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校則も授業も“生徒がつくる” 新しい学校づくりを試みる公立中学校を取材 その影響は?

2024年12月25日 22:50
校則も授業も“生徒がつくる” 新しい学校づくりを試みる公立中学校を取材 その影響は?
校則も授業も“生徒がつくる” 新しい学校づくりを試みる公立中学校を取材 その影響は?
生徒が中心となって校則の見直しを行う“ルールメイキング”。NPO法人カタリバによると現在、全国430以上の学校が取り組んでいるといいます。大阪・泉大津市立小津中学校では、校則だけではない“生徒主体の学校づくり”が行われていました。news zeroの水曜パートナー・篠原ともえさんが取材しました。

■校内には、カラフルなパーカを着た生徒が…

校内を見てみると、カラフルなパーカやブレザーなど、生徒は思い思いの格好をしています。実はこの学校では、約4年前から校則を見直す取り組みが行われています。まず取り組んだもののひとつが、制服の変更です。これまでは学ランとセーラー服でしたが、ジェンダーフリーの観点や、身近で手に入り、気軽に洗濯できるものにしたいと、生徒が話し合いを進めました。そして取り入れたのが、ユニクロのアイテム。生徒が話し合って決めたアイテムの中から、自由に選択することができます。

■公立中学校 生徒が進める校則づくり

どのようにして校則を決めているのでしょうか? 中心となって校則を決める生徒は“ルールメイカー”と呼ばれ、放課後や昼休みを利用し話し合いを行っているといいます。今年度、話し合われているのは、髪形やメイクなどの校則について。ホワイトボードには、全校生徒からのたくさんの意見がまとめられていました。


篠原さん:髪型はすごく自由な意見が多いですね。自分がしたいような色にした方が学生生活が楽しくなる。

生徒:身だしなみとおしゃれに分けて考えるってなった時に、やっぱり染めるっていうのは理由を見ても、オシャレに偏ってるんじゃないかっていう意見が、ルールメーカーの中では出てきたので。

身だしなみなのか、おしゃれなのか、全校生徒から集まった意見を分類して整理していったそうです。さらに、意見を聞くのは生徒だけではありません。


生徒:一度、染髪やパーマをOKにした原案を先生にも見せに行ってみたんですよ。そしたら割と校長先生が厳しい意見を言ってくださって。「本当に小津中学校これで大丈夫なのか? 10年後、20年後を見据えて考えてみたらどうなのか?」って言われたのを、私はすごく覚えていて。

篠原さん:「なんでコレはだめなの?」とか反対の意見も出てくるじゃないですか。そういうときはどうしてるんですか?

生徒:実際私たちは染髪、髪染めるのを今はだめだよねってとらえているんですけど、ケアとか身だしなみとかを配慮して、なおかつ地域の人たちからどういう目で見られるか、保護者から見てどう思われるのかとかも意識していかないといけない。そういうのもちゃんと(生徒に)伝える方法を今練っています。


生徒・先生・保護者・地域の人など、様々な人の立場にたって話し合い方針を決め、校長先生の承認を得て正式に校則として決められるといいます。

■校則だけでなく授業も“生徒が主体”

生徒が主体となって進めるのは、校則づくりだけではありません。


生徒:生徒がこういうことをやりたいとか、面白そうとかっていうのを授業にしてやっていく。


自分たちが学びたいプロジェクトを立ち上げ、約1年かけて取り組むという授業を実施。今年度は、ヒップホップを広めるプロジェクトや、学校のゆるキャラをつくり、カプセルトイを製作するプロジェクト、社会にとっても価値のあることにつながる37のプロジェクトが立ち上がりました。

泉大津市に眠る文化財を公開するプロジェクトでは、生徒が地域のお寺などにかけあい、普段は公開されていない仏像などの文化財を公開。全国から集まった人に向けて、生徒自ら魅力を説明しました。


生徒:自分の知らないことを次々やっていくと将来の自信につながるし、自分が思いついたことを人に伝えるって力もつくと思う。

篠原さん:みんなでモノをつくっていると、いろんな意見があって食い違っちゃうこともあると思うんですが、どのように解消していますか?

生徒:自分の意見を伝えながらも相手の意見を取り入れることで、より考えを深めることで、新しいアイデアを浮かべてより先につなげることができるかなと思います。

生徒:私は1年生なので、3年生に意見を言ったときに(嫌なこと)言われないかなって結構不安だったんですけど、思い切ってこの方がいいんじゃないですか? って言ったら、3年生が「確かにそっちの方がいいかも!」ってうなずいて、私の意見もどんどん取り入れてくれて、その環境もあってどんどん新しいアイデアを出してつなげられたなと思います。


好きなことを学ぶだけでなく、学校外にも発信し、社会とも関わりを持つことで、生徒たちに自信が芽生えてきたといいます。

■卒業時に目指したい3つの指針

この学校の方針は“コンパス”と呼ばれ、全ての活動の軸となっています。「自芯をもつ(『踏み出す』をくりかえして身につけた自信と自分の芯)」、「認め合う(周りを見て考え、人のために行動できる)」、「『やわらかさ』で0から1を創る(遊びを学びに・学びを遊びに)」です。このコンパスを中心となってつくったのが、3年生の長嶺佳歩さん、北隅ひなたさん、森﨑香奈子さんです。


森﨑さん:(最初は)ルールを変えようっていう活動のみやっていたんですけど、その課程で先生や生徒が入れ替わっていくうちに、考え方がどんどん変わってしまって、そこで“学校のコンパス”っていうのを私らが中心となってつくりました。入ってきた当初はコンパスがなくて考え方にバラつきがあった。でも今は授業にしろクラブにしろ行事にしろ、コンパスに向かってみんな活動している。

■コミュニケーションが取りやすい環境づくり

また、この学校では生徒と教員がコミュニケーションを取りやすいようにと、職員室の真ん中に廊下が通っています。取材中も、生徒が教員に相談に来たり、楽しげに談笑する様子が見られました。


長嶺さん:自分は先生たちが生徒を受け入れるっていう心があったからこそ、ルールメイキング活動ができていると思っている。生徒の話を最初から一蹴するのではなくて、まずは話を聞いてくれて、そこから判断してくれるっていうことが、ルールメイキングが進んでいる秘けつなのではと思っています。

北隅さん:ルールメイキング活動も生徒だけが部屋にいて話しているんじゃなくて先生もいるし、実際ルールを変えるってなったらいろんな先生を呼んで私たちの考えを伝えて、逆に先生方の意見をもらってさらに修正していくっていうこともしているので、そういった生徒だけではない外との交流を持つっていうのがすごく重要だなっていうのを、実際経験することによって自分はすごく学んだし、将来仲間うちだけじゃなくて他の人とも話さないといけないと思うから、そういったところの練習にもなっていると思うからいい経験だと思う。

■生徒が見つけた“夢”

様々な活動を通し、経験を積んでいった生徒たち。取材をしていると、好きなことに挑戦できる環境だからこそ、夢が持てるようになったと話す生徒の姿が多く見られました。


森﨑さん:将来の夢は学校の先生になりたいと思っています。教えるのが好きってわけじゃないんですけど、よくしてもらったんですよ、小津中の先生に。自分の中で進路がすごく見えてきた感じがしてて、先生がいる中で話すのめっちゃ恥ずかしいんですけど(笑)

最終更新日:2024年12月25日 22:50