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【独自解説】「なぜ私たちが犠牲に…?」“東洋一のマンモス団地”に再整備の動き 板橋区が押し切るタワマン建設・新たな道路整備に住民ら怒り…危惧する“3つの懸念”「実は日照権はあまり保護されない」

2025年3月18日 3:30
【独自解説】「なぜ私たちが犠牲に…?」“東洋一のマンモス団地”に再整備の動き 板橋区が押し切るタワマン建設・新たな道路整備に住民ら怒り…危惧する“3つの懸念”「実は日照権はあまり保護されない」
高島平のマンモス団地に今、何が―

 かつて“東洋一”とも呼ばれた東京・板橋区の『高島平団地』に再整備案が浮上し、周辺住民の間で困惑の声が広がっています。住民らが懸念する3つの不安要素とは?板橋区が描く未来とは?弁護士・嵩原安三郎氏と哲学者・萱野稔人氏のダブル解説です。

■「持続可能な都市への転換が必要」“東洋一のマンモス団地”現状と課題

 1966年に区画整理事業が開始し、現在のUR都市機構が施工した『高島平団地』。1972年に入居が開始され、ピーク時には3万人超が住む“東洋一のマンモス団地”と呼ばれました。現在の人口は約1万8000人にまで減少しましたが、まだ大きなコミュニティは存在しています。

 そんな高島平団地に、再整備を巡る動きが。2015年ごろに再整備案が浮上し、2024年に高島平駅の将来像を決める『まちづくりプラン』が策定されました。

 再整備の理由について、東京・板橋区まちづくり推進課の担当者によると、「建物の老朽化や少子高齢化が進み、公共施設やUR賃貸住宅等の建て替え時期が到来している。50年・100年先を見据えた、持続可能な都市へと転換していくことが必要と判断し、高島平地域の都市再生に着手した」ということです。

 高島平団地は、1972年の入居開始後に人口が急増し、学校などを急速で整備することになりましたが、団地で育った子どもたちが独立し、転出。現在でも親世代は住み続けていますが、住民の約4割が高齢者という状況です。

■『住民の懸念』①タワマン建設のため、建物の高さ制限を緩和…景観や日照権の問題は?「実は日照権はあまり保護されない」

 高島平には現在、分譲エリア・賃貸エリア・学校・公園などがあり、駅と団地の間は緑地化されています。分譲エリアの隣には2007年に閉校した小学校があり、区の計画としては、その小学校と周りの土地を使ってタワーマンションを建設する予定で、来年度には解体が始まるということです。また、賃貸エリアの一部は建て替えを検討しています。

 ただ、現在は約45mの『建物の高さ制限』が、タワーマンション建設のため約110mに緩和されるということで、住民は『景観や自然破壊の恐れ』『日照やビル風対策がないこと』などを懸念しています。

Q.隣に110mのタワマンが建ったら、日照権の問題はどうなりますか?
(弁護士・嵩原安三郎氏)
「土地は皆が自由に使えるので、『絶対そこに建たない』という条件で住んでいなければ、実は日照権はあまり保護されません」

Q.今、日本では『タワマンを建てて街を活性化する』という流れになってきていますよね?
(哲学者・萱野稔人氏)
「タワマンはやはり人気ですから、人を呼んで街を活性化するという点では有効性は高いですし、クリニックなどが入って複合的な施設になり得ますので、利便性も高くなります。こういった団地は都心部でも同じような問題があり、高齢者ばかりで持続可能ではないところがありますから、再開発自体は必要になってきます。ただ、長く住んでいる人から見ると、現状が変わるだけでも不安だし、そこにまた道路ができるとなると、どうしても『大きく変わり過ぎなのではないか』という話は出てくると思います」

■『住民の懸念』②緑地帯を分断して幹線道路に接続…騒音問題や事故の危険は?

 また、住民の憩いの場として親しまれてきた緑地帯を分断し、2本の道路を貫通させて、駅前の幹線道路に接続させる計画もあります。現在は、団地エリアの区道は関係車両しか走行しておらず、静かな住環境が守られているため、住民は交通量の増加による『排ガスや騒音問題』『デイサービス送迎時の車の乗降が危険になること』などを懸念しています。

Q.幹線道路に接続されると交通量は増えますから、それは心配ですよね?
(嵩原氏)
「そこに何十年も住んでいるご高齢の方が多く、『この道はこんな感じで渡れる』と身に染みついているので、突然そこが大通りになるのは心配だと思います。あと、正論ほど受け入れにくいことがあるので、計画の段階から意見を聞きながら少しずつやっていけば、少しは違ったと思います」

■『住民の懸念』③計画を押し切る区に住民ら怒り「全ての回答が抽象的。納得できるように説明して」

 そして、住民への説明が少な過ぎることも懸念されています。住民説明会は2022年から年に2回開催されていて、2025年3月にも開催されるということですが、高島平三丁目自治会・宮坂幸正会長は、「区は住民の意見を聞かず、計画を押し切っている。非常に腹立たしい」と話していて、2024年9月には自治会として区に陳情書を提出しました。

 そして区議会では、陳述①道路延伸の撤回については「交通量の増加による住民の不安が高まっている」「交通の円滑化に向けた行き止まりの解消が必要」、陳述②高さ緩和の再検討については「風害や日照権等の多くの課題があるため、高さ制限緩和を見直すべきだ」「ゆとりある空間の確保には、高さ制限緩和は必要」など、議員からも様々な意見が出ました。しかし、賛成少数で否決され、陳述書は不採択となりました。

 板橋区は、高さ制限緩和については「限られた土地に住宅や広場の整備を行い、高島平らしいゆとりのある空間形成のため、高さ制限の緩和は必要」、道路整備については「将来を見据えた交通を円滑に処理できる道路ネットワークを再構築していくことが必要」、住民への説明については「今後、段階的に計画が明らかになっていくものなので、その都度ご理解いただけるよう引き続き対応していく」との見解を示しました。

 一方で、自腹で『再整備反対』のビラを作成し、毎朝通勤する住民たちに配っているという夫妻は区の見解に対し、「『地域の持続的な発展』など、全ての回答が抽象的な表現に終始していて、具体的なものが全く見えない。私たちは全てに反対し白紙撤回を求めているのではなく、110mの緩和制限と区道延伸の必要性、この2点について納得できるように説明してほしい」と強調していました。

Q.これは難しい問題ですよね?
(萱野氏)
「今は行き止まりになっているので、道路を通すことによって相当交通の便は良くなってきます。ただ、一般論として賛成でも、やはり各論になって、どうしても住んでいる人には『全体が便利になっても、なぜ私たちが犠牲にならなければいけないの?』というような感情が起こってしまうのだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年2月28日放送)

最終更新日:2025年3月18日 3:30
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