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【インタビュー】“ドリカム”中村正人 「1枚でも2枚でも手に取ってもらえるCDを」

2022年8月21日 22:10
【インタビュー】“ドリカム”中村正人 「1枚でも2枚でも手に取ってもらえるCDを」
DREAMS COME TRUEの中村正人さん
DREAMS COME TRUE中村正人さんにインタビュー。今月17日に発売した新曲『UP ON THE GREEN HILL from Sonic the Hedgehog Green Hill Zone – MASADO and MIWASCO Version -』は、映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』(公開中)の日本版主題歌となっています。実は中村さん、1991年に、SEGAが発売した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』というゲームソフトの音楽を制作。世界中で販売された人気ゲームの音楽が、30年以上の時を経て生まれ変わり映画主題歌になるまでの制作秘話、さらに令和の音楽シーンについて伺いました。

――新曲はどんな楽曲になっていますか?

この『Green Hill Zone』というのは、30年前に『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』という新しいゲームが誕生した時に、俺がシリーズ1と2の音楽担当でした。そのゲームが世界中で大ヒットして、俺が作った曲も、世界中の人たちが30年間、口ずさんでくれるような状態だった。しかも、“映画のようなゲームにしたい” というコンセプトがあって、自分自身もサントラを作るような気持ちで、その音楽を付けたので、まさか30年後に『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の実写の映画化になるっていうのは、もう本当にソニックのチーム全体の夢でもあったし、僕の夢でもあったんで、その思いを込めて作ったっていう感じですかね。

■CDパッケージへのこだわり

今回発売したCDのパッケージは『ゲームボード仕様』。ドリカムのバーチャルキャラクターである『MASADO』と『MIWASCO』が、ライブ会場へ向かう道のりがテーマとなった“すごろく形式”のボードゲームが付属されています。

――なぜこのような仕掛けを加えたのですか?

もともとこの曲は、配信でも発売、発表していて、ある日、吉田(美和)が「やはり形に残るものにしたい」と。そういうリクエストが出たので、じゃあどうせCDにするならば、普通と違ってCDを包むジャケットを面白いものにしたいなと思い、ソニックの主題歌で、ソニックはゲームなんで、吉田が「ボードゲームを付けるのはどうだろう」と。ただ付けるだけじゃなくて、そのボードゲームも含めてCDジャケットになるような『ボードゲーム仕様』というのにしてみました。

――「CDが売れない」とも言われる時代ですが、CDで発売する理由はなんですか?

もうCDというものは、音楽というものを届けるメディアの“メインのもの”ではなくなったので、売り上げうんぬんというよりも、1枚でも2枚でも、手に取ってもらえれば、手に取ってくれた人が、楽しんでもらえるCD。だから、音楽を届けるためのメディアとしてのCDじゃなくて、音楽を楽しむためのCD、CDジャケットっていう解釈。だからCDは楽しみのために出すみたいな感じかな。

■ベーシスト・中村正人は「ベースをよく忘れる」

――ボードゲームのコマには、好きな食べ物やエピソードが書かれています。これは事実が書かれているのですか?

それはどうかな? みなさんが決めていいです。事実だろうし、事実じゃないだろうし。ゲームですから。バーチャルキャラクターの『MASADO』と『MIWASCO』があくまでもドリカムのコンサート会場に行く冒険物語ですから。

――『ベースを忘れる。スタートに戻る』というコマがありますが、これにまつわるハプニングエピソードを教えてください。

僕ベースをよく忘れるんですよ。今、恵まれた環境で音楽やっているんで、大抵はローディーという楽器を扱う専門のプロの方が準備してくださるんですよね。その方たちがいないリハーサルも当然あるわけで、その時はよく忘れますね、ベース。

――どのタイミングで気付かれるんですか?

スタジオ入ってから。「あれ、ベースねえや」って言って、慌ててスタッフが届けてくれるっていう。

――『MASADOの夢 グラミー賞にエントリーされる』というコマもありますが、DREAMS COME TRUEの夢はなんですか?

DREAMS COME TRUEの夢は、デビューしたときから言っているのね。CDを500万枚セールスしたいのと、グラミー賞を取りたい。アメリカのエンターテインメントがベースにひかれた60年~70年代に成長してきた我々としては、そのカルチャーのトップであるグラミー賞が、死ぬまでに取れればいいなとは思っているけど。実際、去年、『カービィ』の音楽がグラミー賞に入ったでしょう? 『カービィ』の音楽の次は俺でしょ!

■“髭男”やKing Gnuの音楽は「素晴らしい」

――サブスクで音楽を聴いたり、SNSで曲が話題になったりする令和の音楽シーンについてどう捉えられていますか?

そういう時代になったんだということですね。アナログレコードからCDになったのと同じかなというと、それはまったく違う。僕らはそういう時代で音楽を届けていくっていうだけ。ただ、“そういうシーンに楽しめる音楽のパッケージもあっていいな”という思いは強いけれども、だからといって、その配信とか、サブスクを否定しているわけじゃないし、それが全てだから。

――CDの良さ、サブスクの良さはそれぞれどのように感じられていますか?

やっぱりアートワーク(CDジャケットのイラストや写真などのデザイン)とか、サブスクだったら(パッケージの)“表”しか映らないでしょう。でも、“裏”とか、“開けた”とか、“ブックレット”とか、そういうものがもう消滅しちゃったんで、少なくとも今まで発売されたアナログに関しては、そのデータが全部欲しい。じゃないと永遠に失われてしまうから。これは本当にやばい。やばいけどじゃあ、サブスクがダメかと言ったら全くそういうことじゃないし、5秒とか10秒だけでもいいし、逆に何でも聴いてくれるじゃない。だからそれは全然悪くない。じゃあそれを全部聴きたいと思わせるか、思わせないかは、アーティストの力量なので。我々みたいなクラシカルな音楽制作の人間でも、Official髭男dismとかKing Gnuとか彼らの音楽は、本当に素晴らしいと思うし、根本は変わってないから。だから彼らが、どんなスタジオで、どんな環境で、どんなミュージシャンを使って、あるいはジョインして、この作品を作ったのかな、ということは知りたいなと。そのためにはCDが最適だなとは思うけど。

■4年に一回のライブ『ドリカムワンダーランド』

――2023年の夏に、4年に一回のライブがやってきますが、どのようになっていますか?

根本は変わらないね。91年からやっている吉田や俺やバンド、ミュージシャンが主人公で、新たな拡張現実であったりとか、そういうテクノロジーはもうどんどん入れて、今我々もアバターをいっぱいやっているし、そのアバタードリコムのアバターによって、今回のソニックみたいにゲームの世界にも入れたりとか、あるいはYouTuberとジョイントできたりとか。我々肉体を持った人間とアバターの間、『MASADO』と『MIWASCO』が、それぞれ手分けしてドリカムの音楽を伝えるということが始まったので、それはそれで面白いと思います。だから、俺が今度骨を折ったら、俺のアバターが代わりに出る(笑) ライブを中止にしなくていいね。