コロナ禍で分かれた明暗 来年の日本経済は
2020年、日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けた。外出自粛、テレワークなど私たちの生活の大きな変化は、街の景色も変えた。
■コロナ禍で好調、「新しい生活様式」グッズ
生活雑貨を多く取り扱うロフト。「新しい生活様式」が広がる中、それに合わせた商品を多く取りそろえている。ひとつはアイメイク用品。いつもマスクを着用するようになり、目元のおしゃれが注目されるようになったため、需要が大幅に増えた。2019年の同時期に比べ、売り上げが4倍以上に伸びた商品もあるという。
また、テレワークの普及で家の中で過ごす時間が増えたため、体をほぐしたり、ストレッチができるフィットネス用品の売り上げも好調だ。ロフトの広報担当者は「新しい生活様式の導入によって、お客さまのニーズもどんどん変化している。そういった変化を感じ取りながら、売り場に反映したい」と話す。
感染収束の糸口が見えない中、コロナ禍でどんどん変わる人々の行動の変化をくみ取るよう努力しているという。
■依然厳しい飲食店「五里霧中」
一方、外出自粛、度重なる営業時間の短縮要請で大きな打撃を受けたのが飲食業界だ。東京都内のおでん屋「楽でん」では、肌寒い季節にもかかわらず空席が目立った。例年、年末年始は忘年会や新年会の予約で満席になるが、2020年は、感染の「第3波」で都内の感染者が増え始めた11月半ばごろから年末年始の予約のキャンセルが増加。東京都が3度目の時短要請をした12月最終週の予約はほぼゼロになってしまった。
2021年1月に時短営業が終わったとしても、客足が戻るか心配だと話す。「今のまま感染者が減らないと思う、その中でお店としてどうもがいていくか。改善策が見当たらないような状況。政府や自治体の対応にずっと振り回されている」と、店長。このまま感染が収まらない場合、2021年春以降も営業を続けるのは、難しいと語った。
■業種によって大きな差
財務省の法人企業統計によると、2020年度上半期の業種別の経常利益は、小売業は多少のマイナスはあったものの黒字を維持した。緊急事態宣言時は一時休業する事業者もいたが、影響は限定的だった。
一方、宿泊業の経常利益は2019年度上半期は約1520億円の黒字だったのが、2020年度同期は約4960億円の赤字。飲食サービス業は、2019年度上半期は約2050億円の黒字だったのが、2020年度同期は約5320億円の赤字となるなど大幅に落ち込んだ。
「ウィズコロナ」に向け扱う商品やサービスの仕方を工夫できる業種と、人々の外出自粛が強く影響する業種では大きな差がついた。
■2021年どうなる?専門家は
感染拡大が続き、先行きが不透明な中、2021年の日本経済は果たしてどうなるのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は、「コロナとうまく付き合っていけるかがポイント」だと話す。
「緊急事態宣言解除後は、経済活動と感染拡大抑制のバランスをうまく保ってきたが、11月、12月はバランスをとることに失敗をしてしまった。今回バランスを崩してしまったという教訓をうまく生かし、感染が拡大したら早めに、経済活動にブレーキを踏む決断をすべきだ」
また、この冬のボーナスが多くの業種で減少したことなどで、2021年に個人消費がさらに悪化する可能性もあるという。「消費が冷え込み景気が悪化すれば、企業の倒産や店舗の閉鎖などの増加にもつながりかねない(小林氏)」
■2021年、政府は明確なコミュニケーションと対応を
政府は、GoToキャンペーンの迷走など経済活動の「アクセル」と「ブレーキ」をタイミング良く踏み分けられず、感染拡大抑制との両立を実現できていない。そんな政府の“中途半端”な対応に「どう行動すべきかわからなくなった」という声も多く聞こえる。
12月25日の会見で菅総理は、新型コロナウイルス対策に関して「国民と丁寧にコミュニケーションをとることに努める」と話した。私たちひとりひとりが迷うことなく経済活動と感染対策をすすめていけるよう、政府の明確な発信とリードが求められている。