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北京五輪 氷点下の開会式"潜入"ルポ アナウンサーが目撃した裏側

2022年2月5日 23:22
北京五輪 氷点下の開会式"潜入"ルポ アナウンサーが目撃した裏側
開会式の会場に向かう山本紘之アナウンサー

ついに開幕した北京五輪。取材のため北京入りしている日本テレビの山本紘之アナウンサーが開会式に"潜入"。開会直前の様子などテレビ画面には映らない裏側を綴ります。

◇◇◇

開会式を取材出来るということで、人数制限がある中、日本テレビの記者として中に入る機会を得ました。私、山本紘之が会場で実際に見てきたものを、時間に沿ってお伝えします。(日本との時差は-1時間)


*PM3:40
news every.での生中継が終わるなりリュックを背負った私はメディアセンターのスタジオを飛び出した。20人近い警察が見守る厳重な手荷物検査を済ませて専用バスに乗り込む。普段なら10分ほどの距離だが、その日はなぜか必要以上にぐるりと大回り。30分かけてようやく目的地の「鳥の巣」国家スタジアムに到着。

*PM4:30
さて、開会までの持て余した残りの3時間半をどう過ごそうか。撮影が禁止されているため映像取材は出来ない。まさか極寒のスタンドで待つわけではあるまい。誘導されるままに進んでいくと、メディアラウンジが目に入る。なるほど、始まるまでここで待機しろということらしい。長丁場に備え、ラウンジにはカップ麺、バナナ、お菓子や水などが用意されていた。私もカップ麺とバナナで腹ごしらえ。今回日本メディアの代表として入ることが出来た日本テレビのディレクター、カメラマンとの3人で、開会式終了後の生中継についての打ち合わせを行いながら移動の指示を待った。

*PM6:30
所定の席へ。気温は氷点下1.5℃。平昌五輪の時に比べ、寒さはそこまで厳しくない。いわゆるゴール裏と言われるスタンドの一部にはブルーシートが敷かれ、それを隔ててメインスタンド側が「バブル内」、バックスタンド側が「バブル外」の人が座る席になっている。導線もバブル内外で全く別のルートとなっていてそれぞれの人が交わらないようになっていた。

*PM7:00
スタンドにはすでに多くの招待客が着席。間隔を一つずつ空けているものの、ほぼ埋まっている印象を受けた。しばらくすると会場アナウンスと共にMC2人が登場、番組収録の前説さながら、観客への拍手、手拍子、カウントダウン、スマートフォンのライトを使った演出のレクチャーが始まった。

*PM7:30
プレパフォーマンスショーが始まる。アップテンポな曲に乗せて、小中学生くらいの子どもたちが全身を使って踊っている。本番前とは思えないクオリティの高さと子どもたちの懸命な姿に、涙が溢れるところだった(早い早い…)。隣のブロックでは欧米の記者が立ち上がってノリノリで踊っている(こっちも早い!)。

*PM7:57
中国の習近平国家主席とIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が入場し、握手をする様子がスクリーンに映し出される。いよいよ本番だ。パフォーマンスとカウントダウンの映像、そして花火。最高の雰囲気の中、開会式がスタートした。私の目にははっきりと見えた花火すら、最新技術を使ったCGではないのかと少し疑ったが、どうやら本物のようだ。

*PM8:17
プロジェクションマッピングで映し出された立体的な氷の壁から巨大な五輪マークが現れた瞬間、会場からは大きな歓声が上がる。最新技術を駆使した演出を誇らしげな表情で見ている中国の人が印象的だ。スタンドから見ても、何がどうなっているのか、仕組みは全くわからない。

*PM8:48
選手入場も中盤を迎え、寒さで体が震え始める。平昌の時は席を空けることなく、いわゆる密の状態だったが、今回はコロナ対策で席を一つ空けている。隙間がある分、おそらく体感温度は平昌の時よりも低いのではないだろうか。テンションが上がってきたのか底冷えを解消するためなのか、一心不乱にダンスをする外国人記者もちらほら。

*PM9:15
トイレに立つとそこにはストーブがたかれていて、寒さに耐えかねた人たちが取り囲んでいる。まさに"鳥の巣のオアシス"。心からその一員に加わりたかったが、後ろ髪を引かれながら自席に戻ることに…。

*PM9:32
バッハ会長がスピーチのためスタジアムの袖でスタンバイするも、あまりの寒さにピョンピョンと飛び跳ねている様子が目に入った。バッハ会長の気持ちが痛いほどよくわかる。

*PM10:08
観客席がスマートフォンのライトをつけ、パフォーマーと観客が一緒になって幻想的な空間が作られる。このあたりの一体感は直前の練習の賜物だ。

*PM10:16
聖火点灯。トーチがそのまま聖火として掲げられるという斬新な演出に会場も盛り上がる。

*PM10:30
全てのプログラムを終え、記者やボランティアも一斉に席を立つ。スタジアムの外にはホテルの名前が書かれたプラカードを持つ人が立っていて、それぞれが自分のホテルのバス停へと向かうのだろう。私はnews zeroの中継があるため、ここで離脱。会場をあとにした。


改めて振り返ると、来場した人たちは観客席で見て楽しむだけでなく、空間を演出する一員として参加し楽しむことが出来たのではないかと感じます。「観客参加型の開会式」そんな印象を受けました。決して完璧な状態で迎えられたわけではないはずですが、バブル内外で大きな混乱が起こることもありませんでした。ここから約二週間、閉会式まで何事もなく過ごし「大変だったけど、楽しい五輪だったね」と言えるような大会になることを心から願っています。

(日本テレビアナウンサー 山本紘之)

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