【解説】岸田首相「不出馬」決断の“3つの理由” 次の総裁は…“ポスト岸田”に早くも動き
岸田首相が14日、来月の自民党の総裁選挙に立候補しないことを表明しました。次の総裁候補として取り沙汰されているのが、茂木幹事長、河野デジタル相、高市経済安保相、石破元幹事長、小林前経済安保相、小泉元環境相、野田元少子化相の7人です。14日夜、さっそくいろいろな動きが出ています。
それはお盆休み真っ只中の表明でした。
岸田首相(14日午前、首相官邸)
「自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります。私は来たる総裁選には出馬いたしません」
9月の自民党総裁選に「出馬しない」と明言した岸田首相。この直後、ネット上に踊ったのは…
ネットの声
「岸田首相、総裁選出ないってよ」
◇
出馬しない理由の一つとして挙げたのは、自民党の派閥の「裏金事件に対する責任」です。
岸田首相(今年1月)
「宏池会(岸田派)を解散することを検討しております」
自らの派閥を“解散”したり、自ら政治倫理審査会に出席したり、党のトップとして対応にあたってきましたが…
岸田首相(14日)
「残されたのは、自民党トップとしての責任です。もとより所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任をとることにいささかの躊躇(ちゅうちょ)もありません」
会見で岸田首相は“次の総裁”にこんなリクエストも─。
岸田首相
「選ばれた総裁は、今度こそオール自民党でドリームチームをつくって、この信頼回復に向けてしっかりと取り組んでもらいたいと思います」
現在“ポスト岸田”として名前が挙がっているのは7人です。
岸田総理・総裁が不出馬を表明したことで、現職の党役員の茂木氏や現職閣僚の河野氏、高市氏は立候補しやすくなったとの見方が出ています。
14日夜、さっそく動いたのが…
記者
「自民党の茂木幹事長が都内の飲食店に到着しました」
茂木幹事長は党内に大きな影響力を持っている“キングメーカー”の一人、麻生副総裁と都内のステーキ店で会食。関係者によると総裁選について、意見交換したということです。
──岸田首相の決断はどう受け止めている?
茂木敏充幹事長(68)(午後8時半前)
「重く受け止めています」
一方、すでに“事実上の出馬表明”をしている石破元幹事長は外遊先の台湾で取材に応じました。
石破茂元幹事長(67)
「私のような者でも一緒にやろうという方々、総裁選に推してやろうという方々が20人おられれば、ぜひとも総裁選挙に出馬したいと思っております」
出馬に向けた推薦人確保を急ぐ考えを示しました。
また、若手・中堅議員の間で“出馬待望論”があがっているのが小林鷹之前経済安保担当相、49歳。さっそく14日夜、都内の飲食店で自民党の若手議員と意見を交わしたということです。
総裁選に向けて、今後の動きは──。
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「今回の総裁選のキーワードは『党の刷新』です。その点から40代候補の2人への期待が高まっているのが特徴です。小泉さんと小林さんに対して、自民党若手議員を中心に『世代交代を前面に出すべき』と『推し』の声があります」
「一方で、ある現役閣僚は『経験不足で党運営、政権運営を考えると混乱を招きかねない』『支持率が一瞬上がるかもしれないがメッキがはがれるのも早いのでは』とリスクを指摘する声もあります」
平本記者
「一方、茂木さんと河野さんが今、一番欲しいのは麻生副総裁の支持です。多くの派閥が解消した中で、麻生派は存続していますからオーナーがこの候補だと言えば、まとまって50人以上の固まった支持を得られるからです。2人とも麻生さんには出馬したい考えを伝えているとみられ、麻生さんがどちらを支援するかが総裁選レースに大きな影響を与えそうです」
◇
自身が身を引くことで、総裁選の号砲を鳴らした岸田首相。その、胸の内は…。
「突然の不出馬の表明、小栗さんも驚きました?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「本当に驚きました。お盆明けの来週初め、20日には総裁選の日程が決まるので、それまでには総理が出るか出ないか、決めるだろう、というのが相場感でしたので、思ったより早い表明でした」
「ある側近は『きょう(14日)表明すると決めたのは、昨晩(13日夜)だ』と明かしています。そして、岸田首相の決断が党幹部などに伝わったのは会見の直前で、岸田首相の秘書官に対してさえ、会見の数時間前に伝えたというサプライズ発表だったんです」
■ナゼ不出馬?“3つの理由”
藤井キャスター
「この総裁選に『出ない』という決断、これは元々考えていたものなのでしょうか」
小栗解説委員長
「実際に総裁選に出るかどうかについては、ギリギリまで相当悩んでいたようです。というのも、首相側近は、直前まで岸田首相の会見案について、出馬するパターンと出馬しないパターン、両方を用意していたと明かしています。ではなぜ“出馬しない”となったのか。大きく分けて3つ、理由があると思います」
小栗解説委員長
「まず1つ目。『野党への転落を防ぐため』。今月初め、岸田首相は周辺に『自分のことより、自民党が政権党でいられるかどうかを最優先に考えている』と話していたそうなんです。つまり、次の衆議院選挙で自民党が負けない態勢を作りたいと」
「別のある側近議員はきょう(14日)『岸田首相は、いま自分が総裁選で勝てたとしても衆議院選挙に勝てるかというと、そうではない。自分が代わることが選挙に勝つことにつながると考えた』と話しています」
藤井キャスター
「つまり岸田首相は、自分では政権選択の衆議院選挙に勝てないと判断した、ということですね」
小栗解説委員長
「はい、その通りです。もう一つが、選挙の最大のライバルである『立憲との違いを強調したい』。折しも、野党第1党の立憲民主党が、来月代表選挙を予定しています。すでに立候補を表明しているのは、枝野前代表、そして今の代表の泉氏が立候補の意向を周囲に示しています」
「ある自民党議員は『立憲はいまだに古い顔でやっている。自民党は真剣度が違うんだと見せる必要があった』と話しています。ただ、これには立憲の泉代表は、強く反発していて『総理総裁を代えて、心機一転、過去を忘れてもらおうという自民党の手法に、国民がいつまでも引っかかっていてはいけない』と話しています」
小栗解説委員長
「そして、3つ目が『影響力を残す』です。首相周辺からは『攻めの退陣表明。このタイミングで辞めることが一番影響力を残せるという判断。総裁選に出て負けたら、すべてのレガシーが台無しになってしまいますから』という声が聞かれました」
「つまり、ここで自ら身を引けば、菅前首相のように影響力をまだ残せる、場合によってはリーダー選びのカギを握る“キングメーカー”になれるかもしれない、というわけです。ある自民党関係者は『もう1回首相に、ということだってあるかもしれない』と話していました」
藤井キャスター
「清史郎さんはどう思われますか?」
加藤清史郎さん(俳優・『news zero』水曜パートナー)
「政権交代しないこと、それは自民党には大事なことだろうけど一番の目的がそこになるのは少し違うなと思います。いまの政治は相手を批判することで自分を優位にしようとしているように感じてしまう。批判することの基本にあるのは、削りあう作業でなく、日本のことを考えて高めあうべきであってほしいなと。もし選挙があるのであれば、わたしたちは情報を見聞きして判断しないといけないなと思います」
(8月14日放送『news zero』より)