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【8週連続1位】絵本『パンどろぼう』 作家が語るこだわり“悪者だけど愛されるキャラに”

2022年11月2日 11:10
【8週連続1位】絵本『パンどろぼう』 作家が語るこだわり“悪者だけど愛されるキャラに”
人気絵本『パンどろぼう』の作家・柴田ケイコさん
1日に発表された『週間ベストセラー』児童書部門(トーハン調べ)で、絵本『パンどろぼう』シリーズの最新作『パンどろぼう おにぎりぼうやのたびだち』が1位を獲得。これで8週連続トップに輝きました。

1作目は“2021年に最も売れた児童書”(日販調べ)になるなど、人気の絵本に成長。『パンどろぼう』シリーズを手がけた絵本作家の柴田ケイコさんにインタビューし、異色のキャラクターの誕生秘話や物語を作る上でのこだわりなどを聞きました。

作品の主人公は、パンを心から愛し、おいしいパンを目当てに盗みを繰り返す“パンどろぼう”。『せかいいちおいしい もりのパンや』を見つけ、お目当てのパンを盗むためこっそりお店に入り、騒動を巻き起こします。

「ああ、なんて おいしそうなんだ。おひとつ あじみを してみよう」
「あっちをむいたら サササッ。こっちをむいたら ピタッ。」
「さあ、ねらったパンを かついだら でぐちまで いっきに ピューン!」
「しめしめ! やったぞ!」(『パンどろぼう』より)

食パンに目と鼻・手足が生えたユニークなキャラクターと、“悪者が主役”という作風が特徴。2020年に1作目が発表され、2・3作目では『パンどろぼう』を邪魔するロールパンとフランスパンが登場。最新作の4作目は、パンではなく“おにぎりぼうや”を主人公にした異例の展開で読者を楽しませ、約2年半でシリーズ累計発行部数150万部を突破しました。

――これほどの人気シリーズになることを想像していましたか?

全然想像もしていなかったです。シリーズ化することさえも考えてなかったので「こんなになるとは」とすごくうれしい気持ちでいっぱいなのと驚きと、色々な思いがあります。

■“名刺のイラスト”がきっかけ 『パンどろぼう』誕生秘話

――『パンどろぼう』が誕生するまでの経緯を教えてください。

元々『パンどろぼう』の前から、食べ物の絵本を描く機会がありまして。編集者から「他に食べ物の絵本描きますか?」みたいな案をいただいて。その時にちょうど自分の個展で、オリジナルで描いたパンをテーマにした個展をやったんですけど、“パンをかぶったしろくまくん”が逃げていくイラストを描いていたんですね。それを名刺に描いて渡したら、「すごく面白いですね」って言っていただいて。そのタイトルが『パンどろぼう』っていう絵だった。なかなか“パンとどろぼう”って組み合わさった絵本って聞いたこともなかったので、「何か面白いお話が作れそうだな」と思って『パンどろぼう』を作り上げました。普段オリジナルで描いた考えのもとが絵本になった、きっかけになったっていう感じです。

――元々パンへの思い入れは強かったんでしょうか?

パンは本当にすごく好きで。“1日1つは絶対食べる”っていうぐらいパン好きだったので。あと、(パンの)膨らみとかフォルム的なものをイラストで描くのも面白いなと思って、わりとスッと入っていった題材ではありました。

――ちなみに今日もパンは食べましたか?

はい、朝食べました。朝バタバタしていて、おしゃれなパンは食べていない…。食パンです(笑)

■心がけているのは“悪者だけどみんなから好かれるキャラに”

――柴田さんがストーリーを作る上でのこだわりやルールはありますか?

やっぱり自分が面白くないと面白いのが描けないので、自分が読んでいて“こういう展開になったら面白いな”っていうものを描きたいなって思っています。読者の方にも喜んでほしいので、ページをめくるたびにワクワクするような驚きもあったり、そういう展開の仕方が結構好きです。

――主人公が“どろぼう”(悪者)なのもワクワクさせたかったから?

そうですね。タイトルの『パンどろぼう』が先にきたので、やっぱり“どろぼう”の話じゃないといけないし。けど、“おいしいパンを見せたい”っていう、その2つをどう組み合わせてどのように展開しようかなと思った時に、“悪者で話が終わる”っていうのは自分自身もすごく嫌でした。“悪者”なんだけどすごく愛着があって、“みんなから好かれるキャラクターにしよう”っていうのを決めて、じゃあどのように展開していこうかな? と思って(物語を)考えたという感じです。

――読者からはどんな声が届いていますか?

なにより「パンどろぼうくんが大好きです!」というお声が非常に多くて、どろぼうなのにこんなに“愛されキャラ”になったんだと思って、すごくうれしいですね。あと文章では書いていない、例えば“パンどろぼう”だったらパンに対する愛ですよね。好きなものには本当に熱心で、志があって。“盗むのは1つだけ”とかおきてがあったり、説明していないんだけど絵で見てわかるようなところをちゃんとくみ取ってくれていて、すごくうれしかったです。“考察”まで考えてくれる人もいたりして(笑) 1つの物語から色んな人の頭に入って考えてくれているんだな、っていうのはありがたいなと思いました。

■自身も“2児の母”  息子たちの反応は?

――柴田さんの2人の息子(17歳・15歳)の絵本に対する反応は?

あまりにも身近にいるせいか、ピンと来ていない息子たちで「ねぇねぇ、次どんな話?」みたいに聞かれることもなく。こんなに売れていることもあんまりピンと来てないんじゃないか…。あまり感想もないですね(笑) 漫画大好きなので漫画ばっかりです(笑)

――ご家族も柴田さんと同じく“ご飯派”ではなく“パン派”ですか?

3対1です(パン派:3 ご飯派:1)。夫だけ“ご飯派”なんです。

――“ご飯派”の夫は『パンどろぼう』についてどういう感想をお持ちですか?

息子たちは全然聞いてくれないんで夫には読み聞かせするんですけど、「(主人公が“おにぎりぼうや”の)4作目が一番よかった」って言ってました(笑)