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急増する死亡事故…この時期の特徴は?ドライバー全員が無事故・無違反の物流会社に学ぶ「安全運転マイルール」

2024年2月5日 19:00
急増する死亡事故…この時期の特徴は?ドライバー全員が無事故・無違反の物流会社に学ぶ「安全運転マイルール」
物流会社で聞いた“安全運転マイルール”

交通事故の死者が急増する中、愛媛県警では「スピードの出し過ぎ」に注意を呼び掛けています。

ドライバーの‟安全運転意識”を高めるために…独自の取り組みで社員全員が無事故・無違反を達成している東温市の物流会社で“安全運転マイルール”を取材しました。

2か月間で交通事故死者数は18人「異常事態」で取締り強化

先月25日。日の出前の午前6時、今治市の国道196号で行われていたのは、スピード違反の取締りです。

延永巡査:
「反則金が1万5千円、点数が今回2点になります」

およそ2時間の取締りで7人が検挙されました。

県内では、去年12月9日からおとといまでのおよそ2か月の間に交通事故で18人が亡くなっています。去年の同じ時期と比べ11人も多く、県警は「異常事態」だとして先月中旬から県内全域で取締りを強化していたのです。

1月~3月に多い死亡事故の特徴は

年明けから3月にかけてのこの時期、県内の死亡事故にはある特徴があります。

今治警察署 交通課 堀田大樹警部:
「早朝の6時台に交通事故死者が多いということや車両の単独事故がかなり多いというところがあります。やはりまだ暗い時間帯であるということと、交通量が少ないので車の速度が出やすいということがあると思います」

事故の発生率を高め、重大化の原因にもなる『スピードの出し過ぎ』です。

時速50kmと時速60km 制御距離の違いはどれくらい?

速度が上がると、危険度はどれくらい増すのか?県警の協力のもと、実験を行いました。

県警本部 交通企画課 井上貴志警部:
「時速50キロで走行してきた場合と時速60キロで走行してきた場合の制動距離。止まれる距離の違いを感じてもらおうと思います」

車は画面右側から走行し、オレンジ色のパイロンで急ブレーキをかけます。

まず、時速50キロの場合。車の先端は急ブレーキをかけた地点からおよそ10mで停止

一般道の最高法定速度10キロアップの時速60キロになると…?

杉本記者:
「50キロで同じ場所で止まった時ですよね。これいま車1台分どころか5mくらい先に」
井上さん:
「そうですね。車1台分くらい違いますよね」

停止した車の先端は急ブレーキをかけた地点からおよそ15m先。

杉本記者:
「こんなに止まれないんだ…」
井上さん:
「たった10キロアップしただけでこれだけの停止距離が変わってくるということですね。50キロであればここで止まっていたわけなので、ギリギリ歩行者と当たらずに済んだかもしれない位置ということになります」

「(今回は)身構えた上でブレーキを踏んで この距離なので、実際の道路ではこういったブレーキを踏むことは難しいと思いますので、もっと前の方に進むんではないかと思います」

実際に、こんなデータも。

県警本部 交通企画課 塩見浩二警部:
「令和5年中の県内の交通事故の 衝突前の平均速度は約25キロなんですが、死亡事故ではこれが約50キロと2倍のひらきがあります」

違反者の多くが語った「スピードを出しすぎた理由」

こちらは、去年1年間に県内で発生した車両と歩行者との事故の致死率を速度別にまとめたグラフです。

20キロ台で5.7%、30キロ台でおよそ倍の11.1%と上昇し…50キロを超えると60%に跳ね上がります。

今治市でのスピード違反の取り締まりで、多くの違反者が語った「スピードを出し過ぎてしまった理由」は?

今治警察署交通課 延永いぶき巡査:
「出勤される方が多いので、職場に急いで行こうとして速度を出してしまったという方がほとんどでした」

社員全員が無事故・無違反!物流会社が決めた“3つのルール”

ドライバーの‟安全意識”をどう高めるか?独自の「ルール」で、安全運転に取り組む企業があります。

段ボールの配送を行う東温市の物流会社「レンゴーロジスティクス」。県などが毎年実施する『えひめ無事故・無違反123コンテスト』に9年前から参加しています。

レンゴーロジスティクス 東温営業所 武田三四郎所長:
「5人1組全員達成です。50人」

1チーム5人で参加し123日間、全員で無事故・無違反の達成を目指すこのコンテスト。運転免許をもっている人であれば誰でも参加でき、達成すると、抽選で30万円分の旅行券など賞品もあります。

今回、営業所から参加した50人のスタッフ全員が無事故・無違反を達成しました。

武田所長: 
「何の為に安全運転するかというのは、会社のためでもなく自分のためということを認識してもらったら、おのずと安全運転することができると思います」

社員全員の安全運転意識を向上させるため大きく3つのルールを決めました。

まず①「見える化」。

レンゴーロジスティクス 東温営業所 山下晋一課長:
「これが安全日報で…ちょっと急ブレーキ踏んだら2点とかひかれるんですよ」

運行するトラックに急加速や速度超過がなかったかなど、運転を‟点数化”する運行記録計を搭載。

山下さん:
「急ブレーキ踏んだら、どういうところで急ブレーキ踏んだ?と聞いて、それは危なかったなということで、今度からは前もって自分で予測して運転して下さいと注意します」

気になる運転があった場合は、管理職がドライバーから直接話を聞き、アドバイスします。

また、月に2回ドライバー別の「安全運転点数」をランキング化して掲示。

事務 佐伯諭さん:
「前回優勝したんで、今回も優勝しようという気持ちになって、みんな取り組んでますんで」

②「運転技術を競う」こともやる気を高める有効な手段です。

ここでは半年に1度、全国39の事業所対抗で安全運転の平均点数を競う社内コンテストを実施しています。

そして、もうひとつが…

佐伯さん:
「雨が降りそうなんで気を付けて運転して下さい」
ドライバー:
「分かりました、行ってきます」

③コミュニケーションです。

武田所長
「調子ええか?とか声掛けは必ずするようにしてます。ドライバーが 帰ってきた時の顔とかは、ちょっと見るようにはしてます」

ルールを設定する中でスタッフからは、仕事中だけでなくプライベートでも自然と安全運転を心掛けるようになった、という声が聞こえました。

ドライバーたちに聞く“安全運転マイルール”

長期間、無事故・無違反を継続している皆さん、「安全運転のマイルール」は?

トラックドライバー 村上顕彰さん:
「イライラしないこと。焦ってもしょうがないんで、慌てずに落ち着いて運転や作業をすること」

トラックドライバー 酒井龍太さん:
「遅い車もあると思うんですけど、そういうのにイライラしてたら 視野が狭まってくるんで。広い心をもって、しょうがないなという気持ちで、家族もいますし。家族の笑顔と、今日も運転ご苦労様、と言われたら、無事帰ってきてよかったなと思いますね」

山下晋一課長:
「周囲をよく見て運転するというのが一番ですかね。右左見た時に、あの車出てきそうって思ったらアクセル踏めないじゃないですか。周囲を確認したら(スピードを)出せなくなります」

佐伯さん:
「信号が青に変わった、どん!やなしに、青に変わったよし、左右確認があってからのスタートじゃないと、一呼吸おいてから行動する」

あなたも、きょうから何か一つ「安全運転のマイルール」を決めてみませんか?