岸田首相不出馬 財界からの評価と次の注文
岸田首相が自由民主党総裁選に出馬しない、つまり、総理大臣を退任する、と表明したことを受け、経済界からは評価や早速次の総理への注文が相次いだ。
◆サントリーホールディングス新浪氏「新しくトップになると普通は今までと違うことをする」
政府の経済財政諮問会議の民間議員も務めるサントリーホールディングスの新浪剛史社長(経済同友会代表幹事)は、日本テレビの取材に対し、次のように述べた。
「驚いた。いろいろなことを実行されたと思う。企業でも新しくトップになると、今までと違うことをしてしまいがちだが、岸田さんは実直な人で、過去から引き継ぐべきものは引き継いだ。賃上げの流れを継いで、ベースアップを拡大し、さらにこれまでできなかった『人材の流動化』を起こした。人材の流動化は生産性向上のカギで重要だ」
岸田首相をこのように評価した上で、次に首相になる人物には「逆行しないで欲しい」と求めた。新浪氏はかねて、衰退産業から成長産業に人材が移動し、日本全体の競争力を強化できるような政策を主張している。
一方で、社会保障改革は進んでいないと指摘した。人々の「将来不安」を払拭できるよう、高齢化社会に向け医療、福祉、年金に取り組むことや健康で働き続けられるようにすることが重要だと話した。
◆次は「海外とタメを張れる人」に
また別の経済界で活躍する人物は匿名で取材に応じ、岸田首相のリーダーシップについて厳しく指摘した。
「政策が場当たり的だった。科学技術立国にデジタル田園都市構想云々、ネーミングばかりで、20年後の日本をどうしたいのか、がなかった」
その上で、ウクライナ戦争や中東問題など、世界が不安定化している中で、次の首相は「G7の中で、日本がいなければ成立しない」という状況をどうつくっていくかが重要だと話した。外交上の立ち位置が経済にも重要となる中で、「海外とタメを張って話せる人物」が首相としてふさわしいとの考えを示した。
◆経済界から高く評価する声が多かった
7月下旬、「岸田さんの功績は歴史が証明する」、ある財界人は会食の席でこのように評価していた。実は財界で岸田首相を高く評価する人は少なくない。主な理由は原発再稼働や革新炉(次世代原発)の開発など、エネルギー政策を進めたことだ。
経済界に影響力を持つ別の財界人も「エネルギーは産業競争力の根幹。どういう業種が今後日本経済を牽引するとかの以前に、エネルギーの価格や量が大事。岸田さんは再稼働を含めてエネルギーの道筋をつくった」と評価した。また、賃金と物価の好循環を進めたと認める経営者も複数いた。
◆次の国のリーダーには…
日本は様々な課題に直面しているが、中でもAI、デジタルの活用拡大で需要が爆増するエネルギー問題、深刻な高齢化が労働力や国の財政などにますます悪影響を及ぼす中で社会保障政策をどうするか、こうした問題にどう取り組んでいくか、そして、日本経済を成長させるためにどのように人材育成を進めるかが注目される。