【速報】「クラック発生のリスクを完全に払拭できず」クイーンビートル運航再開を断念 JR九州が30年以上続く日韓航路から撤退へ
博多と韓国・釜山(プサン)を結ぶ高速船クイーンビートルについて23日、JR九州は運航再開を断念することを発表しました。子会社のJR九州高速船は、船舶事業から撤退します。古宮社長は23日午後2時半から臨時の記者会見を開き、説明しています。
23日のJR九州の取締役会で、船舶事業の撤退について決議しました。撤退の理由について、外部専門家の意見を検討する中、ハード対策を施しても船体へのクラック発生のリスクを完全に払拭することができず、運航再開のための確実な安全が担保できないと判断したとしています。その上で、今後の継続的な事業運営を総合的に勘案した結果、JR九州高速船の船舶事業から撤退することを決めたとしました。
古宮社長は「クイーンビートルの運航再開をお待ちいただいたお客様、運航再開に向けて協力いただいた皆様の期待に添えなかったことを深くお詫びし、長年にわたり日韓航路を支えてくださった皆様に心より感謝申し上げます」と話しました。
これまで古宮社長はクイーンビートルについて、運航再開の前提としていた船体の浸水箇所の改修について「技術的な難しさがある」との認識を示し、日韓航路からの撤退を含め検討していることを明らかにしていました。
クイーンビートルをめぐっては、運航会社のJR九州高速船がことし2月に浸水を把握しながら隠ぺいし、その後およそ4か月間、運航を続けていました。8月に国の抜き打ち検査で不正が発覚し、運休が続いていました。クイーンビートルの浸水センサーが鳴らないよう位置を上にずらすなどの隠ぺい工作を行っていて、海上保安庁は10月、船舶安全法と海上運送法違反の疑いで強制捜査に踏み切りました。
この問題を受け、親会社のJR九州は11月、JR九州高速船の前社長と前運航管理者、前安全統括管理者の合わせて3人を懲戒解雇しました。JR九州の古宮社長は2か月、報酬を30%減額しました。
JR九州が設置した第三者委員会は調査報告書をまとめ、浸水隠しは船舶安全法違反にあたり、刑事罰の対象になる可能性が高いとしています。また「親会社であるJR九州の関わりがもの足りない」と指摘し、企業の管理体制も問われています。
JR九州は各グループ会社で安全を担当する役員を選任し、毎月の定例会議で安全意識の向上を図るなどの再発防止策をすでに発表しています。
クイーンビートルの先代のビートルは水中翼船ジェットフォイルとして、1991年に日韓航路に就航しました。航行中に水中翼を引き上げるとカブトムシの角のように見えることからビートルと名付けられました。1泊2日で海外旅行が楽しめる新たな日韓航路は人気となり、両国の交流を支えてきました。1991年の就航から2020年1月までの累計の利用者は650万人を超えています。
赤い船体が特徴の新型高速船クイーンビートルは、博多と釜山の間を3時間40分で結びます。定員は先代のビートルより大幅に増えた502人で「移動を楽しむ高速船」として誕生しました。新型コロナの水際対策の一環で2020年3月から国際航路を運休していましたが、2022年11月4日段階的に運航を再開し、国際航路デビューしました。
JR九州が運行するクルーズトレイン「ななつ星in九州」や、先代のビートルを手がけた水戸岡鋭治氏がデザインしました。