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岸田首相「不出馬表明」の裏側を徹底解説 取材で見えた”決断の裏側”とは

2024年8月15日 6:32
岸田首相「不出馬表明」の裏側を徹底解説 取材で見えた”決断の裏側”とは

総裁選への不出馬、事実上の退陣を表明した岸田首相。なぜ不出馬を決断し、なぜいま表明したのか。取材で見えてきた、その裏側とは…

【サプライズ不出馬を決めた極秘会合】

「総裁選には、出馬いたしません」

これまで勝負所で身につけてきた「青」のネクタイを締め、退陣を表明した岸田首相。

突然の表明の裏側には何があったのか。事態が大きく動いたのは、前夜の極秘会合だった。

岸田首相は、13日午後7時からパリ五輪の代表団の表敬を受け、その後、当初の予定にはなかった会合へと向かった。

表向き、首相は東京都内のホテルで秘書官と食事をしたことになっていたが、本当の相手は側近の木原誠二・幹事長代理。裏で木原氏と2時間弱、会談をしていたという。その場で最終的に、翌14日に会見をし、不出馬を表明すると判断したという。

この決断を党幹部や関係者に伝えたのは14日の朝。午前11時半の記者会見直前だった。首相の秘書官達に対してさえ、会見の数時間前に伝えたというサプライズ発表となった。ある関係者は「呆然とした」と、素直な心境を明かした。

【不出馬決断のなぜ】

では、首相はなぜ「不出馬」を決断したのか。

大きな理由は3つある。1つめは、自民党の裏金事件をめぐる責任をとることだ。首相はこれまで、政治資金規正法の改正など、再発防止に全力をあげることで、責任を果たす姿勢を示してきた。しかし、首相周辺は「2月、3月頃から、いずれはけじめをつける、辞める選択肢は持っていた」と明かしている。

2つめは、総裁選で勝つことが難しいという判断だ。首相周辺では最近、強力な対立候補が現時点でいない中で「出馬すれば勝てる」という声もあった。しかし、総裁選の候補者の名前が出てくる中で、ある自民党幹部は「党内情勢を冷静に分析し出ても勝てないという判断に至ったのだろう」と指摘する。

3つめは、野党に負けないための判断だ。党内では、来年の秋までに衆議院選挙が必ずある中で、内閣支持率が低迷を続ける状況に対し、「岸田首相では選挙は戦えない」という声が大勢を占めていた。

岸田首相自身、14日にある側近議員に電話で「総裁選に勝てても衆院総選挙には勝てない」と伝えたという。また、別の側近も、対野党との戦いの中で首相が「自分が替わることが衆院総選挙に勝つ道」と判断したと説明している。

【なぜこのタイミング】

決断の表明は、なぜこのタイミングだったのか。これは2つの理由がある。

1つめは、来週20日に自民党総裁選の日程が決まることだ。通常、総裁選の日程が決まると、候補者達が「立候補表明」を行うことになるが、その時点で首相の態度が不明な状態だと、他の候補者の動向に影響を与えることになる。

実際、首相の周辺は「総裁選に出馬したい意向の閣僚や党幹部にとっては動きやすくなる」と話す。

2つめは、岸田首相自身の「影響力」の維持だ。ある側近は「このタイミングで辞めることで、今後の影響力を一番キープできる」と説明する。裏を返せば、仮に総裁選に出馬して負ければ「これまでの実績がすべて台無しになってしまう」とも指摘している。

安倍元首相や、麻生副総裁、菅前首相などは、首相退任後にも党内に大きな影響力を持っている。今やめることで引き続き、首相経験のある政治家として影響力を維持し続ける狙いがあったことが窺える。