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映画『金の国 水の国』監督ら 「映画は僕のものって言える度胸」 アニメ界のトップクリエイターが語る“監督のエゴ”

2023年1月27日 22:40
映画『金の国 水の国』監督ら 「映画は僕のものって言える度胸」 アニメ界のトップクリエイターが語る“監督のエゴ”
(左から)伊藤智彦さん、渡邉こと乃さん、齋藤優一郎さん(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023『金の国 水の国』製作委員会
劇場アニメ『金の国 水の国』(27日公開)の制作に携わり、アニメ界の第一線で活躍する渡邉こと乃さん(『金の国 水の国』監督)、伊藤智彦さん(『ソードアート・オンライン』監督)、齋藤優一郎さん(『竜とそばかすの姫』プロデューサー)が対談。本作の見どころや、長編アニメーション作品を制作する際に大切にしていることなどを語りました。

映画は、2017年に『このマンガがすごい!』で1位(オンナ編)を獲得した『金の国 水の国』を劇場アニメ化したもの。100年断絶している2つの国を舞台に、敵国同士の身でありながら、国の思惑に巻き込まれ“偽りの夫婦”を演じることになる王女・サーラ(声:浜辺美波さん)と貧しい建築士・ナランバヤル(声:賀来賢人さん)が恋に落ちていく物語です。

■渡邉こと乃「平凡な事なんだけど、そこを大事にすることできっと変わることがある」

本作の主人公の一人であるサーラについて齋藤さんは「たった一人の女性の決断が世界を変えるというダイナミックさは、映画館で感じるべき最大のテーマ」とその重要性をアピール。第93王女という位の低さや、いわゆる絶世の美女とは異なる容姿から、最初はどこかあきらめた心を持っているサーラについて渡邉監督は「そんな彼女の心を関係なしに乗り越えてきてくれるのが、彼女のヒーローであるナランバヤル。だからサーラも一歩踏み出して、自分の大切な平穏な日々を守るために頑張れる」と、もう一人の主人公・ナランバヤルの存在の大きさにも触れつつ「平凡な事なんだけどそこを大事にすることできっと変わることがある」という思いを作品に込めたことを明かしました。

そして、映画の大きな魅力の一つである細部にまでこだわり抜かれた圧巻の美術について、伊藤さんは「背景に細かい描き方をしているカットがとても多いんですよ」と触れたうえで「でかい画面で見る価値がある。“こんなところまで書いてあるんだ”とか“こんなところまで気を遣って画面を作っているんだ”っていうのは映画館でみる喜びだと思うので」とコメントしました。

■齋藤優一郎「子供とか若者とか、彼らの未来を肯定するような作品を作るべき」

さらに、それぞれが長編アニメーションを制作する上で大切にしているポイントとして、伊藤さんは「監督のエゴというか、これ今やりたいっていう個人的な事情みたいのが結構重要なんじゃないかって思ってるんです。例え原作があったとしても、監督が作品を引き寄せる何かなんじゃないかと思ってるんです。なので、原作はあるんですけど、映画は僕のものですよって言える度胸が、特に長編の場合は必要。それをちゃんと言えるように作ることが重要なんじゃないかな」とコメント。

また、“アニメーションは若者が見ることが前提の表現”という齋藤さんは「子供とか若者とか、彼らの未来を肯定するような作品を作るべきなんじゃないか」としたうえで「彼ら(『金の国 水の国』の登場キャラクター)は、ひとつのものに向かっていく、もしくは手と手を繋いで合わせる。その彼らの行動は必ず未来を変えてく力になる。それをすごく象徴するのが僕はラストのカットだと思っていて、ぜひそれは映画館で見てほしい」と本作の見どころを改めてプッシュしました。