【ゴジラ-1.0】山崎貴監督が語る アカデミー賞ノミネートを支えた“日本ならではのワザ”
全世界で累計興行収入155億円超の大ヒットとなっている『ゴジラ-1.0』(Box Office Mojo調べ)。ノミネートしたアカデミー賞の視覚効果賞は、これまで『スター・ウォーズ』や『アバター』といった、CG技術などで表現の幅を変えた作品に贈られる賞で、山崎監督は日本映画として“初ノミネート”という快挙を果たしました。
山崎監督はノミネートの瞬間について「あのとき、本当に(取材の)人がいっぱい来ちゃって。ここで(ノミネート)入ってないと“本当切ないな…”と思ったんで。“うわーよかったよかった! 入ってた入ってた”って」と興奮を振り返りました。
■「ゴジラをデカく見せるためには…」山崎監督が明かすCGのこだわり
『ゴジラ-1.0』はどのように作られたのか、実はゴジラの恐怖を描く上でこだわったことがあったといいます。山崎監督は「ゴジラをデカく見せるためには、環境で表現するしかないんですよね。周りに何が起きるかで、巨大なものですごい重量があるものなんだって」と明かしました。
例えばゴジラが街を歩くシーンでは、破壊される橋や宙に浮く人々などをCGで作成。ゴジラが動くことで起きる様々な環境の変化を細かく描写することで、見ている人の本能に訴えるような恐怖をつくりあげたといいます。さらに、山崎監督は「説得力のある情報量を増やしていくことで、すごいショットができるんじゃないかなって思っているんで」と秘けつを語りました。
今回こうした映像を作り上げる上で、山崎監督は日本ならではの強みを感じていました。日本に比べて大規模な予算で制作するハリウッドですが、山崎監督によると“CGなどは分業で進められる”といいます。その一方で、制作現場について「農耕型VFXって言っているんですけど、日本人って多分、“種まいて、稲が育って、刈り取って脱穀してお米にするっていうことにたけた人たちの末えい”なんですよ、きっと。だから、分業があまり日本人に向いてないなって感じていて。特にこのチームは1から10までできるだけやる」と、大人数で分業するのではなく、小さな規模だからこそ、意思疎通も早く新しい表現のアイデアなどに柔軟に取り組んでいけたといいます。
■山崎監督「日本式なやり方でやってみたらノミネートまで行った」
続いて、山崎監督が見せてくれたのはゴジラの制作に使われたミニチュア。使用したのは主人公が生活する終戦直後の東京のシーンです。スタジオに組んだセットはごく一部ですが、ここに別撮りしたミニチュアの建物を周囲に合成し、奥行きのある街並みを再現していったといいます。山崎監督は「こういう細かい手仕事は日本人得意ですよね。多分アメリカでこれをミニチュアでやりましょうってなったらこの倍サイズ。ミニチュアはまだまだアドバンテージがある」と話しました。
様々な表現の創意工夫で世界を魅了した新時代のゴジラ。山崎監督は「非常に日本式なやり方でやってみたらノミネートまで行ったぜっていうのは、ラッキーパンチだなって思うんですけど、ラッキーパンチが当たるときもある。環境とかのせいじゃなくて、もしかしたらたどり着けることもあるかもしれない。次の世代のいい刺激になるんじゃないかなっていうふうに思います」と語りました。
(2月7日OA『news zero』より)