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『3年A組』の鈴木勇馬監督「出し惜しみしない」8分間ドラマでみせる“起承転結”

2022年3月29日 8:10
『3年A組』の鈴木勇馬監督「出し惜しみしない」8分間ドラマでみせる“起承転結”
8分間ドラマ『サヨウナラのその前に』の鈴木勇馬監督

日本テレビの『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』『二月の勝者-絶対合格の教室-』などのドラマを手がけてきた鈴木勇馬監督は、「あまりドラマ作りを仕事と思ったことがない」というほどの現場好きです。

現在、朝の情報番組『ZIP!』で放送中のドラマ『サヨウナラのその前に』も、驚きと発見を楽しみながら撮影をすすめたそうで――。

インタビューでは、ヒット作が生まれるものの見方と考え方が明らかになりました。

■出し惜しみしない方が見てもらえる

今回のドラマは1話8分、全23話。監督にとってショートドラマは、デビュー作から約8年ぶりです。これまではほぼ1時間枠の連続ドラマを制作してきました。

――約8年ぶりのショートドラマ。やってみてどうでしたか?

楽しかったですね。連続ドラマって1時間で紆余曲折があって、“起承転結”があって終わります。それでこのメッセージを伝えたい、っていうのがあるんですけど、今回は8分に凝縮しなければならなかったので、少ないときはワンシーンとかで撮りました。そのシーンの中で起承転結があって、最後、カタルシスを持っていくので、そのスピード感が今っぽいなと思ってね。連ドラでやっていたことが8分に凝縮できるんだと思いました。だったら連ドラもこの内容の厚さでいけるんじゃないかなと、連ドラの目の離せない展開がもっともっと作れるんじゃないかなと思いました。

――これからの仕事に対しての見方が変わったんですね。

そうです。メッセージや“こうしたい”という思いを出し惜しみしないで、どんどん出していった方が、今はすごく見てもらえるんじゃないかなと思いました。多分、それをやっているのが配信のドラマで、それこそ韓国の作るNetflixのドラマとかは出し惜しみしないじゃないですか。どんどんどんどん次に展開をしていくというのが、今回、8分でこんなにできて、ちゃんとメッセージを伝えられるということが、自分の中での発見で楽しかったです。編集していて見ていてもあっという間に終わってしまうので、すごく面白かったですね。

ドラマは、隕石衝突までの31日間を描いた物語ですが、ストーリーは笑いや涙のある温かみのある展開です。

――人間心理を描く上で、どういうところに重きを置いて撮りましたか?

今回はドキュメンタリーみたいにしたいなと思いました。キャラクターが作られた感じじゃなくて、「こういう人っているよね」というふうにしたかったんです。カットをつなげて作るよりかは、普通に生きている家族だったり、高校生だったりの日常の空気を切り取るっていう方向でできたらいいなと思って、それがうまくいったかなと思います。

――監督はその状況に置かれた場合、何をしたいですか?

僕は仕事をしたいですね。撮影をしていたいなと思います。

――仕事をしたい?

あんまりドラマ作りを仕事と思ったことがないんです。ずっと学生時代からドラマを自分で作っていたので、そのまま大人になっちゃった感じです。若干、日テレのある汐留に来ると、スーツの人がいて緊張します(笑)。たまたま運よく自分の好きな道に行けて、そのまま好きなことをやらせていただいています。他の楽しいことはあまりない感じです。

――現場にいるのが好きなんですね。

そうですね。滅亡までの31日間も撮影をできていたらいいなと思いました。

■今の10代は独特の空気を持っている

ドラマは月曜日から金曜日までの曜日ごとに主人公がいて、主人公を北村一輝さん、真木よう子さん、奥平大兼さん、南沙良さん、そして視聴者投票で選ばれた新人・西岡星汰さんが演じています。

――キャストの方は以前もお会いしたことがありますか?

演者さんは全員初めてなんですよ。

――意外ですね。

意外ですね。仕事を10何年やっているので、お久しぶりですというのはあるんですけど、今回は全員が初めてなんですよね。

――どうでしたか?

面白かったですね。特に10代の若い子は。最近はコロナがあってドラマに学園モノがなくて、あまりあの世代と関わることがなかったんですけど、すごく面白いな、独特な空気を持っているなと思いました。

――佐藤開役の西岡さんが、人を馬鹿にしたりするシーンがすごく難しかったと話していました。

本人がいい子なんですよね。「何でも、吸収します」っていう感じで。5、6年前の同じ世代の子は「何すか? 何がダメなんすか?」みたいな感じでした(笑)。最近はいい子が多い。「ハイ! やっておきます!」っていうね。西岡くんは本人の性格がキャラクターとは違うので。でもだんだんつかんできたんですよ。

――役をつかんだ瞬間があった?

そう。モノローグ撮りっていうのをやったんですけど、その後からはすごくキャラクターをつかんだなという感じがしました。今は自在に開くんというキャラクターを操っているなと思います。開くんになりきれているなと。台本のセリフの横に、セリフを言っているときの気持ちを書いてある。それを思いながらやっているので、偉いなと。言葉と心理って違いますからね。