ、お金に困っている仲居さんを説得し、なりすまし役にすることがあるということです。

■地面師の手口②「なりすまし役に演技指導」「交渉に“愛人役”で同席も」

 さらに―。

(森氏)
「生年月日や住所、自分が住んでいる所の環境、例えば近所にスーパーがあるとか、そういうことまで覚え込ませます」

(森氏)
「取引現場で話さなきゃいけないので、そういう演技をさせる。でも、素人だから演技にも限界があって、やっぱり穴があるわけですよ。それを、どうサポートするか」

(森氏)
「身内として、取引現場に立ち会う。舞台装置ですよね。“一つの脚本を書いて、舞台装置を作る”というのが、彼らのやり方です」

 また、地面師自身が“地主の愛人役”となり、打ち合わせの場に同席して、何かミスが発生したときにフォローできるようにする事例もあるということです。

■「確実に防ぐのは困難」地面師らの偽造にプロもお手上げ 今後の対策は…

 土地の売買に必要な主な書類には、『本人確認書類(運転免許証など)』『印鑑証明書及び実印』『土地の権利書』があります。

 しかし、司法書士によると、「本人確認書類や印鑑証明書・実印は、プロの地面師にかかれば偽造可能。また、土地の権利書は紛失した場合でも代替方法があり、確実な本人確認方法はない」ということです。

 また、「ICチップ付きカードを読み取るなど、既に精度の高い本人確認方法はあるが、全ての人がカードを持っていないため、読み取りが義務化されていない。カードが普及すれば、防止効果になる。しかし、確実に防ぐのは困難」だとしています。

Q.不動産業者や司法書士といったプロが書類を見て「問題ない」となるわけですから、素人は騙されますよね?
(『読売テレビ』高岡達之特別解説委員)
「よくある話ですが、不良退職者の元プロがいます。例えば、『銀行屋』には職場でトラブルを起こして辞めた元銀行員がいて、今勤めている人と変わらない知識を持っていますから、どういう所が見られるかも詳しいです」

Q.ICチップ付きカードといいますが、それも偽造される可能性がありますよね?
(高岡特別解説委員)
「それに、日本人は書式が好きです。警察がよく言いますが、詐欺商法の被害者が『とてもキレイなパンフレットだった』と。そんなのは、すぐ作れます。さらに、はんこ文化で、『はんこが』『実印が』と言いますが、それも作れます。だから究極は、人間の体です。ICチップよりももっと正確な『顔認証』などで登録するような時代にならないと、難しいと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年11月18日放送)

最終更新日:2024年11月30日 12:00
    一緒に見られているニュース
    読売テレビのニュース