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聴覚障害者を当事者が演じた『コーダ あいのうた』 アカデミー賞作品賞など3冠獲得

2022年3月28日 18:13
聴覚障害者を当事者が演じた『コーダ あいのうた』 アカデミー賞作品賞など3冠獲得
喜びの表情を浮かべる出演者・スタッフ (写真:ロイター/アフロ)

第94回アカデミー賞の授賞式が28日(日本時間)アメリカ・ロサンゼルスで行われ、最高の栄誉である作品賞は『コーダ あいのうた』が受賞しました。さらに今作は助演男優賞と脚色賞もあわせ、3冠を獲得しました。

授賞式で、プロデューサーのパトリック・ヴァックスベルガーさんが受賞スピーチを行い「私たちが今日いる、この困難なときに本当に愛と家族についての映画を評価してくれて心から感謝します。マーリー・マトリン、トロイ・コッツァー、ダニエル・デュラント、エミリア・ジョーンズ、それに素晴らしいクルーにも感謝します。あなた方全員、素晴らしいチームです」と出演者・スタッフへの感謝を語りました。

■ “ろう者の役をろう者の俳優が演じる” 監督のこだわり

映画の舞台は豊かな自然に恵まれた海の町。主人公の高校生・ルビーは、父親のフランク、母親のジャッキー・兄のレオと4人暮らし。ルビー以外の父・母・兄は聴覚に障害があるため、唯一耳が聞こえるルビーが “通訳係” として家業である漁業を手伝っています。そんなルビーが合唱クラブの顧問の先生から歌の才能を見いだされますが、歌声が聞こえない両親はルビーの才能を認めることができません。ルビーは夢を選ぶか家族を選ぶか苦悩します。

この映画の特徴は、“ろう者の役をろう者の俳優が演じている” こと。父親・母親・兄は全員、耳の聞こえない俳優たちを起用しました。シアン・ヘダー監督は以前インタビューで「最初から耳の聞こえる俳優を雇う気はありませんでした。正直、前からそういった考えに嫌気がさしていました。映画を作るときはスターを起用しなければならない、スターをたくさん雇わなければならないという古い固定概念があります。でも今は時代が変わって、そういう考え自体もってのほかだと考えられるようになりました。私は真実味のある物語を作りたかったので、スターを起用することは考えていませんでした」と明かしていました。

さらに監督は、脚本に書いたセリフを手話で表現するために、“手話を監修する監督” としてアレクサンドリア・ウェイルズさんを迎えいれました。監督自身、手話を取得し、耳の聞こえる人たちも含め現場では手話で会話をしていたといいます。

また、主人公の父親を演じたトロイ・コッツァーさんは、ろう者俳優としてはアカデミー史上初めて助演男優賞を受賞。ステージでは手話で「ろう者のコミュニティー、障害者のコミュニティーにささげます」と喜びを明かしました。

ろう者俳優がオスカー像を手にするのは2度目。今作でコッツァーさんの妻を演じたマーリー・マトリンさんが、1986年の『愛は静けさの中に』で主演女優賞を受賞していました。