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実は50人に1人…見逃さないで!「子どもの弱視」早期発見に“3歳児健診”が大切な理由

2024年9月28日 9:00
実は50人に1人…見逃さないで!「子どもの弱視」早期発見に“3歳児健診”が大切な理由

最近、中学1年生になる甥がメガネをかけ始めた。学校の眼科健診の際に、結膜炎の症状があり病院で再検査したところ、思いがけず「弱視」と診断を受けたのだという。

しかし本人は「メガネをしなくてもちゃんと見えている」と言い、治療用メガネの装着を渋るので両親も困っているようだ。両親も「もっと早く気づいてあげたら…これから視力が改善されるのか分からない」と不安を口にした。

実はこの弱視、子どもの50人に1人の割合でみられるという。早期発見にもつながる“3歳児健診”の重要性とは。

(デジタル取材班・ 津野紗也佳)

■視覚発達にはタイムリミットがある

「弱視」とは一般的に、視力の発達が不十分で、メガネやコンタクトで矯正しても視力が1.0に満たない状態のこと。

人の目は、生後すぐは光が分かる程度。成長とともに視力も発達し、1歳で0.2~0.3、2歳で0.4、3歳から6歳で多くの子どもが1.0ほどになる。

視力の発達には5、6歳までの時期に「ものをくっきり見ること」が必要だが、それが何らかの原因で妨げられると正常な視力の発達が止まってしまうのだ。

弱視と聞いて「うちの子は、周りの木や車もよく見つけるし関係ないだろう」と思う親も多いはず。ただ、幼児は0.3ほどの視力があれば日常生活を不自由なく送ることができ、周囲も目が悪いことに気づかないケースもあるので注意が必要だ。

愛媛大学医学部 眼科学講座で弱視・斜視を専門とする飯森宏仁助教によると、弱視になる原因は以下の4つ。

①屈折異常弱視=遠視や乱視が強いために起きるもの。遠くにも近くにもピントが合わず、脳が刺激されるチャンスがない。
②不同視弱視=遠視や乱視の程度に左右差がある場合に起きる片目の弱視。片目は見えるため自覚症状も乏しく、特に注意が必要。
③斜視弱視=斜視により起きる弱視。片目で見ているので、その時にもう片方の目を使っていない。
④形態覚遮断弱視=乳幼児期に視覚刺激が遮断されることによるもの。先天白内障、眼瞼下垂など。

■早期に発見すれば改善できる可能性が高い

この日、飯森助教のもとを訪れた松山市に住む田中ユウトくん(3歳・仮名)。市の3歳児健診で乱視疑いとなり精密検査を受けていた。

ユウト君の父親は、他ならぬ眼科医であるが「家では正確に視力を測れないし日常生活で困っていることもなかった。健診をきちんと受けないと気付けなかった」と言う。

検査の結果、ユウトくんは片目の弱視と診断され、その後メガネを使っての治療を進めることとなった。

飯森助教によると、治療の基本はメガネをかけること。それでも視力に左右差がある場合はアイパッチなどで良い方の目を隠し、悪い方の目を積極的に使うようトレーニングする。4歳頃までに治療を開始できれば多くの場合、視力は1.0以上になるという。

■弱視を見逃さない!導入すすむ「フォトスクリーナー」とは

近年3歳児健診をきっかけに弱視の治療を開始する子どもが増えていると言われているが、飯森助教はこれを“弱視の発見率”が向上していることによるものだと説明する。

これまでの3歳児健診では、各家庭で簡易的な視力検査を行った上で、健診会場で保健師が2次検査を実施。そこで精密検査が必要な子どもを眼科医につなげるのが一般的だった。しかし実際、3歳児に対して正確な視力検査を行うことは難しく、弱視のリスクが見逃されていたケースも多いと考えられる。

そこで、弱視の発見に一役買っているのが「フォトスクリーナー」による屈折検査。カメラで写真を撮られる感覚で、遠視・乱視の程度やその左右差などのデータをわずか数秒で取ることが可能となった。

1台およそ120万円と高額だが、厚労省が22年度、母子保健対策強化事業のひとつとして、市町村に対して検査機器の購入にかかる費用の補助を開始。これにより、全国的に「フォトスクリーナー」の導入が進んでいる。

愛媛県内でも全市町の3歳児健診で使用されるようになり、多くの自治体で「要精密検査」「要治療」とされる子どもが増加し、弱視の発見にもつながっている。

■子どもの弱視は「症状がない」場合が多い

飯森助教によると子どもの弱視や斜視のサインは、
・黒目の位置が真ん中でない
・あごを上げて(または下げて)、首をかしげてものを見る
・片目をつぶって見る
・ひどくまぶしがる
・目が揺れている(眼振)
これらの症状がひとつでも当てはまればすぐに眼科を受診してほしいという。

そのうえで「注意しなければならないのは、“症状が何もない”場合が多いということ。特に不同視弱視については片目は見えているので、3歳児健診で引っかかっても『困っていることはない』という人がほとんど。そのため、健診で要精密検査とされても『まだ大丈夫だろう』と、病院に行かない保護者もいます。必ず、早めに眼科を受診してほしいです。また、発見が5歳以降になると視力の改善は難しくなるが、たとえ小学生や中学生であっても諦めず治療はするべき」と強調する。

■スマホやタブレットの使い過ぎは近視に影響

「スマホの使用」が弱視の増加や発症と関連するという報告はないものの飯森助教は、小学生の「近視」人口増加に影響していると指摘。

またスマホやタブレットの使い過ぎで内斜視を発症する場合があり、一部で弱視を引き起こしている可能性もあるという。目と画面を30センチは離すこと、30分に1回は必ず5分程度休憩する、外遊びを取り入れるなどを日々意識する必要がある。子どもたちの目を守るために、大人がしっかりと見守ることが大切だ。

最終更新日:2024年9月28日 11:21