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能登半島地震 “被災ペットの今” 保護猫・ミミを抱いて気づいたこと 愛猫家の佐藤梨那アナが取材

2024年3月31日 21:40
能登半島地震 “被災ペットの今” 保護猫・ミミを抱いて気づいたこと 愛猫家の佐藤梨那アナが取材
被災地で保護された猫 佐藤梨那アナが取材
4月1日で能登半島地震からちょうど3か月。被災地には、建物の倒壊や避難生活によって、一緒に暮らしてきたペットを手放さざるを得なかった方々がいます。私、日本テレビアナウンサーの佐藤梨那は、能登半島地震の被災地を取材し、被害の大きさを目の当たりにしました。

私自身、3匹(シャーロット・ルイ・レオ)と暮らしていますが、“自分の命だけでなく、ペットの命まで守れるのだろうか”と考えさせられました。ペットと暮らす人たちは、災害が起きる前にどんな備えができるのか、取材しました。

能登半島地震で被災したペットは現在、東京都内でも受け入れられています。東京・千代田区に拠点を置く『一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会』は、環境省と連携して新しい家族へと譲渡する保護活動を行っています。2月に珠洲市で保護された猫2匹をはじめ、これまで計3回にわたり15匹の猫を引き取り、取材した日までに3匹の猫が新しい家族のもとへ譲渡されていました。被災地から引き取った猫はみんな、もともと“飼い猫”。飼い主が自宅の倒壊などの被害に遭い、飼育の継続ができなくなり、やむを得ず手放されたといいます。

■珠洲市で保護された「ミミ」 猫風邪の症状出ていた

保護シェルター施設を取材すると、能登で被災した保護猫はワクチンの接種やウイルスのキャリアー(潜在的にウイルスを所持していること )などを考慮し、もともといる他の保護猫と隔離させていました。その中に、茶白の猫『ミミ』がいました。抱かせてもらうと、ゴロゴロと喉を鳴らして、とても人懐っこい性格なのがわかります。推定1歳のメス猫で、珠洲市で保護された猫だといいます。

ミミは、自宅が被災した飼い主から引き取られ、保護された時は猫風邪の症状がかなり出ていたそうです。保護している団体の香取章子代表理事に、話を聞きました。


佐藤「地震の影響でここまで症状がひどくなってしまったのでしょうか」

香取「悪くなったと思います。(被災後に保護されるまで)やはり外で放浪していた時期があるんじゃないかなと思うんですよね」

被災した動物たちは、石川県内にある保健所などの施設で保護されていましたが、収容場所はいっぱいになり、事務所までケージだらけに。もともと病気にかかっていた動物や被災したストレスもあり、施設の中は感染症がまん延していたといいます。

被災して引き取られた猫には、こんな特徴が――


佐藤「やっぱり、人慣れしていますね」

香取「今、東京で私たちが保護する猫よりずっと慣れています。触れる、抱っこして喜んでいる、ゴロゴロ言っている。今回、被災猫ちゃんを引き受けて、やっぱり人に慣れている猫の譲渡はありがたいなと。本当にすぐに家族の一員になれる」

佐藤「こうやって人に慣れているからこそ、メディカルチェックさえ終われば、新しい家族のもとにいけるということなんですね」

香取「そうです。私たちが3便(3回に分けて)を引き受けた感想です。本当にいい子ばっかり、本当に大事にされていました」

飼い主が被災して飼育できなくなってしまったペットが、保健所などの施設に今も続々と集められているといいます。また、通常の保護活動とは違い、被災地だからこその難しさも。私自身、1月に能登地方で取材をした際に、倒壊した建物のすき間を縫って、割れた瓦の上を歩く猫の姿を何匹も見かけました。


佐藤「私も取材に行った時に、地域猫なのか、倒壊した家から逃げ出してしまった猫なのかわからない猫を見かけたんですね。能登地方で起きたからこその難しさはあるんでしょうか」

香取「とても難しいのは、もともと放し飼いが圧倒的に多かったらしいんですね」


猫を放し飼いしていた場合、飼い主がいる猫なのか、地域猫として生活していたのか、被災地ではどの猫を助けていいのか判断が難しいといいます。被災された方が捜しているペットかもしれず、見つけた猫を勝手に保護することはできません。また、避妊去勢手術をしていない猫も多く、早く対応しなければ“被災2世”になる子猫たちが生まれて、状況はさらに厳しくなることも考えられるそうです。こうした状況から1匹でも多くの被災ペットを助けるため、石川県などの自治体、国、ボランティアが連携して対応にあたっているということです。

いつどこで起きるかわからない地震。ペットと暮らす人は災害が起こる前に、どんな準備ができるのでしょうか。


佐藤「私は猫3匹が家にいるんですけれども、みんなマイクロチップをつけています。万が一、家から避難しなくてはいけないとなった時のためにリード。そして避難所などで長く生活する時のために、大きめのポータブルのキャリーを備えています。能登半島に実際に行って、車で避難しなくてはいけないかもしれないなど、いろいろと見た結果“これでは足りないのかも”と不安に思っているのですが、改めて被災する前にどういった準備が必要なんでしょうか」

香取「自宅で被災して、自宅で避難生活を送る可能性の方がはるかに高いということを、皆さん意外と思っていないんですよね」


建物の耐震化が進んだ今、在宅避難を想定することが大切だといいます。窓ガラスが割れると猫が家から飛び出してしまう可能性もあるため、一家に一つはケージを持っておくことが有効だといいます。また、ライフラインが途絶えてしまうことを考えて、少なくとも7日分はフードや常備薬を用意しておく必要があると香取さんは話します。


【ペットとの避難生活のために、準備するとよいもの】
・ケージ
・窓ガラスの飛散防止フィルム(割れた窓からの逃げ出しを防ぐため)
・水(硬水ではなく、軟水のミネラルウオーター など)
・トイレ用品
・フードや常備薬を多めに用意しておくこと(少なくとも7日分)
・ペットの手帳カルテ(病歴・避妊去勢手術歴・ワクチン歴などを書いておく)


そして、建物の倒壊や火災で避難が必要になった時、ペットと同行避難するためには飼育数分のキャリーケースが必要だといいます。多頭飼育の場合、誰がどのようにして運び出して同行避難するのか、あらかじめ想定しておくことが大事に。また、万が一はぐれてしまった時に役立つものが“マイクロチップ”です。飼い主の住所や連絡先などを登録することができ、一度埋め込むと、首輪や名札のように外れ落ちる心配がなく、半永久的に情報を読み取ることができます。

ペットとの避難を想定しておくことは、いざという時にすぐに避難行動することができ、自分の命を守ることにもつながります。自分の場合は何が必要なのか、災害が起きる前に考えて備えておくことが大事だとわかりました。

取材後に行われた譲渡会で、ミミちゃんを含め4匹の猫の新しい家族が決まりました。能登半島地震の被災ペット取材を通して、ストレスを抱え、病気にかかっているペットが多くいることを知りました。私にとって一緒に暮らしている猫たちは、かけがえのない存在です。だからこそ、飼い主の責任として何か起きた時は私が守ってあげなければならないと改めて感じました。取材を終えて、猫の情報をまとめたメモを作りました。すぐにできることから一つずつ、始めてみようと思います。


(取材・文 佐藤梨那)