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【特集】「今から心臓マッサージのやり方を言うので、やってください!」“命の最前線”「消防管制室」で奮闘する『通信指令員』 中には救急車の出動を断らなければいけない場面も…求められる“集中力”と“判断力” SOSに応える24時間に密着

2024年5月6日 11:00
【特集】「今から心臓マッサージのやり方を言うので、やってください!」“命の最前線”「消防管制室」で奮闘する『通信指令員』 中には救急車の出動を断らなければいけない場面も…求められる“集中力”と“判断力” SOSに応える24時間に密着
365日・24時間、SOSに応え続ける―

 365日・24時間体制で119番通報を一手に担うのが、『消防管制室』です。一日に約370件寄せられる通報に対応する『通信指令員』に求められるのは、素早く状況を把握する“集中力”と、状況に応じて的確な指示を出す“判断力”。命の最前線で、街の人からのSOSに応える彼らの奮闘を取材しました。

「対応のしかた次第で、患者の様相が変わる」命の最前線・消防管制室で奮闘する45人の通信指令員たち 求められるのは、集中力・判断力・緊張感 「操作ミスは命取り」

 ここは、“命の砦”―。365日24時間体制で119番通報に対応し、救急車・消防車に出動の指示をする『消防管制室』です。

(通信指令員・薮内生也さん)
「対応のしかた次第で、その後の患者の様相が全く変わってくるので、『人を助ける』という意味で“最前線”だと思います」

 神戸市消防局・消防管制室では、45人の通信指令員が交代で勤務しています。

(通信指令員)
「何と何の交通事故?」
-(通報者)
-「車に、軽乗用車が突っ込んだ」
(通信指令員)
「救急車が向かっている上で、ケガ人の方、意識ありますか?」
-(通報者)
-「大丈夫です」
(通信指令員)
「本人さんに『どこが一番痛い?』と聞いて、すぐに教えてください」
-(通報者)
-「どこ痛いですか?胸?胸です」

-(通報者)
-「ケガはわからないんですけれど、口から泡を吹いて」
(通信指令員・小西美緒さん)
「今おられる場所を、まず教えてほしいです。現場ですか?」
-(通報者)
-「現場です」
(小西さん)
「倒れておられる方は、男性・女性どちらですか?」
-(通報者)
-「男児、男の子」
(小西さん)
「何歳ぐらいですか?」
-(通報者)
-「10歳前後」
(小西さん)
「ケガされています?」
-(通報者)
-「外傷は見えませんが、全く喋れない。おう吐、おう吐おう吐」
(小西さん)
「今、板宿の車(救急車)をそちらに出しましたんで」

 通報を受けた指令員は、患者がいる住所がわかり次第、現場に一番近い救急車を向かわせます。さらに、患者の容体を詳しく聞き取り、その情報を救急隊に送ります。

(小西さん)
「119番、神戸消防です」
-(通報者)
-「父親が6時ごろ急に、座っていてゴロンと倒れて」
(小西さん)
「お年は、おいくつの方?」
-(通報者)
-「78歳です」
(小西さん)
「意識ありますか?」
-(通報者・女性)
-「全くないです」
(小西さん)
「呼吸もなさそう?」
-(通報者)
-「呼吸もなしです」
(小西さん)
「今、救急車2台、そちらのほうに向かわせましたので。今から心臓マッサージのやり方を言うので、やってください」

 指令員は皆、消防隊や救急隊として現場に立った経験があります。命に危険があると判断したときには、救急車が到着するまでの間、通報者に対して応急手当てをお願いするケースも。

(小西さん)
「あなたの両方の手の付け根あたりを重ねていただいて、患者さんの胸と胸の真ん中に、そのまま押し当ててください。上から垂直に、手は突っ張った状態。深さは5センチ。リズムを言います、1・2・1・2・1・2、まず声を出して30回やってもらっていいですか?どうぞ」

 この処置が、患者の予後を大きく左右することも…。

-(通報者)
-「1・2・1・2・1・2」
(小西さん)
「それぐらいのペースで、1・2・1・2!心臓マッサージは止めないように、やっておいてもらってもいいですか?」
-(通報者)
-「はい!」

 指令員には、通報内容から患者が置かれた状況を読み取り、素早く判断することが求められます。

(小西さん)
「選手交代します」

 常に緊張感と集中力が求められるため、原則1時間から1時間半で交代する決まりです。

(通信指令員・飯田明さん)
「朝5時から作ってきました(笑)」
(小西さん)
「タケノコ入り?」
(飯田さん)
「タケノコとコンニャク入り!」

(小西さん)
「1時間指令台についたら、みんな結構、頭がヘロヘロです」
(飯田さん)
「自分の気持ちを盛り上げてから指令台に座らないと、操作ミスは命取りになるので」

 消防管制室への通報は、一日に約370件。中には、救急車の出動を断らなければいけない場合もあります。

(飯田さん)
「こけたのは、あなた?」
-(通報者)
-「そうです」
(飯田さん)
「どこも痛くない?」
-(通報者)
-「どこも痛くない」
(飯田さん)
「病院に行く意思はある?」
-(通報者)
-「行く気ない」
(飯田さん)
「行く気ないの…?どうしても病院に行きたくない?」
-(通報者)
-「起こしてもらわないと、仕方ない」
(飯田さん)
「ごめんなさい。起こしてもらうというだけでは、なかなか救急車は出せないんです。近所の方とか…」
-(通報者)
-「なら、よろしい!」
(飯田さん)
「よろしいの?」
-(通報者)
-「はい、もう仕方ない」

 救急車を呼ぶべきかどうか、通報者自身が判断できないこともあります。限りある救急車を有効に使い、一人でも多くの命を救うため、神戸市消防局では、医師や看護師にアドバイスを求められる『救急安心センター』の利用を呼びかけています。

「みんなに助けてもらっている―そんな42年間です」通信司令官として20年以上キャリアを積み…消防管制室の“ムードメーカー”、夢は『木のおもちゃ屋さん』

 神戸市消防局で指令員として20年以上のキャリアを持つ、薮内生也さん(60)。

(薮内さん)
「はい119番、神戸消防です。救急車ですか?火事ですか?」

 時には通報者に適切な処置を指示、時には気が動転している家族を落ち着かせる…正に、この道の『スペシャリスト』です。

(薮内さん)
「具合が悪いのは、あなた本人ですか?」
-(通報者)
-「子どもで、2歳です」
(薮内さん)
「男の子?女の子?」
-(通報者)
-「女の子です」
(薮内さん)
「今、どんな症状でしょうか?」
-(通報者)
-「熱が出て、けいれんしています」
(薮内さん)
「けいれんは何分ぐらい続いています?」
-(通報者)
-「5分ぐらいです」
(薮内さん)
「今も続いています?」
-(通報者)
-「はい」
(薮内さん)
「救急車を今、この時点で出動させました。体を冷やすことを何かしていますか?」
-(通報者)
-「していないです」
(薮内さん)
「大至急、水と氷をビニール袋に入れて、氷のうを作りましょう。タオルを1枚当てて、子どもさんの首筋と脇の下、足の付け根の辺りに2つぐらい置きましょう。電話を切らずに、今やりましょう」
-(通報者)
-「はい!はい!」
(薮内さん)
「けいれん、まだ続いていますか?」
-(通報者)
-「まだ続いています。あっ、今(けいれんが)終わりました」
(薮内さん)
「今、終わりました?もう救急車がマンションの下に着きましたから、そのまま体を冷やしながら待っていてください」

(薮内さん)
「具合が悪いのは、どなたになりますか?」
-(通報者)
-「奥さんが帰ってきたら、風呂場で倒れていて。恐らく亡くなっていると思うんですけど」
(薮内さん)
「倒れているのは、奥さん?」
-(通報者)
-「ご主人です」
(薮内さん)
「顔面は浴槽の中に浸かっていますか?」
-(通報者)
-「浴槽ではなく、外ですね。洗い場の所です」
(薮内さん)
「体を触ってみて、冷たくなったりしていますか?」
-(通報者)
-「もう冷たいですね、体は」
(薮内さん)
「奥さんに代わっていただくことできますか?」
-(通報者)
-「ちょっと待ってください。代われます?」
-(患者の妻)
-「すみません」
(薮内さん)
「救急車を今、出発させています」
-(患者の妻)
-「おっちゃん(夫)冷たいねんで、もう!」
(薮内さん)
「もしもし、奥さん落ち着いて。お話を聞かせてください。何時ごろにお風呂に入られたか、わかります?」
-(患者の妻)
-「私が家を出たのが6時」
(薮内さん)
「朝の6時?」
-(患者の妻)
-「6時20分ぐらいに家を出たんです」
(薮内さん)
「じゃあ、その後やね?」

(消防司令長・池田浩之さん)
「消防生活の半分ぐらいを指令官として過ごされていますので、いろんなことを知っていますし、仕事面だけでなく、“ムードメーカー”といいますか雰囲気を良くしてくれる存在なので、非常に助かっています」

Q.この後は、どうされるんですか?
(薮内さん)
「この後は仮眠をして、0時45分から4時まで、またここで勤務をして。仮眠時間帯に大きな災害がなかったら、その状態で。あったら、大きな音が鳴って起こされて、駆けつけて、やります」

 緊張感と集中力が求められる生活も、まもなく終わり。薮内さんは、あと半月ほどで定年退職することが決まっているのです。

 木工細工が趣味の薮内さんには、定年後にやりたいことが―。

(薮内さん)
「木のおもちゃ屋さんです。こんな感じ」
(カメラマン)
「おっ、カメラ!すごい」
(薮内さん)
「思いがけないものを作って、思いがけない顔をしているのを見ることが楽しい(笑)」

 中学生の時から続けている木工細工が、仕事を忘れられる束の間の時間。腕前は相当なもので、ツーリングができる木製の自転車までも作ってしまうほど。

 薮内さんは高校を卒業してすぐ、希望していた消防局に配属。その後、消防隊や救急隊員として様々な現場を経験する中で、阪神・淡路大震災のすさまじい現場もくぐり抜けてきました。

(薮内さん)
「自分の思った通りに人を助けられなかったことが、すごくたくさんあります。心もへこたれるときがありますから、大勢の仲間に助けてもらった。自分は人を助けるけど、みんなに助けてもらっていた―そんな42年間です」

鳴り止まないSOSと真摯に向き合い、命を助ける『消防管制室』 ここは、“命の砦”であり、“命を救う最前線”―

-(通報者)
-「コンビニの前におっちゃんが倒れていて。お酒を飲んでいるのかな。酔っぱらっているのかもわからへんけど、『複雑骨折や』と言って倒れているんです」
(通信指令員)
「お兄さんに、ケガをしているのか確認してもらえますか?」
-(通報者)
-「『複雑骨折や』と言ってます」
(通信指令員)
「もう一回、確認して。酔っぱらっていたら、違うことを言うかもわからないから」
-(通報者)
-「お兄さん、足、大丈夫?今は大丈夫?『大丈夫』と言っています」

(薮内さん)
「はい119番、神戸消防です。救急車ですか?火事ですか?」

 この日の夜も、通報のコールが鳴り止むことはありません。

(薮内さん)
「男性・女性、どちらでしょう?」
-(通報者)
-「女性です」
(薮内さん)
「一番、今ツラい症状は何ですか?」
-(通報者)
-「もう意識がボーッとされていまして」
(薮内さん)
「その方、年齢は何歳?」
-(通報者)
-「80歳です」
(薮内さん)
「今、救急車を出動させたんですけど、まず患者さんに呼びかけて、目を開けるか試してください」
-(通報者)
-「目を開けられません」
(薮内さん)
「じゃあ、意識が全くないです。下あごを動かしながら、口を開けたり閉めたりするような、そんな口の動き・あごの動きはありますか?」
-(通報者)
-「あごの動きはありますね」
(薮内さん)
「念のために心臓マッサージをしましょう。心臓が止まりかけのときに、そういう動きがありますから。一回やってみて、嫌がる仕草があれば、やめたらいいです。今、とりあえず30回、やってみてもらえますか?」
-(通報者)
-「1・2・3・4・5・6・7・8…」
(薮内さん)
「どうですか?痛がるような顔つきがありますか?」
-(通報者)
-「それは、ないです」
(薮内さん)
「なかったら続けてください。生きている方にやってもかまいませんから、今は。救急隊が1分で建物の下に着きます。救急隊が横に来るまで、続けておいてください」

(飯田さん)
「今、顔色はどう?」
-(通報者・母親)
-「顔色は赤いです。泡を吹いています」
(飯田さん)
「泡?泡を吹いている⁉泡を吹いているなら、体を横向けにして。救急車が向かっているから」
-(通報者・母親)
-「わかった」
(飯田さん)
「お母さんが慌てたら、お子さんがもっともっと不安になるから」
-(通報者・母親)
-「わかった、わかりました」
(飯田さん)
「足裏をボリボリかいても、嫌がらないね?」
-(通報者・母親)
-「嫌がらないです」
(飯田さん)
「横向けに、もう一回しよう」
-(通報者・母親)
-「横向け、はい…あ、何か言いました」
(飯田さん)
「声が出た?」
-(通報者・母親)
-「はい、出ました」
(飯田さん)
「声が出たね。OK、OK」
-(通報者・母親)
-「あっ、ちょっと嫌がりました」
(飯田さん)
「足を嫌がった?」
-(通報者・母親)
-「少し。左も嫌がった!」
(飯田さん)
「今ね、ちょっとずつだけど良くなっていっている状態だから。どちらにしても、救急隊に診てもらおう」

 『消防管制室』―ここは、命を救う最前線。今日も、“助けを求める声”に応え続けています。

(「かんさい情報ネットten.」2024年3月18日放送)

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