【プラス解説】大規模な金融緩和策「維持」決定“日銀注目”物価の動向は?
日本銀行は22日と23日の2日間にわたって行われた金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策の維持を決めました。これについて、日本テレビ経済部の日銀担当キャップ・渡邊翔記者に聞きます。
◇◇◇
――物価や金利といった我々の生活にも大きく影響する日銀の金融政策ですが、今回は変更なしということでした。
はい、先進国の中で唯一、金利を低く抑える政策を続けている日銀ですが、いつ正常に戻すか。その検討にあたって2つの要素を慎重に見極めようとしているんです。
一つは、まもなく始まる春闘での「賃上げ」。物価の上昇を上回るレベルの賃上げが実現するかどうか。もう一つは、物価の中でも「サービス価格」の上昇が続くのかどうかです。
――サービス価格というのは、どんなものの価格のことを言う?
最近の物価の動きなんですが、物価には大きく2種類あります。一つは食品などの「モノ」。モノの値上がりは私たちも十分実感していますよね。
それに遅れて最近じわじわ上昇しているのが、サービスの価格。例えば、レジャー施設の入場料やホテルの宿泊代、塾の授業料などをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
経済を活性化させるために、日銀は毎年緩やかに(2%程度で)物価が上がっていく状態を目指していますので、このサービス価格の上昇が続くのかに注目しているわけです。
サービスの方で値上げが進むと何が変わるのか?23日朝に取材したヘアカット専門店「QB HOUSE」では、去年4月にヘアカットの価格を150円引き上げ、この収益をもとに1年間で約1割の賃上げや理美容師の研修の強化を行いました。
キュービーネット広報・宮城志歩さん「一般企業以上に理美容業界も人手不足が問題でして、今回のような賃上げとかで給与を確保し、働く環境を整えていくのが重要」
賃上げはスタッフのモチベーションアップにつながりますし、客足もほとんど落ちず、去年1年間の売り上げは約1割増えたということなんです。
日銀の植田総裁も23日の会見で、この賃金分がサービス価格に乗ってくる動きがどのくらい進むかに注目したいと話していました。
――働き手や企業にとっては値上げが良い循環になっているんですね。ただ、値上げと聞くと、どうしても暮らしには厳しいなと感じてしまいますが。
物価が上がらないのは一見、お得に見えるかもしれませんが、いま日銀や政府が目指しているのは「賃金と物価の好循環」。つまり、「物価が緩やかに上がり、企業の利益が増えて物価以上に賃金も上がっていく」。こういう経済なんです。
なので私たちも、良い経済の循環の中では物価の上昇が巡り巡って自分や家族の給料に返ってくると。こういう点を理解しておくことも大事かもしれません。