【W杯こぼれ話】オランダの監督 前立腺がん治療と並行してW杯予選戦う 選手に伝えたのはW杯出場決定後
◇サッカーFIFAワールドカップカタール2022(11月20日~12月18日)
メッシ選手を擁するアルゼンチンと4強をかけて戦うオランダ代表を率いるのはルイ・ファン・ハール監督です。
現在71歳で、これが自身3回目の代表監督。実はことし4月にオランダで人気のトークショーに生出演し、「進行性の前立腺がん」と2020年に診断されたことを明かしています。また、25回の放射線治療を受けたことも明かしていて、「治療は効いたから、(体調は)よくなってくるよ」と語っています。
大変だったのは治療中だった21年8月にオランダ代表監督に就任してから。当初、選手にはがんであることを明かさなかったといいます。トークショーでファン・ハール監督は「一緒に働く人にこうしたことは明かさない。彼らの選択肢に影響を与えたり、決断するときの気持ちに影響を与えてしまうかもしれないから、選手は知るべきではないと思ったんです」と話しました。
「前立腺がんでは死なないしね。少なくとも90%の人は」と笑う監督に対し、司会者は驚きの表情。「治療を受けるときは裏口から入ったり、いろいろ配慮してはもらった。近しい友達や親戚には伝えたけど、メディアには情報が出てこなかったのは、僕を取り巻く環境が素晴らしいことを物語っていると思わないか?」と監督は続けました。また、別のオランダメディアのインタビューに対しては、「人は弱いものだ。でも、私は例外。鉄でできてるから」とジョークを飛ばすことも。
代表合宿の時には、選手に悟られないよう、夜に放射線治療を受けていたということで、練習中でもジャージーの下にはカテーテルなどをつけていたといいます。
21年11月16日に行われたノルウェーとの試合では、車いすでスタンドから試合を見ていた監督。イギリスのガーディアン紙によりますと、オランダの本戦出場が決まってから、選手にがんであることを伝えました。
カタールでイギリスのBBCに取材を受けたデイリー・ブリント選手は「もちろん(監督の病気については)頭の隅にあります。でも、それを勝利へのモチベーションにはしない。どんな試合でも、勝ちたい。どんな試合でもコーチのためにプレーしている。行けるところまで行きたいと思ってます」と述べています。
病気を経て、少し“丸くなった”との評判もあるファン・ハール監督。カタールでは大人気のようで、写真撮影をお願いするサポーターや海外の報道陣が後を絶たないようです。