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28兆円規模の新経済対策 その効果は?

2016年8月2日 18:23
28兆円規模の新経済対策 その効果は?

 28兆円規模の大型経済対策が2日、閣議決定された。政府は「国内総生産(GDP)を1.3%押し上げる」としているが、果たして、その効果は?


■保育所が抱える悩み

 東京・千代田区にある保育所「ハイブリッドマム千代田富士見」。定員は満員の状態だ。この保育所は今、ある悩みを抱えている。実は保育士のひとりが先月、産休に入ったものの、代わりの保育士のメドが立っていないというのだ。

 保育所を運営する「ハイブリッドマム」の三宅恵理社長は、人材紹介会社に求人を依頼。担当者が1日、訪ねてきた。そこでは保育士の“給料の低さ”が話題となった。

 保育士の給料は全ての産業の平均より10万円ほど低く、これが保育士不足や待機児童問題につながっていると指摘されている。実際、保育士に聞くと、「自分が子どもができたとき、今の自分の給料で子どもを育てていくのは絶対にムリ」と話す。

 保育所側も保育士の確保に向けて独自の策を講じている。

 三宅社長「遠方(の人)だと引っ越し費用もかかるじゃないですか。その引っ越し費用を一部負担しようかなとか、裸一貫で来られるような形で、もう家電全部そろえたり」

 ただ、この日は人材の確保には至らず、募集を継続することになった。

■過去3番目の“大型経済対策”

 こうした状況を変えるキッカケとなるのか、政府は2日、“新たな経済対策”を閣議決定した。その規模は28兆1000億円余りと、過去3番目の“大型経済対策”だ。

 対策では「1億総活躍社会」の実現に向け、3兆5000億円程度を充てるとした。その中には保育士の処遇改善策が盛り込まれ、来年度に給料を2%程度にあたる月約6000円、経験を積んだ職員にはさらに月に1万円以上、上乗せされる。


■目立つインフラ事業

 一方、経済対策全体を見渡すと、目立つのは「インフラ事業」だ。「リニア中央新幹線」の名古屋~大阪間の開業を最大8年間前倒しすることや、訪日外国人の増加に向け、大型クルーズ船が寄港できる港湾整備の推進など「公共事業」が10兆7000億円を占めている。

 また、消費意欲の落ち込みが続いていることから、低所得者へ現金1万5000円を一括で給付することも決めた。経済対策をキッカケに消費を呼び起こしたい考えだ。(対象は2200万人 支給は来年夏の予定)

■「地方の景気、全然良くなっていない」

 しかし、消費低迷への不安は特に地方で根強く残っている。栃木市で弁当製造を営む「マルトモ食品」。この会社では地元企業の従業員などを中心に弁当を販売している。しかし、ここ数年で変化が起きているという。

 マルトモ食品・羽金賢作社長「(お客さんから)400円のお弁当だったのが“残業代がなくなったので350円にしてくれ”とか。去年おととしから比べると、売り上げは確かに2000万円近く落ちている。(地方の)景気は全然良くなっていない」

 消費が低迷し、価格競争も激化。値段の高い弁当は売れにくくなったという。容器も余ったまま倉庫にしまわれていた。


■新たな経済対策、効果と課題は?

 日本テレビ・宮島香澄解説委員の話

 「規模の大きさをアピールしていますが、国の財政が苦しい中、なんとか規模を膨らませたというのが実態で、効果は限られるという声もあがっています。中身は“公共事業頼み”にも見えます。日本の本当の経済成長のためには、この他に盛り込まれた『働き方改革』などをしっかり実現できるかがポイントとなります」

 政府は経済対策を盛り込んだ補正予算案を秋の臨時国会に提出、早期の成立を図る考え。