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成長につながらない成長戦略、リクルートHD峰岸会長が問題点を指摘

2022年5月21日 13:55
成長につながらない成長戦略、リクルートHD峰岸会長が問題点を指摘

まもなく岸田政権の『成長戦略』が発表される。コロナ禍やエネルギー高騰などで経済が影響を受ける中、場当たり的でない戦略が期待される。ところが戦略の中身以前に、成長戦略の策定のあり方から問題だとする意見書が出された。

意見書をとりまとめたリクルートHDの峰岸真澄会長(経済同友会副代表幹事)が、日本テレビのインタビューに答えた。

     ◇◇◇

先月、経済同友会が発表した成長戦略に関する提言に、こう書かれていた。

 「従来の成長戦略は『会議体が分散』『アジェンダが総花的』『自治体や民間企業等の現場への実装力不足』『客観性や一貫性が不十分』」
 「経済成長につながらなかった要因を分析、反省し、成長戦略のあり方を抜本的に見直す必要がある」

この『実効性ある成長戦略の策定と着実な実行に向けた問題提起』(中間提言)を作成した成長戦略・評価実行委員会のトップは、リクルートホールディングス会長の峰岸真澄氏だ。

峰岸氏は2012年4月にリクルートグループのCEOに就任。当時は海外売上高がグループ全体の3.64%に過ぎなかったが、アメリカのIndeed社を始めとする複数の海外派遣会社の買収でリクルートをグローバル企業に押し上げた。

日本の成長戦略はどこが間違っているのか?  峰岸氏にインタビューを行った。

■GDPが伸びない~日本型給与体系を変える

峰岸氏
「大手企業、上場企業にとって『pay for performance』型(業績に応じた給与)の人事システムに移行していくのは、完全に『マスト』だと思う。年功的な給与制度で、終身雇用的な制度で、新卒一括採用のようなことを今でもしているのは、ほぼ日本しかないと思われる。GDPでも世界2位というようなサイズで成功してきた(日本型)システムでもあるので、変えていくのも難しいかもしれないが、もう他の国にキャッチアップしていくだけの話だと思う」

峰岸氏は、日本も海外のようにシビアに業績に応じて給与が支払われるシステムに変わっていくべきとの考えを示した。

峰岸氏
「リクルートグループの場合、pay for performance型に変え、それが、普通の企業風土になっていくのに5年10年かかった。時間はかかると思う」

――『pay for performance型』に変えれば成果が上がり、企業利益が拡大されるのか?

峰岸氏
「日本だけ一人あたりGDPがどんどん下がっている。そういう意味で、生産性という意味で決して(他国に)勝っているわけでない。いろいろなところを修正してアップデートしていかなければならない。人事システムもその一つ」

■廃業しないよう支える支援ではなく、市場から退出するのをあと押しする金融支援

峰岸氏
「産業の新陳代謝が重要だ。新しい産業やイノベーションをあと押ししていけば、退出する産業や企業も出てくる。その退出や移転を(止めるのではなく)サポートすることに、政府はたくさんお金をかけていくべき。企業がそこにとどまることにお金をかけるのではない」

「古くてなくなっていく仕事やスキルから、これから増えていく仕事やスキルに人材が移れるようサポートすることに国は大きな投資をしていくことが大事」

「企業でも人員を適正化する時に退職金を上積みすることで退職者を出しやすくする。(同様に)政府も、退出する企業に対して「次への準備金」というような意味で資金を提供していくのはありだと思う」

■成長戦略の推進と、後戻りさせない対策

峰岸氏
「一番、日本にとってインパクトのでかい成長戦略は何なのかということを十分議論して、絶対そこに向かっていくというスタンスのセッティングを、官邸も省庁も政治もコミットしていかないといけない。たとえばデジタル政策であったり、グリーン政策であったりを進めようとしている時に、(また元の方向に戻る)『揺り戻し』というのが出てくると思う」

「既得権益とか既存産業とか政治家の皆さんとか所管官庁とかが(政策の実現に)難しいポイントを挙げていくことになると、揺り戻しが起こってそこから前に進まなくなってしまう。これは企業も同じ。『事業部横断とか子会社横断とかで大きなアジェンダに向かわなければいけない』と本社が決めても、各々の事業部に戻った時にそこで文句が出て、そのアジェンダを降ろさなくてはいけないということは企業でもある。成果を出している企業はそれを乗り越えて合意形成していくので、国も一緒かなと思う」

■企業にとってシェア拡大より大事なことは

峰岸氏
「既存のビジネスの維持やシェア争いに集中して時間をかけることも大事だが、それよりも大事なことは、既存のビジネスも、対峙している産業も、自社でdisrupt(分断)し新しい産業に変えていくということ。既存事業がもうなくなったとしても新しいビジネスが生まれて来るというところに最も時間をかけていくようにしないと、リスクのあまりない短期的に回収可能な投資ばかりになって、気づいた時には世界は遙か先に行ってしまうことになりかねない」

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経済同友会は国の成長戦略のあり方の課題についてさらに現役の行政官などにヒアリングを行い、夏に具体的な解決策を提言する予定。

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