高校サッカー 14年ぶりベスト4高川学園
第100回全国高校サッカー選手権大会。山口代表・高川学園は準決勝で青森代表・青森山田に0-6で敗れたものの、86回大会以来14年ぶりとなるベスト4入りを果たしました。今大会を振り返り、未来を展望します。
■「Takagawa Gakuen」 SNSで話題沸騰のトルメンタ
14年ぶりのベスト4入り、その快進撃の原動力となったのがSNSを中心に話題となったセットプレー「トルメンタ」です。スペイン語で「嵐」を意味する言葉の通り、フリーキックやコーナーキックの際にゴール前の選手5、6人が手をつないでぐるぐる回ると、キックの直前に手を離して分散。マークにつく相手を混乱させるセットプレーの形です。
そのセットプレーが石川代表・星稜との1回戦でいきなり炸裂します。前半8分、右サイドの深い位置でフリーキックのチャンスを得ると、ゴール前にいた5人の選手が手をつないで回転を始めます。すると8番・北健志郎選手のキック直前に一気に分散。マンマークで対応しようとする相手守備陣の虚をつくと、ファーサイドに走りこんでいた10番・林晴己選手が頭で合わせ先制に成功します。
その後は一進一退の攻防となりますが、林晴己選手と中山桂吾選手がそれぞれ2ゴールを挙げ、インターハイ全国ベスト4の星稜を4-2で下し2年ぶりの初戦突破を果たしました。
■接戦をものにした2回戦、3回戦
2回戦は、同じ中国地区の岡山代表・岡山学芸館との対戦となりました。プリンスリーグ中国に所属する岡山学芸館に対し、高川学園は県リーグ1部。最初にチャンスをつかんだのは岡山学芸館でした。前半11分、ペナルティーエリア内で高川学園のGK徳若碧都選手が相手の10番・山岡亮太選手を倒しPKを献上、先制を許します。
0-1で試合を折り返し迎えた後半、高川学園は林晴己選手や北健志郎選手を中心に攻撃を展開します。すると後半11分、得意のセットプレーから得点が生まれます。左からのフリーキックのこぼれ球が林晴己選手の前にこぼれると左足を一閃。エースのゴールで同点に追いつきます。勢いに乗った高川学園はさらに後半20分、またもセットプレーの流れから得点を奪います。フリーキックのこぼれ球を拾った林晴己選手がクロスを上げると、中で待っていた中山桂吾選手がヘディングで逆転ゴール。1回戦に続く9番・10番のゴールで2回戦突破を決めました。
続く宮城代表・仙台育英との3回戦は0-0で迎えた後半アディショナルタイムでした。左からのコーナーキックは相手ディフェンスにクリアされますが、途中出場の西澤和哉選手がこぼれ球に反応し左足ボレー。出場後のファーストタッチで劇的な決勝ゴールを奪い、ベスト8進出を決めました。
■14年ぶりの国立の舞台へ
国立競技場をかけた準々決勝、相手は神奈川代表・桐光学園でした。この大一番でチーム1の活躍を見せたのがゴールキーパーの徳若碧都選手です。10番・三原快斗選手を中心に高川学園ゴールに迫る桐光学園に対し、徳若碧都選手がビッグセーブを連発。流れを引き寄せると後半15分、またもセットプレーから先制ゴールを奪います。右サイドのコーナーキックを獲得すると相手ディフェンスに当たったボールはファーサイドで待ち構えていた西澤和哉選手のもとへ。途中出場の西澤和哉選手がこれを落ち着いて流し込み2試合連続の決勝ゴール。国立競技場で行われる準決勝進出を決めました。
「大会前のケガで出場がかなわなくなった奥野奨太主将を国立に連れていく」というチームの目標を達成し、ゲームキャプテンを務める北健志郎選手は「今まで支えてきてもらった分、良い姿を奥野に見せられるように、奥野だけでなく他のチームメートの思いも背負って試合に出る。僕たちがやらないといけない」と準決勝への意気込みを語りました。
■世代最強の高い壁
14年ぶりの準決勝、国立競技場のピッチに立った高川学園の選手たちは世代最強、松木玖生選手を擁する青森山田と対戦しました。「前半を我慢して無失点で折り返したい」という江本監督のゲームプランもあり、3バック+2ウイングバックと5バック気味のシステムに変更して臨みましたが、わずか前半3分でした。左サイドで相手に与えたフリーキックからヘディングでのゴールを許し先制点を奪われます。
反撃に出たい高川学園でしたが、青森山田の圧倒的なフィジカルと守備を前にペナルティーエリアまで侵入することができません。前半2失点、後半4失点を喫し、3位という結果に終わりました。
5試合すべての試合でフル出場を果たした北健志郎選手は「後輩たちに日本一は見せられなかったが、この悔しさは忘れないでほしい。試合に出た選手に引っ張ってもらい、また国立に戻ってきてほしい」と後輩たちに全国優勝への思いを託しました。
また江本孝監督は、「青森山田は攻守にパワフルで、相手の懐に入る守備のレベルが非常に高かった。もっともっと経験して様々な指導をしていきたい」と今後の意気込みを語りました。
山口県勢最高成績となる決勝進出はなりませんでしたが、今大会高川学園は様々な形のセットプレーで試合を盛り上げ、来年以降の活躍にも期待が持てる試合を見せてくれました。また、試合をこなすごとにチームがまとまり、厳しい試合を勝ち抜く姿は多くの人に勇気と感動を与えてくれたと思います。101回大会はベスト4超え、そして全国制覇へ。より高いレベルを目指しながら山口県の高校サッカーを引っ張り続ける存在であってほしいと思います。
※写真は14年ぶりのベスト4入りを果たした高川学園
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/山口放送)