春闘スタート 中小企業の賃上げは “したいけどお金もない”悩みかかえる経営者も
24日、「春闘」が事実上のスタートを切りました。カギとなるのは、働き手の多くを占める中小企業の賃上げです。中小企業にも賃上げは広がるのか、現場を取材しました。
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「あなたの賃金、上がっていますか?」と街で聞きました。
旅行業(20代)
「ボーナスは昨年度よりは上がったかなとは思います。業績が上がったのかなと」
サービス業(40代)
「この前、実は上がったんですけど、総支給額から引かれるものの方が多くて、上がっている実感はほとんどありません」
情報サービス業(30代)
「上げていきたいなという感じですが、まだ目に見えては(上がってない)」
24日、賃上げ交渉、いわゆる「春闘」が事実上のスタートを切りました。
経団連 十倉雅和会長
「今年は中小企業における構造的な賃金引き上げへと、波及させていくことが不可欠です」
特に強調したのが、日本の働き手の7割が勤める「中小企業の賃上げ」です。私たちは、従業員約90人の鋳物メーカーを訪ねました。
伊藤鉄工 伊藤暢宏社長
「4月から目標として、最低5%ぐらいは賃上げをしないといけないなと」
その理由について…
伊藤鉄工 伊藤暢宏社長
「大会社さんが“15%上げる”とかおっしゃっている会社がいっぱいありますから、賃上げをしていかないと魅力のある会社、業界にできない」
企業の賃上げのためには元手が必要です。この会社が取引先との値上げ交渉のために作った去年の資料を見せてもらいました。
伊藤鉄工 伊藤暢宏社長
「去年、原材料がだいぶ上がったので、価格転嫁をお願いしてました」
物価上昇などで自社のコストが増えた分を販売価格にもきちんと上乗せしなければ、自分たちの利益が減って賃上げも苦しくなります。
そして、今年は、中小企業が賃上げする原資を確保できるよう、政府が大企業を監督しているのです。
伊藤鉄工 伊藤暢宏社長
「(政府などから)労務費(賃金等)を価格転嫁するにあたって、交渉材料に入れなさいと、全国的に『労務費(賃金)上げるために価格を上げてください』という、交渉がしやすくなったのが大きな違い」
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中小企業に“賃上げの流れ”は広がっていくのでしょうか。
Kuwayama(ジュエリーメーカー) 桑山征洋会長
「賃上げが大賛成という感じで、まず労働状態を良くしてその環境の中で良い製品を作り出してもらう、それが経営者としての責務ではないのかなと」
賃上げに前向きな声がある一方…
ワン・ステップ(保育園経営) 田口絢子代表
「(賃上げ)できません。お金ありませんもん。(賃上げ)しなかったら従業員が辞めていったりしたら困るので」
日本商工会議所による全国の中小企業への調査では、約60パーセントの企業が、人件費の増加分を価格に全く反映できない、または3割以下の反映にとどまると回答しています。
全国125万の中小企業が参加する日本商工会議所の小林会頭は、消費者にも理解を求めています。
日本商工会議所 小林健会頭
「良いもの、良いサービスには値がつくんだということをぜひ、消費者の皆さんに理解をしてもらいたい。国民の半分以上を潤している中小企業の関係者の生活に跳ね返ってくると」
中小企業の利益アップが、ひいては賃金アップへつながる――今年の「春闘」は、日本経済の今後を左右する重要な局面を迎えています。