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世界が注目の日本人 リナ・サワヤマ 「音楽で発信できるメッセージは無限大」 差別や偏見などを歌詞に

2022年9月6日 21:55
世界が注目の日本人 リナ・サワヤマ 「音楽で発信できるメッセージは無限大」 差別や偏見などを歌詞に
リナ・サワヤマさんにインタビュー
シンガー・ソングライターのリナ・サワヤマさん(32)にインタビュー。日本出身のリナさんは、ロンドンを拠点に活動するアーティストです。2017年からインディーズで楽曲をリリースし、2020年に発表したファーストアルバム『SAWAYAMA』がヒット。楽曲のストリーミング総再生回数は4億回を超えています。

リナさんの人気の理由は、本人が放つメッセージです。アジア人への偏見や差別に対する“怒り”を歌った楽曲『STFU!』(2019)や、パンセクシュアルを公表しているリナさんが、日々感じる性的マイノリティーへの差別に対する思いを歌った楽曲『This Hell』(2022)など、現代社会へ切り込む強烈な言葉の歌詞が人気となっています。世界的アーティストたちも支持していて、レディー・ガガさんや、エルトン・ジョンさんからのラブコールで、コラボを果たすなど、今世界が最も注目する日本人の1人です。

■現代社会に向けて発信するメッセージは「ポジティブにするのがポイント」

――世界的音楽シーンに躍り出た今の状況は、どう捉えていますか?

いやもう、とてもクレイジーです。もう2020年4月から正直結構混乱しています。ライブすることも楽しいし、曲を書くこともすごく楽しいし、ファンの人に会うのもすごく楽しいし、それを大切にしているから毎日足が地に着くようにしています。

――社会への不満や不平等さを世界に発信することに、怖さはありませんか?

怖くないですね。使う言葉をできるだけポジティブにするのがポイントです。フェスとかコンサートって、みなさん楽しい時間を過ごしたいから来るじゃないですか。欧米ではフェスがポリティカル(政治的な)な場所でもあって、メッセージを伝えたいときは『もっと簡単に吸収されるように、どうやってそのメッセージを伝えようかな』って考えるところがたくさんあって、そこは時間をかけて、ちゃんと集中して考えていますけど、怖くはないです。

リナさんは、5歳の頃にロンドンへ移住。日本人学校へ通った後、ケンブリッジ大学に進学しました。しかし、大学3年生の時には、寮を変えなければ行けないほどの壮絶な人種差別を経験しました。そんなリナさんに救いの手を差し伸べてくれたのが違う大学のLGBTQのコミュニティー“Chosen Family”だったといいます。そのコミュニティーへの愛を歌った楽曲『Chosen Family』は、東京オリンピックの閉会式でも使われました。


――『Chosen Family』の歌詞には、どういった意図が込められていますか?

大学当時は鬱(うつ)になっていたので、彼ら無しに大学に残ることはできなかったと思います。“Chosen Family”というのは、LGBTQのコミュニティーの中で、とても重要なコンセプトで、(LGBTQを)家族にカミングアウトする人は、家族から見捨てられることがあります。その時に(改めて)自分の家族を見つけることから“Chosen family”(自ら選択した家族)と呼ばれているんです。そしてLGBTQのコミュニティーにおいて“Chosen family”は必要不可欠なんです。そして、この楽曲が東京の閉会式で使用されたことに感動したのですが、曲のテーマがLGBTQなのに、日本はG7のうちで差別を廃止する法律や、同性婚を合法にしていない唯一の国なので、そういった所は、少し複雑な気持ちでした。

■G7で唯一同性婚ができない日本に伝えたい音楽

リナさんは、8月20日に行われた大型野外音楽フェス『Summer Sonic 2022』に出演。そのMC中にステージ上で「私がここで同性婚をしようとしたらできないのです。なぜかというと日本では禁止されています」と発言したメッセージが話題となりました。


――すごく印象的なMCでした。どういった思いでしたか?

私は同性結婚が認められているUKに住んでいます。UKには同性結婚を差別している行為を廃止する法律もあります。そのことをただ、日本人のみんなに知ってほしかったんです。私にとって日本は母国で、思い出もたくさんあります。でも今生活しているのは日本ではありません。私にとって人権は文化的なものではありません。日本で“文化が違うから”という理由は、私は言い訳になっていないと思います。LGBTQは人権です。そして人権は世界共通です。

――思いを発信する方法はいろいろありますが、なぜリナさんは音楽を選んだのですか?

音楽というのは私にとって本音を語るプラットフォーム(基盤)です。私は、自分のことをアーティストやクリエーティブだと思ったことはないです。音楽は私の政治的・個人的なメッセージを発信するための媒体でしかないです。この世の中では本当に間違ったことが起きていて、音楽だけでは政治は変えられず、戦争も止められません。でも音楽で発信できるメッセージは、無限大だと思っています。

ただ今回、日本に来て音楽の力について、UKにある私のベッドルームで作曲した内容が、日本のサマーソニックでも、ブラジルでも(音楽で)発信することができることに気づきました。ただし、それには責任が生じ、その責任が私のプラットフォームになるのです。そうなると、世界の注目すべきことを指摘するために、そのプラットフォームを使いたくなるのです。音楽は本当に民主主義であるべきだと思うんですよ。音楽にはいろんな人を違う“部屋”に集めるパワーがあるんです。違う人のオピニオンとか意見とか、人生経験を一緒に感じられるのは今の時代で本当に大切な事だと思います。