“婚姻”を理由に性別変更認められず…トランスジェンダー女性の申し立てを『却下』 京都家庭裁判所 決定で「立法府で議論されなければならない問題」

戸籍上は男性で妻と婚姻関係にある“トランスジェンダー”の女性が、戸籍や住民票など法律上の性別を変更する要件の中に「婚姻していないこと(非婚要件)」があることは憲法違反にあたり、「結婚していても性別の変更が認められるべき」と申し立てていためた家事審判で、京都家庭裁判所は19日、性別変更は『認めない』とする決定を出しました。
■結婚後に妻の説得でカミングアウトも…性別変更に必要な「非婚要件」
申し立て書などによりますと、京都府内に住む50代のトランスジェンダーの女性は、法律上の性別は男性で、男性として就職活動をするなどし、2015年に妻である女性と結婚しました。妻には交際前から「ときどき女性になる」などとカミングアウトしていましたが、結婚後に妻の説得もあり、女性用の衣服を普段から着用したり、性別適合手術を受けたりするなどし、現在は女性として生活を送っています。
法律では、性別を変更するための要件として、
①18歳以上であること
②現在結婚していないこと
③未成年の子がいないこと
④生殖機能がないこと
⑤変更後の性別に似た性器部分の外観を持っていること
の5つの要件が定められています。
このうち、「④生殖機能がないこと」を求める要件については、2023年10月、最高裁が「憲法違反にあたり無効」だとする決定がなされています。
トランスジェンダーの女性は、「②現在結婚していないこと(非婚要件)」について、妻は離婚することを希望しておらず、性別を変更するために離婚を強いられることは人権侵害で憲法違反にあたるなどと主張していました。
■決定で「相次いで憲法違反・違憲状態」と指摘も「立法府で議論されなければならない問題」
これに対し、京都家裁は19日に、憲法に違反しないと判断し、申立人のトランスジェンダー女性の申し立てを却下しました。
決定では、非婚要件が「性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受けるという重要な法的利益の実現と、結婚の継続という二者択一を迫るもの」とし、同性婚を認めない民法などの諸規定は相次いで憲法違反や違憲状態だと判断していることを指摘しました。
一方で、同性婚の可否を含め、民法における婚姻や関連の規律について「まずは立法府において議論されなければならない問題」とし、非婚要件が「現在ある『同性婚を認めない』婚姻制度を前提に定められたもので、非婚要件は法律関係の整合を担保する規定であり、直ちに憲法に反して無効になるとはいえない」として、申し立てについても認められないものとしました。
弁護団は、「憲法によって人権の砦となるべき司法の役割を放棄するもので、端的に不当決定というほかありません」とコメントしています。