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江川ストレート 体感速度を数値化し解析

2021年12月6日 20:29
江川ストレート 体感速度を数値化し解析

打者の手元で“球が浮き上がる”ような軌道のストレートで、昭和の怪物と呼ばれた元巨人の江川卓さん。打者の体感速度はどのような数値になるのかが、4日の「Going!Sports&News」で放送されました。

数値計算に協力してくれたのは、現在パ・リーグのソフトバンクに対戦相手の傾向などの情報を提供しているライブリッツ社です。当時の投球映像を最新のAI分析で数値を割り出しました。

分析した一球は、江川さん自身が「最も速かった」と話した、1981年に20勝を達成した時の最後のストレート。当時26歳、大洋の中塚政幸さんから三振を奪ったボールです。

バッターに近いところの「終速」で測られていた当時の計測では、球速140キロ台。しかし、現在の投げた瞬間の「初速」で測ると、158キロであったことが判明しました。

さらに数値化してもらったのは、“ホップ成分”という値です。プロ野球の平均的なストレートの軌道に対して、どれだけ高い位置でミットに届いているかの差を表した数値になります。

分析した結果、ミットに届いた高さはNPBの平均的な位置よりも江川さんの位置の方が高く、その差は23.4cmでした。いかに、江川さんのストレートが、高い軌道のままミットへ到達しているかがわかります。プロの平均を大きく上回るのが、江川さんのストレートの特長です。

ライブリッツ社代表取締役社長の村澤さんによると、NPB平均より20cm以上高くなるとされ、平均の軌道よりボール2~3個分さらに高くなると言われ、バッターからすると「通常落ちるはずの軌道が予想より落ちない、速い」と感じ、空振りしやすい球質になると言います。

また江川さんに加え、松坂大輔投手、大谷翔平投手、佐々木朗希投手の回転数も分析してもらいました。各投手様々な速球を投げていますが、今回は江川さんが投げた軌道に近いものを比較対象として番組独自で選びました。


■対象となる投球シーン
 ※rpmは1分間の回転数

◇江川卓
 1981年9月9日
 大洋・中塚政幸を三振
 回転数:2750rpm

◇松坂大輔
 1999年4月7日
 日本ハム・片岡篤史を三振
 回転数:2583rpm

◇大谷翔平
 2017年10月4日
 オリックス・T-岡田を三振
 回転数:2528rpm

◇佐々木朗希
 2021年11月6日
 楽天・岡島豪郎への3球目
 回転数:2520rpm

江川さんの回転数は3投手よりも約200回転以上多い結果になりました。これは縦のキレイな回転軸と回転数で、ものすごく「ホップ」していることを表しているデータとなります。

江川さんに、その回転数のルーツを聞くと、幼少期に過ごした静岡県の天竜川での練習を挙げました。川幅80メートル以上ある対岸に向かって、毎日石を投げていた時、リリースの瞬間の指のかかり具合を磨いていったということです。

“プロ野球最速”とも言われた江川さんのストレートをなかなか数値化されない“打者の体感速度”を解析することで、そのスゴさが数値として表れました。

最新技術で明らかとなった自身のストレートのスゴさに、江川さん本人はスタジオで「ありがたいです。初めて聞いた言葉がいっぱい出てきた」とし、「この年で勉強になりました」とコメントしています。