×

【解説】家庭の電気代“2割”支援へ 「一時しのぎ」指摘も…「総合経済対策」政府案

2022年10月27日 20:46
【解説】家庭の電気代“2割”支援へ 「一時しのぎ」指摘も…「総合経済対策」政府案

燃料価格の高騰などを受けて、家庭で光熱費などの負担が増え続けています。これを受けて、政府は28日に閣議決定する「総合経済対策」で、家庭に4万5000円ほどを支援することで最終調整しています。

●いつから?
●電気代“2割”値引き
●ガス代も一部安く

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■「物価高騰に対応」 総合経済対策、28日に閣議決定

政府は、物価高や円安などへの支援策を盛り込んだ新たな総合経済対策を28日に閣議決定します。予算規模は、約29兆1000億円とする方針を固めました。

具体的な中身には、4つの柱があります。

・「物価高騰への対応」と「賃上げ促進」
・「円安を活かした稼ぐ力の回復・強化」
・人への投資など「新しい資本主義の加速」
・「国民の安全・安心の確保」

中でも今回の総合経済対策の目玉は、「物価高騰への対応」です。政府は、電気・ガス代などの負担軽減策を2023年1月以降に始めることを目指しています。

具体的に、どのような軽減策となるのでしょうか。「電気料金支援」、「ガス料金支援」、「ガソリン価格抑制のための補助金継続」の支援策により、2023年1月から9月までの1世帯あたりの負担軽減額は、標準的な家庭で4万5000円程度になると見込まれています。

ただ、支援策の内容を細かく見ると、今、払っている電気代がグッと安くなる…というわけではなさそうです。今回の政府案では、電気料金は1kWhあたり一般家庭で7円、企業などで3.5円を支援します。

では、この支援策で、私たちが払う電気代は一体どのくらい電気料金は安くなるのでしょうか。東京電力と契約している標準的な電気使用量の家庭の場合、月9126円かかっているのが1kWhあたり7円が補助され、1820円値引きされた月7306円となります。家庭にとって、2割ほどの負担軽減になるということです。

電気料金は、この1年間値上がりしています。東京電力によると、標準的な電気使用量の家庭の電気料金は2021年10月と比べ2000円近く上昇し、9126円でした。さらに、2023年春には2000円から3000円の値上がりする可能性もあります。

総合経済対策に盛り込まれる月2000円程度の支援について、岸田首相は「平均的な家庭の負担増に対応する額」と述べました。

国が、今よりも負担が増えそうな分を肩代わりしてくれるといったイメージで、帳消しされるという感じです。

補助金は現金でもらえるわけではなく、値引かれた額が請求される形です。値下げ分は電気料金の明細書に記入される方針で、「燃料費調整額」の欄に値下げ分を反映するなどの案が検討されています。

■ガス料金支援策 対象は都市ガスのみ

続いて、ガス料金の支援についてです。ガス代は1立方メートルあたり30円支援されることで、使用量が標準的な家庭で月900円程度安くなる見込みです。

ただし、注意点があります。今回の支援対象は、都市ガスだけです。地方などに多いLPガスについては、事業者数が多いことなどから、都市ガス同様の支援は今回は見送られました。

■「ガソリン価格補助」来年1月以降も継続へ

続いて、ガソリンについてです。今月24日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットルあたり169.2円でした。ガソリン高騰を抑える国の補助金が適用されている価格です。補助金がない場合、実際の価格は208.7円で、国が1 リットルあたり40円近くがすでに補助している状態です。

政府はレギュラーガソリン価格が170円を超えた2022年1月から、価格高騰を抑えるために石油元売り会社に補助金を出したため、価格は170円前後に抑制できています。

政府は、年末が期限だったガソリン価格の補助金について、2023年1月以降も補助上限を見直しつつ継続し、2023年6月以降は補助を段階的に減らしていく方針ということです。

■支援策の財源は“国の借金”国債 専門家はクギ

今回の29兆円規模となる「総合経済対策」は、「世界平和統一家庭連合」いわゆる“統一教会”問題などで政権への支持率が落ち込む中、国民が恩恵を実感できる支援策も盛り込むことにより、巻き返しをはかる狙いもあります。

ただし、経済評論家の加谷珪一氏は「あくまで一時しのぎに過ぎない」とクギを刺しています。財源の多くは“国の借金”国債が使われる見通しのため、加谷氏は「いつまでも続けられるものではない」と指摘しました。

また、加谷氏は「物価高の根本的解決のためには、同時並行で資源の輸入依存度を減らしていくことが重要だ」としています。そのために、『再生可能エネルギーの比率を高める』、『家の断熱性を高める』など“日本が得意とする省エネ技術”で消費電力を抑えることなどで、時間がかかったとしても、エネルギー構造の抜本的な転換をさらに押し進めていくことが大切」と訴えました。

電気やガスといった日々の生活に欠かせないものの値上がりは、あらゆる人の家計を容赦なく直撃します。円安や資源高のように日本だけではコントロールできない要素を少しでも減らしていくことが、究極的な防衛策と言えそうです。

(2022年10月27日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)