電気料金・ガス料金など「支援策」決定 待ち受けるのは“負のループ”?
経済対策の目玉の1つとなる電気代などの支援策が28日に決まりました。標準的な家庭で、来年1月から9月までの光熱費などの負担軽減はおよそ4万5000円。家庭にとっては大変嬉しい支援策ですが、専門家からは“負のループ”に陥るのではと懸念する声も…。
「このままだと電気とガスだけで5万円になる」
「この冬以降も高騰続くと思うと心配」
子供3人を育てる40代夫婦の家では、こんな不安の声が聞こえます。
高騰を続ける電気代。例えば、東京電力の12月の電気代をみてみると、標準的な電気使用量の家庭で9126円。1年前と比べると1600円以上あがっています。また別のプランでは、3000円以上の値上がりも。
高騰の要因は、ウクライナ情勢や円安を受けて、火力発電の燃料となるLNG(=液化天然ガス)などの値段が上がっていることです。
こうした中、政府の支援策が28日、発表されました。
経済対策では電気料金について、1キロワットアワーあたり家庭で7円、企業等で3.5円を支援します。先ほど挙げた東京電力のモデルケースに当てはめると、月に1820円の割引に。支援による値下げ分は、電気料金の明細書に記入されます。
また、都市ガスについても1立方メートルあたり30円を支援します。これにより使用量が標準的な家庭で、ひと月900円程度安くなる見込みです。
これまでも行っていたガソリン代支援については、来年1月以降も継続。現在35円(35円を超えた分は半額補助)としている上限を緩やかに引き下げ、6月からは段階的に補助を縮小します。
こうした支援策により、来年1月から9月までの1世帯あたりの負担軽減は、標準的な家庭で4万5000円程度になるといいます。
■“ばらまき制度”の背景…複雑な電力市場
今回の制度では、電力会社が家庭の電気料金から該当の金額を値引きして請求、その分を後から政府が補填するとしています。
料金の上がり幅や、所得の差は考慮しない一律支援。こうした“単純”な支援のしくみに落ち着いた背景には、電力業界の現状があります。
電力の小売り会社は現在、全国で約700社。その中には、政府からの支援を反映した料金システムの構築が不安視される小さな会社や、経営の実態が不明瞭な会社もあります。また、各社には様々な料金設定のプランがあり、例えば東京電力だけでも80プラン近くあります。
経済産業省の関係者は「官邸側は簡単に言うが、電気料金の仕組みは非常に複雑。制度設計に七転八倒している」とこぼしていました。
結果として、電力使用量に応じて支援する、最も単純な仕組みに落ち着いたというわけです。
■嬉しいはずの支援策で“負のループ”に?
こうして決まった、今回の支援策。しかし、家庭や企業を助けるはずの制度による“将来のツケ”を懸念する声もあります。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブエコノミストは、「今回の補助金制度は国債、つまり国の借金によるものだ」と強調した上で、「財政を悪化させる形での大型の景気対策は“円安”が進む要因になり得る」と指摘します。
現在の高い電気代の要因の1つが、円安による発電の燃料調達費の高騰。
つまり、
▽多額の補助金により財政が悪化
▽円の価値が下がり、円安が進む
▽円安により、発電の燃料調達費がさらに上がる
▽電気代などは高騰を続け、補助金が止められなくなり、さらに財政が悪化する
という“負のループ”から抜け出せなくなる可能性があるといいます。
電気やガス代の高騰や円安の影響で、苦しい家計。今回の経済対策で、好転への道筋をつけることはできるのでしょうか。