『義母と娘のブルース』作者・桜沢鈴 ヒット漫画に必要な要素は“人生をみたいと思わせるようなキャラクター”
――なぜ漫画家になろうと思われたんですか?
きっかけはお姉ちゃんが漫画を描いていて、まねをしたところからですね。昔から妄想を激しくする子供だったので、それを紙に書き出していたんです。他にやりたいこともなく、中学校くらいの頃には漫画家になろうと自然に思っていた感じです。
――小さい時に好きだった漫画は?
ドラえもんとか、ドラゴンボールとか北斗の拳とか…少年漫画ばっかりです(笑)近所に男の子がいっぱいいて、漫画が回って来ていました。
――中学生の頃に漫画家になると思ってからデビューするまでの経緯は?
読んでいた少女漫画雑誌の中に好きな作家さんがいて。“こういう少女漫画を描きたい”と、少年漫画ばかり読んでいたのに思ってしまって(笑)そこで高校生になってから投稿するようになって。最初はかすりもしなかったんですけど、4冊目くらい、高校卒業くらいでデビューが決まって。
――食べていけるようになるにはどれくらいかかりましたか?
めちゃくちゃかかりました! 私やっぱり少女漫画に向いてなかったんですよ(笑) 自分は違うんだなと思って別の雑誌に持ち込むようになり、そこからギャグ漫画を描いてみないかというような流れになって。ギャグ漫画を4ページから6ページくらい描いて、大御所さんがページ数を落とした時に代わりに差し込む枠でギャグ漫画を載せてもらえるようになり、それを見た別の会社の編集さんが、“あなた4コマ描いてみない?”と。そこから4コマを描き始めて、流されて流されて…という感じでしたね。
――漫画家になるために努力をしたことは?
ひたすら描くことしかなかったですね。漫画のことしか考えなかった。デビューするまでは終始、遊びだったような気もします。楽しくて。
■漫画家に一番大切なのは「自分と向き合うという才能」
去年行われた新人漫画家オーディション『THE TOKIWA』。“劇団ひとりさんが手がけた原作を漫画にする権利”を獲得するため、書類審査を通過した11人の漫画家が様々な課題に取り組んでいく企画です。(本企画から生まれた漫画『ようこそ!パラダイス劇場へ』はコミック配信サービス『まんが王国』で配信中)
そのオーディションで桜沢さんは審査員を務めました。そこでの課題は“家族写真”。様々な年齢の人物を描く力が求められました。
――ヒットする漫画に大事な要素は?
やっぱりキャラクターかなと思います。いかにひきつけるか。この人の人生をみたいと思わせるようなキャラクターかどうか。
――キャラクターデザインの大事なポイントはなんでしょうか?
一目見て人となりがわかる事ですね。簡単に例えると、おしゃれしてたらこの人は美容に興味を持った方なんだなと思うし。ファンタジーなら、持っている武器で戦い方が分かるだろうし。
――実際にそういうマンガは?
(ドラゴンボールで知られる)鳥山先生は全てがすごいです。うますぎますね。他にもいっぱいいらっしゃるけど、あとはベルセルクのガッツです。ドス黒い何かが出てます、ぱっと見ただけで。武器も持っているし、体中傷だらけで片腕がないとか、“なんだこの修羅場をくぐってきたすごそうなやつは”という、一目見ただけでこの人を知りたくなる、吸い込まれるようなキャラクターかなって。(彼が登場しただけで)見ていたいって。
――漫画家に求めるものは?
自由に描いて欲しい。求めるものは、あなたの個性が見たいという感じ。それが売れるのかという話ではなく、人の魂のきらめきが見たいです。
――漫画家に一番大切な才能は?
何にでも興味を持つこと。色々なものを好きになる、嫌いになる。感情を持って、そこに圧力がかかったらそれを出していく。自分と向き合うってことですよね。