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日本の低い独立・起業意識 どう変える?

2020年1月14日 16:13
日本の低い独立・起業意識 どう変える?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「日本の低い独立・起業意識」。多角的にスタートアップ支援を行うフォースタートアップス代表の志水雄一郎氏に話を聞いた。

パーソル総合研究所がアジア太平洋地域14の国と地域を対象に行った調査によりますと、「会社を辞めて独立・起業したいか」という問いに対して、「とてもそう思う・ややそう思う」をあわせた割合が一番高かったのは、インドネシアで56.4%。次いで、インド、タイ、フィリピン、ベトナム、中国、マレーシアと続いていて、日本は15.5%と最も低い数値となりました。

この話題について志水さんのご意見をうかがいます。


――まずはフリップをお願いします。

「選択できる時代」と書きました。

昭和の時代に日本は素晴らしい大企業がたくさん生まれたので、そうした企業で安定した就業機会が得られるということが前提としてあり、日本ではあれだけ起業志向が低いという数字が出ているのだと私は思います。

――仕方なく、そうなってしまっているわけですね。

起業しなくても仕事がたくさんありますからね。

――安定という言葉がよく定着するようになりました。でも、なぜこのような現状になり続けてしまっているのでしょうか。

一番大きなポイントは、昭和の時代にソニーやパナソニックといった会社は、勇気を持った方が起業されたわけです。日立やトヨタというのは1事業部分が分社化して、そこに銀行がお金を貸してすごく大きな会社が生まれました。そこでご活躍された方々が、自分の娘、息子に対して自分が歩んだ道のような大きな会社で働きなさいと伝えたのがおそらく平成という気がしています。

――それが平成の30年ほどということですね。

失われた30年といわれるのがそれだと思います。私は本来であれば、昭和の時代を生きた親が伝えるべきは「挑戦したよ」とか「成功したよ」ということを伝えるべきで、大企業で安定したキャリアを積むべきとか、規模の論理で働くべきということを伝えるべきではなかったと思う。平成の時代は、アメリカも中国も年間で14兆円ぐらいベンチャー投資をしてGAFAを生み、BATHを生み、ユニコーン企業をたくさん生んで、それが国の競争力につながりました。

一方で日本は、年間でのベンチャー投資は0.5兆円しかありません。アナリストではおそらく2030年や2050年には日本がインドやインドネシアにもGDPで抜かれる可能性があるとリポートしている方もおられます。ちょうど先ほども出ていたデータでも、インドやインドネシアでは起業志向が高いが、日本は低いです。

――確かにインドネシアは1位でインドは2位ですよね。これらの国は起業しやすい環境になっているのでしょうか。

ベンチャー投資も大きいです。日本よりも多い。

――ということは、新しいものを作っていこうと若者も思っているし、教育もなされている。

あると思います。

――では、日本はこれからどのようにしていけばいいでしょう。

私は昭和の時代をもう一度、令和の時代に取り戻せばいいと思うんですよね。みんなで挑戦すればいい。日本は世界で勝つために、競争力を持つためにみんなで挑戦をしましたし、努力もしたと思うんです。もう一度そういう時代を作ればいいと思います。

ただ、私は起業するとか、スタートアップでキャリアを積むことが全てではないですし、それも一つの選択肢になればいいというふうに思います。ですので、今回ここのフリップで発表している「選択できる時代」というのは、大企業で働いてもいい、起業してもいい、スタートアップでも働いてもいい。令和の時代を個人の方にとって自由に選択できる時代にしたいなと思っております。

――今、新社会人も含めて若者の人たちが、この会社に一生居続けるとか終身雇用という考えがどんどん薄らいでいるような気がします。

そうですね。おそらく新卒で入社した中の3分の1の方が転職される時代でもあります。

――日本は転職も受け入れられるような時代になってきていますか。

だと思います。

――では、世界に追いつくために令和の時代でイメージ転換が必要ですね。最後に、志水さんが今これからやろうとしていることを教えてください。

今の時代は95年、皆さんライフシフトして生きる時代ですので、存分に挑戦できる時間がある。ですので、改めて今までの従来型の生き方だけではなく、何度も挑戦できる時代を全員でプロデュースしていきたいと思っております。

■志水雄一郎氏プロフィル
フォースタートアップス代表。スタートアップへの出資から起業・転職支援までを多角的に支援する事業を行う。大学卒業後パーソルキャリアで『DODA』立ち上げなどを経て、2016年に創業。ベンチャーキャピタルと連携し、スタートアップに対して戦略的な資金や成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」を展開。1万社以上のベンチャー、スタートアップ情報を保有する。日本に「勝てる」企業を生み出し次世代の子供や若者たちに誇れる社会を創ることを目指す。

【the SOCIAL opinionsより】