娘との“再会”果たせず 拉致被害者の有本恵子さんの父・明弘さんが死去 拉致されてから40年以上
北朝鮮による拉致被害者・有本恵子さん(65)の父・明弘さんが15日亡くなりました。96歳でした。被害者の帰国が進まない中、家族の親の世代は、あと1人となってしまいました。
亡くなった明弘さんの長男・有本隆史さん(62)
「恵子を取り戻すために(救出の)運動を続けてきた父が、恵子との再会を果たすことなく亡くなったのは残念でなりません」
彼らのきょうだいが拉致されてから40年以上。娘の帰りを待ち続けた父が、無念の思いを胸に亡くなりました。
有本明弘さん(当時95)
「(拉致被害者の)家族みんなが解決してほしいと思っている。40年近く来てしまった、うちは…」
有本明弘さん。娘やほかの拉致被害者の帰国を求める活動に力を尽くしてきました。
娘の有本恵子さんは1983年、23歳の時に、ロンドンに留学中、北朝鮮に拉致されました。
拉致被害者の石岡亨さんが1988年に実家に送った手紙で、恵子さんが平壌で暮らしていることがわかり、明弘さんは妻の嘉代子さんとともに救出活動を始めました。その期待が大きく高まったのは、2002年。
北朝鮮の金正日総書記と小泉首相による日朝首脳会談が開かれ、5人が帰国。しかし…
「有本恵子さんの死亡も確認されています」
有本恵子さんら8人は「すでに死亡した」と伝えられたのです。
恵子さんの母・有本嘉代子さん
「長い間の戦いでしたけど、こういう結果になるとは夢にも思っていませんでした。残念でなりません」
有本明弘さん
「私たちの子どもを取り返そうと思って(活動してきたのに)…」
その後、北朝鮮の情報に誤りがあったことなどから、娘の生存を信じ、救出を訴え続けてきました。
家族らが再び大きな期待を寄せたのが、拉致被害者家族と面会したアメリカのトランプ大統領です。史上初めて米朝首脳会談を開いた後、明弘さんに渡された手紙には、「私はあなたのために全力を尽くしています」「あなたはきっと勝利するでしょう」と記されていました。
有本明弘さん
「涙が出た。1988年からや、30年間ずっと活動してきた」
しかし、事態の進展はなく、共に活動を続けてきた妻の嘉代子さんも2020年に94歳で死亡。明弘さんは90代になってからも活動に力を尽くしてきましたが、15日、娘との再会を果たせぬまま、帰らぬ人となりました。
帰国を果たせていない政府認定の拉致被害者の家族で、親世代 最後の1人となった横田めぐみさんの母・早紀江さんは…。
横田めぐみさんの母・横田早紀江さん
「残念な思いをもって天に召されたんじゃないかなと思っております。本当に残念です。この日本は何をしてるんだろうか、なんで解決できないんだろう。みんな(拉致被害者の家族)だんだんいなくなるに決まっていますから、(解決まで)長くなれば、私も来年はいないかもしれない」
トランプ大統領の再選に期待を寄せつつも、家では拉致問題や恵子さんの話をほとんどしなかったという明弘さん。
長女・北谷昌子さん(68)
「最初から夫婦で(問題を)家族には引き継がせないとふたりで固く決めていたようです」
五女・絵美さん(59)
「父と母は亡くなりましたが、私たちきょうだいをはじめ、日本国民みんなが待っているということを伝えたいです」