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2025年 原発“新増設”元年~半世紀ぶりの原発建設に沸く町とは~

2025年1月3日 7:00
2025年 原発“新増設”元年~半世紀ぶりの原発建設に沸く町とは~
関西電力・美浜原発(福井・美浜町)

2025年、国の将来のエネルギー政策を見据えた「エネルギー基本計画」が3年ぶりに改定される。東日本大震災以降の原発方針であった「可能な限り低減」の文言は削除され、「最大限活用」とかじを切る。およそ半世紀ぶりの原発“新増設”に期待する町とは。(経済部・岩田明彦)

■半世紀ぶりの万博開催と原発建設

2024年末、政府の新しい「エネルギー基本計画」の素案が示され、原発については新たな建設方針が明記された。2025年は、原発の建設議論が加速する、“新増設”元年になるとみられる。

焦点は、どこに原発が建設されるかだ。

そのヒントとなるのは、東日本大震災前に決定していた“新増設”に向けた既存計画。

経済産業省の資料によると、以下の既存計画がある。いずれも震災前に地元自治体に示されていたが、2011年の福島第一原発事故の影響で計画は中断しているものである。

【震災前からある既存計画】(※着工済、計画廃止は除く)
(1)東京電力 東通原発 2号機(青森・東通村)
(2)東北電力 東通原発 2号機(青森・東通村)
(3)日本原電 敦賀原発 3・4号機(福井・敦賀市)
(4)中国電力 上関原発 1・2号機(山口・上関町)
(5)九州電力 川内原発 3号機(鹿児島・薩摩川内市)
(6)中部電力 浜岡原発 6号機(静岡・御前崎市)
(7)関西電力 美浜原発 4号機(福井・美浜町) 

このなかでも関西電力・美浜原発4号機計画が“新増設”の最有力とみられている。

理由は、2023年に閣議決定された「GX基本方針」により「廃炉を決定した原発の建て替え」がすでに認められていること。美浜原発は1・2号機の廃炉を決めている。他の計画にも廃炉を決めた原発はあるが、活断層の問題などから再稼働すら果たせておらず、まして“新増設”にはまだ遠いのが現状だ。

関西電力の森望社長は2024年12月、日本テレビなどの取材に対し、「さまざまな検討が必要である」と前置きしながらも、「美浜原発は(建設)候補地の一つ」だと答えている。

1970年、美浜原発は、国内の商用原発としては東海原発(茨城県)に次ぎ、2番目に運転を始めた。同年に開催された第一回・大阪万博会場には、「万博に原子力の灯を」を合言葉に、美浜原発から電気が届けられたという。

あれから半世紀が過ぎ、奇しくも2回目の大阪万博の開催が間近に迫るなか、“新増設”の動きが加速するのかが注目されている。

■「今回、いよいよ!」~巨額プロジェクトと経済効果

美浜町の商工会関係者は、約半世紀ぶりの“新増設”に期待を膨らませる。

「福島の原発事故の前は予定地の付近で環境調査が行われていて、建設が始まるものだと思っていた。それがあの事故で止まった。今回、いよいよ!という考えだ」

美浜原発は1・2号機が廃炉となったが、3号機が稼働している。この再稼働に向けた対策工事の際やその後の定期検査などでは1日に1000人~2000人が必要となり、町も作業員でにぎわうという。4号機の建設が決まれば、人口約8600人の町で1兆円規模の巨額プロジェクトが動き出すことになる。地域への経済効果は計り知れない。

■原発建設費 電気代上乗せ案も

ただ、懸念材料は原発の建設費を誰が払うのかだ。

福島事故以降の安全対策費が高騰している。2015年の政府資料によると原発1基の建設費は4400億円と見積もられている。しかし、海外での建設費を参考にすると、今や原発は1基1兆円を超えるほど高額となっているのだ。

過去、電力会社は「総括原価方式」という建設費や維持費、人件費など総原価に一定の報酬率を乗じて電気料金とすることが国から認められていたため、赤字の心配なくコストを計上できていた。しかし、電力自由化後は建設費を確実に回収する手段がなくなり、巨額投資に及び腰になっている。

実は、この原発への巨額投資が国民負担となる可能性が出てきている。

次期「エネルギー基本計画」の改定案でも、電力会社への投資を促すための「制度設計を整備」するとした上で、「民間金融機関が取り切れないリスクについて、政府の信用力を活用した融資」などの方策を検討するとしている。

一体なんのことなのか?

具体的な議論はまだ行われていないが、経済産業省の会合では原発支援策の海外事例として、イギリスの「RABモデル」と呼ばれる制度が参考として提示されている。原発の建設費や維持費などを電気料金に上乗せして回収できるという制度だ。

つまり、自由競争のなかでは原発は“高すぎる”ため、電力会社は建設に踏み切れない。だから国が“電気料金に上乗せ”する形でコストを回収する制度を整えようとしているとみられる。

エネルギーの安定供給、脱炭素、そして安全保障のため、政府は原発の“新増設”に踏み込んだ。しかし、そのコストについては将来、なんらかの形でわれわれ利用者に影響してくるものと考えなくてはならない。

※エネルギー基本計画のなかでは「建て替え」という言葉が使われているが、一般的に真新しい建物を建てることは「新設」や「増設」というため、この記事では“新増設”という言葉を使いました。

最終更新日:2025年1月3日 7:00
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