×

【独自解説】大阪地検トップの元検事正“性的暴行”を一転『無罪主張』 涙で訴えた女性「大切なものを全て失った」 いったい何故?裁判のポイントを詳しく解説

2024年12月14日 20:00
【独自解説】大阪地検トップの元検事正“性的暴行”を一転『無罪主張』 涙で訴えた女性「大切なものを全て失った」 いったい何故?裁判のポイントを詳しく解説
“性的暴行”から一転「無罪主張」

 大阪地検トップの元検事正・北川健太郎被告が、当時の部下の女性検事に性的暴行を加えた罪に問われている問題で、初公判で被告は起訴内容を認め謝罪しましたが、2024年12月10日の会見では、一転し無罪を主張。なぜ無罪主張に転じたのか?今後の裁判のポイントを『読売テレビ』指宿文解説委員と『司法担当』丸井雄生記者を交えて徹底解説します。

■元検事正・北川健太郎被告、起訴内容認めたはずが一転し『無罪主張』 涙で訴えた女性「被害申告をしなければ良かった」 被告が無罪主張に転じた理由とは―?

 改めて経緯を整理します。6年前の2018年、酒に酔った部下の女性検事に深夜から未明まで性的暴行が行われたのかという事案になります。女性は「夫が心配するので帰りたい」と懇願しましたが、被告は「これでお前も俺の女だ」と発言したと言われています。

 これに関して、2024年6月に北川被告が逮捕された際、「同意があると思った」と話していましたが、同年10月の初公判では、『準強制性交罪』で起訴され、「事実を認め争うことはしません」と謝罪をしました。しかし同年12月10日に弁護人が会見した際には、「行為は争わないが女性が抵抗できない状況かは疑わしい」とのことで、無罪を主張しました。

Q.2024年12月11日の会見で女性はどんな様子でしたか?
(『司法担当』丸井雄生記者)
「女性は涙ながらに、『被告の“無罪主張”に関して絶句し、泣き崩れた。先日の初公判の際、罪を認め、ようやく一歩一歩踏み出したところだったが、だからこそショックが大きかった。被害申告をしなければ良かった』とすら話していて、非常に悲痛の胸の内を語っていました」

Q.北川被告が、一転して無罪を主張した理由はどこにありますか?
(丸井記者)
「罪状認否ですね。起訴内容を認めるかどうかを決める理由について、この“検察組織”を挙げています。女性が当初、被害申告できなかった理由も、この“検察組織”が背景にあったと発言しています。女性は北川被告から『検察庁に迷惑がかかるから、この事件のことを言わないでほしい』と言われ、自分自身が働いている検察庁で陥れたくないということで、被害をなかなか申告できなかったという背景があります」

(丸井記者)
「一方、北川被告は、最初は起訴内容を認めていました。この理由については、『検察庁に迷惑がかからないようにしたい』という思いだったとのことですが、今回、一転して無罪を主張するようになった理由は起訴内容を認めたことで、“検察庁に向いた批判”などを受けたからだといいます」

(丸井記者)
「さらに、“一部事件関係者へのあらぬ疑い”も、無罪主張の理由にあったと話していたのですが、“あらぬ疑い”というのは、性被害に関して、検察庁内で女性副検事が、検察庁内の職員に対して誹謗中傷を行っていたと女性検事は訴えています。これは、刑事告訴もしていて、こうした理由から検察組織を背景に、罪を『認める』『認めない』が変わっているという状況です」

 各々が『検察庁に迷惑がかかると思った』ということで、女性も被害申告をしませんでした。一方で、北川被告が罪を認めた理由については、「検察庁に迷惑をかけたくないから認めた」ということです。

 元々、女性検事は、事件関係者である女性副検事が、捜査情報を北川被告に漏洩していたのではないかという疑いを持っていました。そこに関しても、被害申告があり、2024年10月に告訴をして受理されています。

 この件に関して、北川被告が無罪主張に転じた理由は、「“一部事件関係者へのあらぬ疑いや、検察庁への批判”などを受け、自らの記憶と認識に従い主張することにした」とし、組織を守るために無罪主張に転じたということを、理由の一つとして挙げています。

(丸井記者)
「今回、検察庁を守るために起訴内容の認否を一転二転させていますが、無罪主張をするということが、そもそも検察の捜査を否定することにもつながるのではないか、この目的に沿わない行動なのではないかとも取ることができます。こういった一転二転している主張を、今後、裁判の中でどのように説明するのか、この姿勢が問われることになると思います」

 北川被告の弁護人によると「Aさん(被害者)が抗拒不能であったという認識はなく、Aさんの同意があったと思っていた。被告に故意はなく、無罪」と主張しています。

 一方で女性検事は2024年12月11日の会見で、「どう主張すれば無罪判決を得やすいか熟知している元検事正が、主張を二転三転させて被害者を翻弄して『同意があったと思っていた』という姑息な主張」と話しています。

 この姑息な主張とはどういうことなのか、元検事・若狭勝弁護士によると「通常であれば抵抗できるが、女性はお酒に酔って抵抗できない状態。それを利用して『同意があると思った』と主張したのでは。今後は女性と被告の主張の信ぴょう性を裁判所が判断」と話しています。

 “同意”に関しては逮捕時も『同意があったと思っていた』という発言になっているため、判決が確定するまで推定無罪となるというところも含めて、今後、裁判で事実関係の確認が重ねられるということです。しかし、それがセカンドレイプと言われるように、これから色んな証言をしていかなければいけません。

■北川被告の主張は「性犯罪の撲滅を阻害し、むしろ助長させる」 性犯罪被害の認知件数増えるも『不同意性交』の被害にあった女性は半分以上が「誰にも相談していない」

 女性検事は会見で「被告が主張を二転三転させ、無罪を争うことが、私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる方々を、どれほどの恐怖や絶望に陥らせているか、今後多くの性犯罪者に“同意があったと思っていた”と主張させ性犯罪の撲滅を阻害し、むしろ助長させることになるかを知ってもらいたい」と訴えていました。

 そして法律も変わってきています。去年の7月から『強制性業交罪』から『不同意性交罪』というものに変わっています。同意がないと犯罪になるということを、より明確にしたということです。

 8つの成立要件である『暴行・脅迫』『心身の障害』『アルコール・薬物』『睡眠・意識障害』『不意打ち』『フリーズ』『虐待』『地位の利用』に満たすものが罪に問われるとのことです。そして控訴の時効期間も、10年から15年に延びました。法律が変わってから被害申告をして、警察が認知した件数も2023年から比べると1000件以上増えているということからも、訴えたくても訴えられない方が非常に多くいたのが分かります。

 『不同意性交』の被害にあった女性に関して言うと、『誰にも相談していない』とういう方が55.4%います。その被害の申告になってくると、すごく大きなハードルになります。女性だけではなく、『不同意性交』というのは男性も被害者になる話なので、この事案が、他人ごとではなく、実は身近にある問題かもしれないということも考えて、この裁判の行方を見守っていきたいと思います。

(「かんさい情報ネットten.」2024年12月11日放送)

最終更新日:2024年12月14日 20:00