【異変】「生物学的に大変なことが起こっている」 「『マルチデミック』に向かっている可能性」インフルエンザの感染が急拡大!病院はパンク状態で薬不足も追い打ちに…医療機関が休みに入る年末年始に備えるべきものとは?
今、日本中で急拡大しているインフルエンザの感染。複数の感染症が同時流行で医療機関もパンク状態。さらには薬剤不足まで…そんな中、多くの医療機関が休みに入る年末年始に、発熱などの症状が出た場合どうすればいいのか?いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長の解説です。
■「生物学的に大変なことが起こっている」 インフルエンザ感染拡大で医療機関はパンク状態…コロナ禍の反動でインフルの免疫力が低下か
1医療機関当たりのインフルエンザ報告数は、先月下旬ごろから急増しています。1週間ごとに倍増を繰り返し、2024年12月15日までの1週間で、19.06人と、『注意報レベル』の10人を大幅に超える事態に。日々、診療する医師からは、まるでコロナ禍を思い出すような言葉がー。
(いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長)
「生物学的に大変なことが起こっているんだろうなって。パンクしてますよね、完全に」
医療機関は今、どういった状況なのでしょうか。東京都内にある伊藤博道院長のクリニックでは、朝の診療受け付けを開始すると、僅か10分で待合室がいっぱいになりました。電話での診療予約受け付けもキャンセル待ちの状態に。
このクリニックでは、今月に入り患者数が急増し、医師はパンク状態だと訴えています。取材日前日には、35人に検査を実施し、24人がインフルエンザ陽性。このクリニックでは過去最多だといいます。
(伊藤院長)
「インフルエンザの強い症状の出ている患者さんが、比較的多いんじゃないかと感じています。来る途中で、エレベーターの中で意識を失って、倒れてしまうというような患者さんが連日のようにいる。『コロナと違って、インフルエンザは慣れている』と思ってしまう人もいると思いますけど、決して侮れない」
Q.コロナの時はインフルエンザが減りましたが、その反動というのはあるのでしょうか?
(伊藤院長)
「やはりそれが大きいのではないかと思います。去年もある程度インフルエンザの流行はありましたが、去年感染した人は、一部なので、まだまだインフルエンザに対して、長い間感染していない、免疫力が低下している人が多いんじゃないでしょうか」
今回のインフルエンザの特徴は、喉の痛みや声が出ない、せき込むなどの呼吸器の症状を訴える人が多いといいます。伊藤院長によると「脱水・意識レベル低下などショック症状も多い」とのことです。
Q.今回のインフルエンザに対し、どういうことを注意して診療に当たっていますか?
(伊藤院長)
「インフルエンザは適切な時期に診断をして、適切な治療をするということが、改めて大事だと思っています。強いけん怠感や熱などの症状がまずあって、頭痛や吐き気、あるいは咳から出る人も結構多いですが、いろんな症状が出ますから、まずは疑って、適切な時期に検査をする。例えば熱が出た日に検査をやって陰性でも、1日目、2日目に陽性に変わることも少なくありません。そこを見落とさないようにしないと、実は重症化して命に関わるというケースもあり得るので、そこも重要だなと思っています」
Q.インフルエンザは、飛まつ感染、接触感染、空気感染のどれに当たりますか?
(伊藤院長)
「インフルエンザは基本的には飛まつが主で、接触感染がそれに次ぐと言われています。インフルエンザは、コロナに比べると感染力はやや弱いとは予想されますが、現状、すごく感染力が強い。これは、ただ単に飛まつの距離とかだけではなく、我々も免疫的にすごく弱くなり、空気が非常に乾燥しているという環境も合わせて、非常に感染しやすいと考えたほうがいいです」
今後のインフルエンザについて、伊藤院長は「年が明けて学校が始まる(2025年)1月10日あたりから感染者数が増え始めるのでは。その後1月末に“過去最高レベルの波”到来の恐れ」と話しています。
■「『マルチデミック』に向かっている可能性がある」マイコプラズマや複数の感染症が同時流行の恐怖…抗生物質も不足か
そして複数の感染症が同時流行しています。マイコプラズマ肺炎は、夏から急増し2024年11月中旬の定点当たりの報告数が過去最高となりました。そして新型コロナウイルスは最近また増えてきました。インフルエンザとの同時感染も見られるとのことです。
(伊藤院長)
「マイコプラズマの流行がまだ収まっていない。コロナの患者さんも、この1週間で、その前と比べると2.5から3倍ぐらいに増えました。さらに、溶連菌やRSウイルスも、となってくると、『トリプルデミック』であったり、『マルチデミック』に向かっている可能性がある」
『マイコプラズマ肺炎』とは、4年に一度は流行の傾向にあるそうですが、“コロナ禍”の影響で日本では8年ぶりに流行中です。熱が下がった後も長期にわたって咳が続き、患者の約8割が14歳以下で、成人の感染や重症化も見られます。効果的な抗生物質があるので、早めに医療機関で受診を勧められています。
Q.マイコプラズマは、大体1月から6月ぐらいの流行といわれていますが、まだ落ち着かないんですか?
(伊藤院長)
「これが医療現場では非常に厄介になっています。咳止め薬の不足にもつながりますし、マイコプラズマは、検査や診断が簡単ではありません。患者さんも苦痛ですし、正しい診断が得られても、有効な抗生物質があると出ていますが、実際は、この抗生物質が不足していたり、耐性菌の問題で使える抗菌薬が限られたり、その使える抗菌薬が、例えば妊婦さんや授乳婦さんとか、小さいお子さんが、使えなかったりというのもあり、簡単ではないんです」
■年末年始に体調不良になったら?薬に頼れない時に、備えておくべきもの
また、様々な感染症が拡大する中、深刻な問題となっているのが、薬不足です。東京都内の薬局では、先月ごろから、咳止め薬や抗生物質などの欠品が続いているといいます。現在、入荷のメドが立っていない薬は、全部で約300種類で、年末年始に薬の流通が休みでストップし、さらなる深刻化が予想されています。
薬不足の要因としては、薬の使用者が急増したことや、薬の材料不足や調達遅延、一部製薬企業の不祥事で医療医薬品の約2割の品目が限定出荷・供給停止になったことが考えられます。
Q.薬に頼れない場合、どう乗り切ればいいでしょうか?
(伊藤院長)
「インフルエンザのことを中心に話しますと、症状はきついですが、基本的に多くの人は乗り切れるはずです。ただ食事がとれない、脱水が進むというケースは、大人も子どもも命に関わってきます。例えば、経口補水液とか、スポーツ飲料やゼリー飲料。ゼリー飲料の中には、たんぱく質、プロテインが入っていたり、ビタミンも入っていたりと、バランスをある程度伴いながら入っているのもあります。本当にひどくなると、全く食事がとれなくなり、それで2日~4日たつと、大人でも命に関わってきますので、そこを乗り切るという意味では、そういう準備をしておくといいのではないかと思います」
Q.果物はどうですか?
(伊藤院長)
「果物もいいですね。水分と糖分と電解質が不足してくるので、水分と糖分、ビタミンを豊富に含む果物というのは、保存食としても優れていると思います。特にビタミンCは免疫を強める作用もありますので、ぜひ身近に置いてください」
Q市販の検査キットも使用するといいですよね?
(伊藤院長)
「これはコロナとインフルの同時キット。これは非常に有用です。1回目の検査をこれでやって、2回目の検査を、ちょうど発症から1日目、2日目のあたりが検査のゴールデンタイムなので、そこに充てるなど、2回病院を受診するというのは大変ですが、1回これをやっておくことで、ずいぶん道が開けると思います。店舗に、売り切れの場合もありますが、インターネットとかで買えるものもあるので、この準備も有効だと思います」
病名が分からない場合について、伊藤院長によると「咳や痰の薬は飲みなれたものが良く、解熱剤はアセトアミノフェンを主体としたものが良い」ということです。
インフルエンザだった場合、薬の成分によっては“インフルエンザ脳炎・脳症”の恐れもあるため、『ロキソプロフェン』『イブプロフェン』『アスピリン』『ジクロフェナクナトリウム』などの使用は避けるべきだといいます。
年末年始で医療機関へ中々連絡が取れない方で、もし体調が悪くなってしまった場合…
医師・看護師・トレーニングを受けた相談員等に電話で相談できる『救急安心センター』の番号は、#7119です。
子どもの症状を小児科医師・看護師に電話で相談できる『こども医療電話相談』の番号は#8000です。
そして『医療情報ネット・ナビィ』は、全国の医療機関や薬局を検索できるシステムで対応可能な急患センターを検索できるため、旅先や帰省先などでも便利です。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年12月23日放送)